DeepSeek-V3:他のモデルとの比較から見えてくる驚異の実力
DeepSeek-V3:他のモデルとの比較から見えてくる驚異の実力
近年、AI技術の発展は目覚ましく、特に大規模言語モデル(LLM)の進化は著しいものがあります。そんな中、中国のAI企業DeepSeek社が開発した最新モデル「DeepSeek-V3」が大きな注目を集めています。
このブログ記事では、DeepSeek-V3の概要、特徴、そして他の主要なLLMとの比較を通して、その驚異的な実力に迫ります。
DeepSeek-V3とは?
DeepSeek-V3は、6,710億ものパラメータを持つ超大規模言語モデルです。これは、GPT-4oの約1.75兆パラメータ(非公式)、Claude 3.5 Sonnetの約4,000億パラメータ(非公式)と比べると、中間のサイズ感ではありますが、オープンソースモデルとしては最大級の規模を誇ります。特に注目すべきは、Mixture of Experts (MoE) アーキテクチャを採用している点です。このアーキテクチャは、複数の「専門家」モデルを組み合わせることで、効率的にタスクを処理し、高いパフォーマンスを実現します。各トークンに対しては、370億のパラメータがアクティブになり、複雑な言語処理を可能にします。
DeepSeek-V3の主な特徴
- 圧倒的なコストとパフォーマンス: DeepSeek-V3の学習には、14.8兆トークンという膨大なデータセットと、278.8万GPU時間という計算リソースが用いられました。これは、他の大規模モデルと比べて比較的少ない計算リソースで学習されており、その効率性の高さが伺えます。さらに、APIの利用料金も非常に安価に設定されており、そのコストパフォーマンスの高さは圧倒的です。少ないリソースで学習しているのは、米国によるGPU,半導体の輸出制限によって強力なGPUが使えないことに起因していると考えられます。
- オープンソース & 商用利用可能: DeepSeek-V3は、モデル、論文、トレーニングフレームワークの全てがオープンソースで公開されています。これは、研究コミュニティや開発者にとって非常に大きなメリットであり、AI技術の民主化に大きく貢献すると期待されています。さらに、商用利用も可能なため、ビジネスシーンでの活用も期待されます。Mac Minix8で実行できるようです。
- Multi-head Latent Attention (MLA) と DeepSeekMoE アーキテクチャ: DeepSeek-V3は、効率的な推論を可能にするMLAと、コスト効率の高いトレーニングを実現するDeepSeekMoEを採用しています。これらのアーキテクチャは、前バージョンのDeepSeek-V2で有効性が実証されており、DeepSeek-V3でもその強みが引き継がれています。
- 補助損失なしの負荷分散戦略: MoEアーキテクチャにおける課題の一つは、負荷分散です。DeepSeek-V3では、補助損失を用いない新しい負荷分散戦略を採用することで、性能劣化を最小限に抑えつつ、効率的な負荷分散を実現しています。
- マルチトークン予測トレーニング: 複数のトークンを同時に予測するトレーニング手法により、データ効率を高め、推論速度を向上させています。
- FP8混合精度トレーニング: GPUメモリの使用量を削減し、計算効率を高めるFP8混合精度トレーニングを採用しています。
他のモデルとの比較:DeepSeek-V3の実力は?
DeepSeek-V3は、様々なベンチマークテストにおいて、他のオープンソースモデルを上回り、GPT-4oやClaude 3.5 Sonnetといった最先端のクローズドソースモデルに匹敵する性能を示しています。
- MMLU (一般的な言語理解能力): 88.5という高いスコアを記録し、オープンソースモデルの中でトップクラスの性能を誇ります。
- DROP (読解能力): 91.6という驚異的なスコアを記録し、他のモデルを大きく引き離しています。
- HumanEval-Mul (コーディング能力): 82.6のスコアを記録し、特にアルゴリズムコーディングの分野で優れた性能を示しています。
- 数学関連のベンチマーク: 他のモデルを大きく上回る性能を示し、数学的な推論能力の高さが伺えます。
ただし、一部のベンチマークでは、Claude 3.5 Sonnetに及ばない結果も出ています。しかし、全体的に見れば、DeepSeek-V3はオープンソースモデルとしては最高レベルの性能を有しており、クローズドソースモデルとの差を確実に縮めていると言えるでしょう。
DeepSeek-V3の可能性
DeepSeek-V3は、自然言語処理、コーディング、研究開発、教育など、様々な分野での活用が期待されています。特に、そのオープンソース性とコストパフォーマンスの高さは、AI技術の普及と発展に大きく貢献するでしょう。
まとめ
DeepSeek-V3は、まさにAIの新星と呼ぶにふさわしい、革新的な大規模言語モデルです。その優れた性能、オープンソース性、コストパフォーマンスは、今後のAI技術の発展に大きな影響を与えることは間違いありません。DeepSeek-V3やQwenで注目の集まっている中国勢の今後の進化から目が離せません。
DeepSeekはDeep thinkというOpenAIのo1, o3と同じような機能もありOpenAIやGoogleの米国勢がかなり追いつかれていることが伺えます。
国家安全保障の観点からも注目されている分野ですので、日本も頑張ってほしいですね!
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