Good Pull Request - AI時代の良いプルリクエスト
背景
AIによってコードの自動生成が一般化し、開発者が一度に扱うコード量は増えていました。一方、依然レビューは人間が行う必要があるため、レビュー工数が増大しやすくなります。
レビュープロセスが「ボトルネック」になるのを防ぐためには、レビュワーが素早く理解でき、適切にフィードバックできるPull Request(PR)を意識することが重要です。
本記事では様々な文献から良いPull Requestの条件を抽出し、具体例と合わせて解説していきます。
良いPull Requestの条件
1. 小さくする
PRはできるだけ小さく分けることが重要です。大きな変更をまとめるとレビュワーの負担が増え、問題箇所の特定が難しくなります。スコープが小さい(Atomicな)PRにすることでレビュー時間の短縮や不具合の切り分けが容易になるメリットがあります。
- 1つの問題を解決する : 複数の問題に同時に取り組まない(1PR = 1目的が基本)。
- 論理的なコミットに分割する : PR が少し大きい場合は、変更を論理グループに分割。
2. 明確な説明を加える
PRには「なぜこの変更が必要なのか」「どのような修正を行ったのか」を明確に書くことが必要です。背景や意図が不明確だと、レビュワーが推測に時間を割くことになります。明確な説明があると、レビューがスムーズになり、将来的に履歴を見返したときの理解もしやすくなります。PRテンプレートがあると説明粒度を標準化する手助けになります。
3. テストを実施する
変更点に対して単体テストや統合テストを追加することが望ましいです。テストがあるとPRの品質が客観的に保証されデグレが起きていないことも担保することができます。テスト結果があると、レビュワーの安心感が増し、将来的なリファクタリングでも不具合が出にくいメリットがあります。
- プラグインの場合:静的解析ツールによる検証を行う
- 自動テストがある場合:テストを追加し、全てPassしていることを確認する
4. 参考情報を加える
デザインリンク、仕様書、スクリーンショットなどの参考情報をPRに添えることは意図・変更箇所を明確に伝える意味でも効果的です。参考情報は、無駄な往復確認が減り、レビュー効率が大幅に向上するメリットがあります。必要に応じて、代替案の提示やパフォーマンス改善、また、意思決定の経緯を補足する方法も効果的です。
5. ルールに従う
コーディングスタイルや命名規則など、プロジェクトのルールを守ることは基本です。スタイルがバラバラだとレビューで余計な指摘が増えます。ルールに準拠していると、レビュワーが本質的な改善点に集中でき、チーム全体のコード品質も均一化するメリットがあります。
まとめ
これまでの項目をまとめると次のようになります。
観点 | 良いPull Request(Good PR) | 悪いPull Request(Bad PR) |
---|---|---|
スコープ | 1つの目的・変更に絞られている | 複数の機能追加や修正が混在している |
説明 | 背景・目的が明確で、関連Issueや参考情報がリンクされている | 内容が曖昧で、なぜ必要かが分からない |
コミットメッセージ | 意味が具体的で変更内容を簡潔に表現している | 「修正しました」など抽象的で中身が伝わらない |
テスト | テストが通っており、必要に応じて追加・更新されている | テストが不足している、あるいは全くない |
レビューのしやすさ | コーディング規約やスタイルに従い、読みやすく整理されている | スタイルがバラバラで理解しにくく、規約違反が多い |
AI時代において、コードは早く大量に書けるようになりましたが、レビューは依然として「人」が担います。だからこそ、「小さな変更」「明確な説明」「テスト」「参考情報」「ルール遵守」を意識したPRがチームの生産性と信頼性を担保するために重要なポイントになります。
良いPRを積み重ねることが、効率的なソフトウェア開発に繋がるため、これらを意識して開発を進めたいです。OSSなどに参加するとコミットルールやPRのルールが標準化されており基本が学べるため、良い機会になるかと思います。
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