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💡 学び:SIerとForward Deployed Engineerの違いは「既知を管理するか、未知を探索するか」

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SIerとOpenAIのForward Deployed Engineer(FDE)は、どちらも顧客の課題を技術で解決する職種だが、そのアプローチはまったく異なる。両者の違いを一言で言えば、SIerは既知の課題を管理し、FDEは未知の課題を探索する、になると思う。

SIerの強みは「再現性のある課題」にある。たとえば販売管理や会計、顧客管理など、業務要件が明確な領域では、過去の知見をもとに最適な設計・導入ができる。ここで重要なのは「要件を確定させ、計画通りに進めること」。このためプロジェクトはウォーターフォール型で進行し、品質・納期・コストのバランス管理が成果を左右する。SIerは成熟した業務領域を支える“安定化の専門家”といえる。

一方、FDEの活動領域は「解き方がまだ定まっていない課題」だ。AIやLLM(大規模言語モデル)といった新技術を使い、顧客の現場に入り込んで「何が本当の課題なのか」を探るところから始める。仕様が存在しない状態を前提とし、プロトタイプをすぐに作って実際の利用データから学ぶ。その過程で、課題定義・設計・開発・検証を短いサイクルで繰り返すため、進め方は自然とアジャイル型になる。ここでの成功は「納品の完了」ではなく、「顧客の価値創出」にある。

また、SIerが案件単位で完結するのに対し、FDEは現場で得た知見をOpenAI全体のプロダクトや研究に還元する。顧客現場と開発組織をつなぐ“橋渡し”の役割を持ち、そこで見つかったパターンを次のプロダクト改善につなげていく。

つまり、SIerは「要件を固めて正確に実行する」ことで既知の価値を最大化し、FDEは「仮説を立てて検証する」ことで未知の価値を発見し、自社プロダクトを洗練させる。ウォーターフォールが合うのはSIer、アジャイルがフィットするのはFDE。どちらも必要だが、AI時代に新しい価値を生み出す現場では、FDE型の“探索するエンジニアリング”がより重要になっていく、と思う。

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