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3分で読めるテスト計画を“運用できる計画”に落とす具体例
この記事は『プロジェクトマネジメントの基本が全部わかる本』の学びをもとに、家計簿アプリを題材に「テスト計画」を具体化する試みです。机上の計画ではなく、現場で回せる“運用可能な計画”を目指します。以下では、画像で示される4つの手順(定義共有→用語定義→計画→マネジメント)に沿って整理します。
1. 共通認識(定義共有)
まずは「何を目的にテストするのか」をチームで一致させる。
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目的
致命バグ(※ユーザーが利用不能になる重大な不具合)の流出防止と品質の可視化。
リリース可否(Go/No-Go)の判断材料を提供。 -
スコープ
テスト対象:入力画面、明細表示、月次集計、銀行連携、通知、課金機能。
非対象:マーケティング用ランディングページ(LP)。
2. 用語/レベル定義
共通の言葉を揃え、誤解を減らす。
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テストレベル
- 単体テスト(UT: Unit Test):プログラムの最小単位を検証
- 結合テスト(IT: Integration Test):複数モジュール間の連携を確認
- E2Eテスト(End-to-End Test/シナリオテスト):ユーザー操作を想定した一連の流れを確認
- 非機能テスト:性能・負荷・セキュリティ・回帰(※既存機能が壊れていないかの再確認)
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入口基準/出口基準
- E2E入口:重大バグ(Severity1)がゼロであること
- E2E出口:主要ユーザーストーリーのテスト(優先度P1/P2)が100%完了、重要欠陥ゼロ
3. 計画(テスト設計の骨子)
リスク起点
- 金額計算ミス
- 重複明細の登録
- 月次集計のズレ
- 銀行API連携のタイムアウト
- 課金処理の失敗
戦略
- 高リスク機能は E2E自動化(Playwright / Cypress)
- その他は探索的テスト+チェックリスト方式
観点表/トレーサビリティ(RTM: Requirements Traceability Matrix)
例:「予算超過通知」
- 通常ケース
- 閾値ぎりぎり
- 連続超過
- サイレント時間帯の通知制御
データ計画
- 境界値(金額0円/最大値)
- うるう年
- 日付が月を跨ぐケース
- 通貨の小数処理
- 重複キー登録
環境
- DEV(開発環境)/TEST(テスト環境)/STG(ステージング環境)
- 本番相当のAPI制限や Feature Flag(※機能のON/OFFを切り替える仕組み) を反映
性能目標
- 明細一覧:P95 < 300ms
※P95=応答時間の95%がこの値以下である統計指標 - 月次集計:1秒以内
- 同時ログイン1,000でエラー率0.1%未満
セキュリティ
- OWASP ASVS準拠(認証、セッション管理、入力チェック、CSRF対策)
- SCA(Software Composition Analysis:依存ライブラリ脆弱性の検査)
スケジュール
- UT:2週間
- IT:1週間
- E2E+非機能テスト:1週間
- バグ修正:1週間
役割
- QAリード:1名
- E2E自動化:2名
- 手動テスト:1名
- 開発者:自己テスト必須
ツール
4. マネジメント(運用ルール)
指標
- テスト進捗率
- 欠陥密度(コード量あたりのバグ数)
- 修正再発率
- 自動化カバレッジ(自動化済みテストの割合)
- P95遅延(応答速度指標)
レポート
- 毎日バーンダウンチャート(※残タスクの消化状況を可視化)+重大欠陥リスト
- Severity1(致命的):24h以内に修正
- Severity2(重要):72h以内に修正
変更管理
- 仕様変更はRTM更新
- 影響範囲のテストケースを再実行
退出判定会議
- 指標が基準を満たすこと
- 既知リスクが承認されること
- 条件が揃えば「Go」、不十分なら「No-Go」
まとめ
「テスト計画」と聞くと分厚い文書を思い浮かべがちですが、家計簿アプリの例のように リスク起点で具体化し、運用ルールを定める ことで、実際に回せる計画へと落とし込めます。
計画が“使える”かどうかは、ツールよりも 共通認識と基準の明確さ にかかっています。
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