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JS 後方互換性と前方互換性

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JavaScriptが「昔の書き方」も「未来の書き方」も大切にする理由

──後方互換性と前方互換性をわかりやすく

JavaScriptは、1995年に誕生して以来、世界中のWebサイトで使われ続けています。これほど長く生き残っている理由のひとつが、「互換性(ごかんせい)」をとても大切にしていることです。互換性には、後方互換性前方互換性という2つの考え方があります。


後方互換性:言語側が“昔のコードを動かす”ための仕組み

後方互換性とは、昔の書き方でも今のブラウザで動くようにすることです。これはJavaScriptという言語側の性質であり、仕様を作る人たち(ECMAScriptやブラウザ開発者)が守っている約束です。

もし新しいJavaScriptが古いコードを動かせなくしてしまったら、世界中のWebサイトが一気に壊れてしまいます。だからJavaScriptは、どんなに進化しても「古いコードを壊さない」ことを第一に考えています。

// 10年前によく書かれていたJavaScriptの書き方
var message = "Hello, world!";
function greet() {
  alert(message);
}
greet();

このコードは、今のブラウザでもちゃんと動きます。一方で、より安全でモダンな書き方は次のとおりです。

// 現在の標準的な書き方
let message = "Hello, world!";
const greet = () => {
  alert(message);
};
greet();

両方とも同じ動きをします。これは、JavaScriptが後方互換性を守っているおかげです。


前方互換性:開発者が“未来の変更に備える”ための考え方

一方、前方互換性とは「将来の変化に強いコードを書く」という考え方です。これは開発者側が意識しておくべき観点であり、「今のうちから、未来に壊れにくい・拡張しやすい設計にしておこう」という姿勢のことです。

たとえば、こんなコードは前方互換性を意識した書き方です。

// 将来も拡張しやすい、今の標準的な書き方
const greet = (name = "Guest") => {
  console.log(`Hello, ${name}!`);
};

このコードには次の特徴があります。

  • constを使って、意図しない上書きを防ぐ
  • アロー関数 ()=>{} でシンプルに書く
  • `Hello, ${name}!` のようにテンプレートリテラルを使って柔軟に文字列を扱う

これらの構文は将来も標準として維持されやすく、新しい機能を追加するときにもスムーズに対応できます。つまり、「未来に壊れにくい設計を今からする」──これが前方互換性です。


まとめ:過去を守るのは言語、未来を見据えるのは開発者

種類 主体 目的 具体例
後方互換性 JavaScript(言語・ブラウザ側) 昔のコードを壊さない varfunctionが今でも動く
前方互換性 開発者(コードを書く側) 将来の変更に対応しやすくする constやアロー関数で安全に設計する

JavaScriptの強さは、この2つの考え方が両立していることです。言語は「過去を守る」努力を続け、開発者は「未来に備える」コードを書く。このバランスがあるからこそ、JavaScriptは30年近くたった今でも、Webの中心で動き続けているのです。

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