WSLでのDebianのアップグレード方法
はじめに
この記事では、WSL (Windows Subsystem for Linux
)上の Debian を最新のバージョンにアップグレードする方法を説明します。
Debian をアップグレードすることで、セキュリティパッチの適用や新機能の利用が可能になり、システムの安定性とパフォーマンスが向上します。
1. パッケージマネージャー apt
1.1. aptとは
Debian 系 Linux ディストリビューションでは、ソフトウェアのパッケージ管理に apt (Advanced Package Tool
[1]) というツールを用います。
これにより、ソフトウェアのインストール、アンインストール、バージョンアップなどが容易に行えます。
1.2. aptとソースリスト
Debian では、パッケージ管理のために apt
ツールが使用されています。
apt は、ソースリスト[2]というパッケージの情報を取得するために使用するリストを使用しています。
ソースリストには、ファイル内にパッケージ情報がある URL が記載されています。
公式のソースリストは、通常/etc/apt/sources.list
となります。
また、他のミラーのソースリストは/etc/apt/sources.list.d/
ディレクトリ内の<mirrorname>.list
となります。
1.3. 公式ソースリスト
apt
では、/etc/apt/sources.list
にパッケージ一覧の source を記述します。
以下は、公式のソースリストの例です。
# 公式の sources.list
deb http://deb.debian.org/debian bookworm main
deb http://deb.debian.org/debian bookworm-updates main
deb http://security.debian.org/debian-security bookworm-security main
deb http://ftp.debian.org/debian bookworm-backports main
2. ミラーの追加
2.1. CDNミラーの追加
CDN ミラーは、パッケージ情報を CDN (Content Delivery Network
[3]) に格納したソースリストです。
パッケージ情報を CDN から取得することで、高速な取得が可能となります。
次の手順で、CDN ミラーを追加します。
-
Debian mirrors backed by Fastly CDN
にアクセスして、適切なsource
をコピーします -
/etc/apt/sources.list.d/cdn.list
ファイルにコピーした内容を貼り付けます
内容は、次の通りになります/etc/apt/sources.list.d/cdn.list# cdn mirror deb http://cdn-fastly.deb.debian.org/debian stable main deb http://cdn-fastly.deb.debian.org/debian-security stable-security main deb http://cdn-fastly.deb.debian.org/debian-security-debug stable-security-debug main
これで、CDN
ミラーの追加は完了です。
2.2 日本のミラーの追加
この記事では、読者が日本に在住していることを前提に、日本のミラーを追加する手順を説明します。
日本のミラーを使用することで、日本国内からパッケージ情報を高速に取得できます。
次の手順で、日本のミラーを追加します。
-
CDN 対応ミラーの設定にアクセスし、ここの
source
をコピーします -
/etc/apt/sources.list.d/ja-jp.list
ファイルに上記のsource
を貼り付けます
内容は、次の通りになります/etc/apt/sources.list.d/ja-jp.list# Debian.jp 日本CDNミラー deb http://ftp.jp.debian.org/debian/ bookworm main contrib non-free non-free-firmware deb http://ftp.jp.debian.org/debian/ bookworm-updates main contrib non-free non-free-firmware deb http://ftp.jp.debian.org/debian/ bookworm-backports main contrib non-free non-free-firmware #deb-src http://ftp.jp.debian.org/debian/ bookworm main contrib non-free non-free-firmware #deb-src http://ftp.jp.debian.org/debian/ bookworm-updates main contrib non-free non-free-firmware #deb-src http://ftp.jp.debian.org/debian/ bookworm-backports main contrib non-free non-free-firmware
以上で、日本のミラーの追加は完了です。
3. Debian のアップグレード
3.1. ソースリストのアップデート
次のコマンドを実行して、パッケージリストを更新します。
sudo apt update
実行結果は、次のようになります。
atsushifx@ys:/etc/apt/sources.list.d# sudo apt update
Get:1 http://deb.debian.org/debian bookworm InRelease [151 kB]
Get:2 http://security.debian.org/debian-security bookworm-security InRelease [48.0 kB]
.
.
.
Get:39 http://cdn-fastly.deb.debian.org/debian-security-debug stable-security-debug/main amd64 Packages [46.8 kB]
Fetched 46.7 MB in 7s (6,318 kB/s)
Reading package lists... Done
Building dependency tree... Done
14 packages can be upgraded. Run 'apt list --upgradable' to see them.
N: Repository 'http://deb.debian.org/debian bookworm InRelease' changed its 'Version' value from '12.0' to '12.1'
atsushifx@ys:/etc/apt/sources.list.d#
3.2. Debianのアップグレード
次のコマンドを実行して、Debian をアップグレードします。
sudo apt upgrade -y
実行結果は、次のようになります。
atsushifx@ys:/etc/apt$ sudo apt upgrade -y
Reading package lists... Done
Building dependency tree... Done
Calculating upgrade... Done
.
.
.
Setting up udev (252.12-1~deb12u1) ...
invoke-rc.d: could not determine current runlevel
Setting up sudo (1.9.13p3-1+deb12u1) ...
invoke-rc.d: could not determine current runlevel
Processing triggers for libc-bin (2.36-9+deb12u1) ...
ldconfig: /usr/lib/wsl/lib/libcuda.so.1 is not a symbolic link
atsushifx@ys:/etc/apt/sources.list.d#
これで、Debian のアップグレードは終了です。
おわりに
この記事では、ソースリストを更新しDebian
をアップグレードする方法について説明しました。
今後、定期的にDebian
をアップグレードすることで安定して WSL を使うことができます。
アップグレードすることで、より効率的なプログラミング環境が実現でき、快適な開発体験が得られるでしょう。
それでは、Happy Hacking!
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