OCaml: rlwrapでOCamlのREPLを強化する
はじめに
この記事では、rlwrap
を使用してOCaml
のREPL
の機能を強化する方法を説明します。
rlwrap
を利用することで、コマンドラインの編集機能などが追加でき、OCaml REPL
の使い勝手を向上させることができ、効率的なコーディングが可能になります。
rlwrap
とは
1.
rlwrap
の概要
1.1 rlwrap
(readline wrapper
)は、指定したアプリケーションのREPL
(Read-Eval-Print Loop
)に編集機能などを追加するツールです。
このREPL
にrlwrap
を使用することで、ユーザーは過去に実行したコマンドの履歴を簡単に再利用したり、コマンドライン上での文字列の編集をより直感的に行なうことができます。
rlwrap
の基本的な使い方
1.2 rlwrap
の使い方はシンプルです。
rlwrap <app>
のようにアプリケーションを指定して実行します。これで、編集機能やヒストリー機能などのrlwrap
の機能を利用できます。
OCaml
の場合は、rlwrap ocaml
でOCaml
のREPL
に編集機能やヒストリー機能を追加します。
rlwrap
のセットアップ
2. 2.1 環境変数の設定
環境変数RLWRAP_HOME
を設定し、rlwrap
の設定ファイルやデータファイルを保存するディレクトリを指定します。
XDG Base Directory
仕様にしたがい、$XDG_DATA_HOME/rlwrap
を設定します。
これにより、rlwrap
が利用する設定ファイルやデータファイルの格納場所を一元管理できます。
この記事の環境では、環境変数の設定は$XDG_CONFIG_HOME/envrc
スクリプトで行っています。
そのため、~/.config/envrc
に次を追加します:
# rlwrap
export RLWRAP_HOME="${XDG_DATA_HOME}/rlwrap"
rlwrap
のインストール
2.2 rlwrap
のインストールは、パッケージマネージャーを利用して簡単に行なうことができます。
この記事では、Linux にも対応しているパッケージマネージャーHomebrew
を使ってrlwrap
をインストールします。
次のコマンドで、rlwrap
をインストールします:
brew install rlwrap
OCaml
用の設定
3. OCaml
用にタブ補完ファイルを設定することで、OCaml
のREPL
で使用するコマンドや型などを迅速に補完できます。
また、ヒストリーファイルを作成し、オプションを指定することで過去に入力したキーワードをタブで補完できるようになります。
3.1 タブ補完ファイルの設定
rlwrap
は、タブ補完ファイル(completions
)を使用して、コマンドや関数、型などを補完します。
この機能により、OCaml
のREPL
で使用するコマンドやコーディング時に使用する型などを迅速に入力できます。
タブ補完ファイルの名前は、<app>_completions
となります。OCaml
の場合、このファイルはocaml_completions
となり、OCaml
のモジュール、型などやOcaml REPL
用のコマンドが補完対象となります。
OCaml
用のタブ補完ファイルocaml_completions
をGitHub
のGist
で公開しています。
Gist
のocaml_completions
は、次のようになります。
3.2 ヒストリーファイルの作成
rlwrap
は、入力の履歴をヒストリーとして保存します。
rlweap
に、-f .
とオプションをつけて起動すると、ヒストリーファイルをタブ補完に利用し、以前に入力したコマンドや関数をタブで補完できるようになります。
ただし、ヒストリーファイルが存在しないとエラーでrlwrap
が終了してしまいます。
そのため、あらかじめ、ヒストリーファイルを作成しておきます。
次の手順で、ヒストリーファイルを作成します:
touch $RLWRAP_HOME/ocaml_history
3.3 エイリアスの設定
OCaml
をより便利に使用するために、rlwrap
を介してOCaml
を起動するエイリアスを設定します。
この設定をすることで、毎回rlwrap
を手動で入力する手間が省けます。
この記事の環境では、エイリアスの設定はエイリアス設定スクリプト (
$XDG_CONFIG_HOME/aliases`)で行っています。
次のエイリアスをエイリアス設定スクリプトに追加します:
alias ocaml="rlwrap -f . ocaml "
4. シェルの再起動
ここまでで設定した環境変数をWSL
に反映させるため、シェルを再起動します。
次の手順で、シェルを再起動します:
-
シェルの終了:
exit
を入力し、シェルを終了します:exit
-
新規 WSL セッションの開始:
Windows Terminal
のプルダウンメニューで、Debian
を選択します。
以上で、シェルが再起動します。これにより、環境変数の設定が反映されrlwrap
によってOCaml REPL
が強化されます。
おわりに
rlwrap
の導入により、OCaml
のREPL
操作がより快適になりました。
rlwrap
を使用したOCaml
を活用することで、関数型プログラミングの学習もより効率的になります。
関数型プログラミングの学習を進め、プログラマーとして成長しましょう。
それでは、Happy Hacking!
技術用語と注釈
この記事で使用する技術用語について解説します。
-
rlwrap
:
コマンドラインの入力行に対して編集機能や履歴管理、タブによる補完機能を提供するユーティリティ -
RLWRAP_HOME
:
rlwrap
が設定ファイルやデータファイルを保存するディレクトリを決める環境変数 -
タブ補完ファイル:
rlwrap
がタブ補完に使用するコマンドや関数名などが記載されたファイル -
WSL
(Windows Subsystem for Linux
):
Windows上で Linux のバイナリ実行ファイルを直接実行できるようにする互換レイヤー -
Homebrew
:
macOS
および Linux で利用可能なパッケージマネージャー -
REPL
(Read-Eval-Print Loop
):
プログラムを一行ずつ実行してその結果をすぐに見ることができる対話式のプログラミング環境 -
OCaml
:
高度な型システムと効率的な実行速度を備え、型安全性やパターンマッチングを特徴とする関数型プログラミング言語 -
XDG Base Directory
:
UNIX/Linux システムで設定ファイルを保存するディレクトリを決める標準的な仕様
参考資料
Webサイト
-
公式サイト:
rlwrap
のGitHub
リポジトリ
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