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規程・標準・要領・マニュアル・ガイドラインの違いとは

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組織や業務の中でよく登場する「規程」「標準」「要領」「マニュアル」「ガイドライン」。似ているようでいて拘束力の強さや役割は異なります。本資料では、それぞれの定義と特徴を整理します。
なお、ここで示す内容はあくまで一般的な整理の一例であり、各ドキュメントの定義や運用の仕方は会社や組織によって異なる点にご留意ください。

1. 規程(Regulation)

  • 性質:組織運営の根幹となる「基本ルール」
  • 拘束力:★★★★★(最も強い)
  • 用途:法令や制度に基づき、組織全体を統制するために用いられる
  • 形式:条文形式で「何を禁止・許可するか」「どのように運営するか」を規定
  • :「就業規程」「給与規程」「旅費規程」
  • 位置づけ:組織の「法律」に相当し、すべての文書の上位に立つ

具体例:「情報セキュリティ規程(抜粋)」

第1条(目的)  
本規程は、当社における情報資産を保護し、情報セキュリティを維持・向上させることを目的とする。  

第5条(パスワード管理)  
1. 社員は会社システムのパスワードを第三者に漏洩してはならない。  
2. パスワードは定期的(少なくとも90日に1度)に変更しなければならない。  

第10条(違反行為への対応)  
本規程に違反した場合、就業規則に基づき懲戒処分を行う場合がある。

2. 標準(Standard)

  • 性質:組織や業務で統一を図るための「基準」
  • 拘束力:★★★★☆(強い)
  • 用途:業務品質や作業手順を共通化し、ばらつきを防ぐために使われる
  • 形式:具体的な基準や仕様を明文化(フォーマット、チェックリスト、作業基準など)
  • :「製造工程の標準作業」「文書作成フォーマット標準」
  • 位置づけ:規程を実務レベルに落とし込み、全体統一を担保するもの

具体例:「文書作成標準(抜粋)」

第2章(文書フォーマット標準)  
1. 社内文書は原則として以下のフォーマットを使用すること。  
   - フォント:MS ゴシック、10.5pt  
   - 日付形式:YYYY年MM月DD日  
   - 署名欄:文末に作成者・承認者を記載  

2. ファイル名の規則は以下の通りとする。  
   [文書種別]_[作成年月日]_[版数].docx

3. 要領(Procedural Rules)

  • 性質:制度や業務を運用する際の「決まりごと・手続き」
  • 拘束力:★★★☆☆(中程度〜強め)
  • 用途:組織的・公式な手続きや運用ルールを定めるときに使われやすい
  • 形式:文章中心で「何を・いつ・誰が・どう行うか」を規定する
  • :「出張旅費精算要領(申請は出発前に、必要書類は○○を添付…)」
  • 位置づけ:マニュアルよりも「公的な色合い」が強く、制度と現場をつなぐ役割

具体例:「出張旅費精算要領(抜粋)」

第1条(目的)  
本要領は、社員の出張に伴う旅費精算手続きを定めるものである。  

第3条(申請手続き)  
1. 出張申請は出発の5営業日前までに行うこと。  
2. 精算申請には以下の書類を添付すること。  
   - 出張報告書  
   - 領収書一式  

第5条(承認)  
所属部門長の承認をもって精算処理を行う。

4. マニュアル(Manual)

  • 性質:実務担当者が迷わず作業できるようにした「具体的な手順書」
  • 拘束力:★★☆☆☆(比較的弱い)
    ※ただし、組織や業界によっては 「必ず遵守すべきもの」として規程・標準並みの拘束力を持つ 場合がある
  • 用途:現場作業やシステム操作を円滑に行うために利用される
  • 形式:図表・スクリーンショットなどを交え、手順を順序立てて説明する
  • :「ソフトウェアのインストールマニュアル」「緊急対応マニュアル」
  • 位置づけ:要領をさらに具体的な作業レベルに落とし込んだ実務文書

具体例:「プリンタ使用マニュアル(抜粋)」

第1章 プリンタの利用方法  
1. 電源を入れる:本体右側のスイッチを「ON」にする。  
2. 用紙をセットする:給紙トレイにA4用紙を最大200枚まで入れる。  
3. 印刷する:PCから「Ctrl+P」で印刷ダイアログを開き、対象プリンタを選択。  
4. トラブル対応:紙詰まりが発生した場合はカバーを開き、赤いレバーを引いて用紙を取り除く。  

5. ガイドライン(Guideline)

  • 性質:行動や判断の「方向性」を示す指針
  • 拘束力:★☆☆☆☆(最も弱い)
  • 用途:組織や個人に対し、基本的な考え方や方針を示すときに使われる
  • 形式:文章主体で「こうあることが望ましい」と方向性を提示する
  • :「情報セキュリティガイドライン」「在宅勤務ガイドライン」
  • 位置づけ:柔軟な指針として、他の文書を補完し参考とされる

具体例:「在宅勤務ガイドライン(抜粋)」

第1章 在宅勤務の基本姿勢  
- 自宅であっても業務環境を整備し、業務効率を維持することが望ましい。  
- 業務開始・終了時刻を明確にし、生活リズムを崩さないよう努めること。  

第2章 情報セキュリティ上の配慮  
- 公共の場での業務は避けることが望ましい。  
- 自宅Wi-Fiには必ずパスワードを設定し、可能であればVPNを利用する。  

まとめ

  • 規程:守らなければならない基本ルール(最上位)
  • 標準:組織全体で統一すべき基準
  • 要領:制度やルールを実務に落とし込む運用方法
  • マニュアル:現場で迷わず行動するための具体的手順書
  • ガイドライン:望ましい方向性を示す柔らかな指針

※本資料で示した位置づけや定義はあくまで一般的な整理であり、実際の運用や呼び方は会社や組織ごとに異なる場合があることをご理解ください。

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