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QA主催!エンジニアとともに品質文化を育てるテスト勉強会の舞台裏

に公開

こんにちは!
atama plusでQAエンジニアをしています、池上です。

「エンジニアを巻き込んで品質について考えたいが、どう働きかければ良いかわからない」

そんな悩みを抱えるQAエンジニアの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、エンジニアを巻き込んで開催した「テスト勉強会」について、企画の背景から参加者のリアルな声までご紹介します。
開発チーム全体で品質向上を目指したい方のヒントになれば幸いです。

1. なぜ「テスト勉強会」を開催したのか?

QAチームが大切にしていること
本題に入る前にatama plusのQAチームが大切にしていることを紹介させてください。
atama plusのQAチームが、何よりも大切にしていること。
それは、「いいものを、タイムリーに、安定的にユーザーに届ける」というミッションです。
開発チームでは、私たちQAメンバーもチームの一員として仕様検討や開発計画の議論に深く関わります。
目指すのは「バグを見つける」より「バグを作らない」開発プロセスです。
そして、その実現には、QAエンジニアだけではなく開発チーム全体でプロダクトの品質を高める文化を育むことが不可欠だと考えています。

きっかけ:QAが開発のボトルネック
私の所属するチームはエンジニア4人に対しQAは1人です。
QAチーム横断での役割も担っている中で、QAのタスク、特にテスト設計が開発のボトルネックになってしまう、そんな状況が生まれつつありました。
このボトルネックを解消するために、エンジニア自身にもテストを考えてもらうことが必要でした。
その中で、どのようにテストを考えていけばいいかコツや工夫を知りたいという声を受けチーム内で勉強会をしたところ、学びが多かったとチーム内で声があったことから、対象を全社の開発組織に拡大し、希望者を募って全3回にわたる勉強会を開催することにしました。
また、勉強会を通して開発組織全体で品質カルチャーをさらに醸成する良い機会になると考えました。

2. エンジニアが主体的に学べる!勉強会の"2つの工夫"

ここから本題に入っていきます。
勉強会では、ゴールとして以下の2つを設定しました。

  • atama plusの品質保証プロセスにおいて大切にしていることを理解する
  • テスト設計の基本的な考え方とプロセスについて理解し、今後の開発で各自がテスト設計を進めることができるイメージが持てるようにする

このゴールを達成するため、ただ講義をするだけでは参加者の学びは深まりません。
勉強会は知識をインプットする「講義パート」と、実践する「ワークショップパート」の2部構成とし、参加者が主体的に、そして楽しみながら学べるよう2つの工夫を凝らしました。

工夫① 講義:「思想」と「思考の型」をセットで伝える
講義パートでは、一方的に知識を詰め込むのではなく、まずQAチームが大切にしている思想の共有から始めました。
「バグを見つけるより作らない」開発プロセスや「チーム全体で品質を高める」といった思想を最初に伝えることで、これから学ぶテスト設計が「何のため」なのか、その目的意識を参加者と揃えました。

その上で、具体的な「思考プロセスの型」を示しました。
テストケースを作成していくには、「開発背景の整理」から始まり「テストケース作成」に至るまで、いくつかの段階があります。
具体的には「①開発背景の整理→②機能仕様の整理→③テスト計画→④テスト分析→⑤テスト設計/実装」といった下記画像のステップで整理していきます。

いきなりテストケースの書き方を教えるのではなく、「何のために作るのか」という上段の整理から始め、徐々に具体的に落としていくプロセスそのものが重要だと強調しました。
この「思想」と「型」をセットで学ぶことで、仕様の考慮漏れを防ぎ、どこに重点的にテストコストをかけるべきか、的確に判断できるようになることを狙いとしました。

工夫② ワークショップ:実践的なアウトプットで「自分ごと化」する
インプットした知識を本当に身につけるには、実践が不可欠です。
そこで、勉強会の後半は「割り勘アプリ」という身近な題材を使ったワークショップパートとしました。
※題材としてテスターちゃん作者の練習用アプリを利用させていただきました。
ワークショップは以下のように進行しました。

  • 題材の説明
  • 開発背景の整理、仕様の整理などの上段整理について説明
  • 参加者全員でどんなテストをすればよいかをMiroに書き出してもらう
  • 難しかった点や他の人の参考になる点をディスカッション

以下の画像は実際の勉強会で使ったMiroです。

また、参加者がリアルタイムで質問や意見を交換できるように専用のSlackのスレッドを用意しました。
「どこまで細かくやるべき?」といった問いから、「背景整理からやるべきなのか!」という気づき、「キーボードの操作感は?」「スマホはサポートしないの?」といった具体的なユーザー視点の指摘まで、様々な意見が活発に飛び交いました。
ただテスト内容を考えるだけでなく、ユーザー視点でどういう仕様だと良いのか?という議論が起きていたのが、「いいもの」をユーザーに届けるというQAチームのミッションの一部を体現しているようで、とても嬉しかったです。

以下の画像は実施の当日Slackスレッドの様子です。

3. 参加者のリアルな声

全3回の勉強会を通じて、参加者から多くのコメントをいただきました。

  • ① 意識が変わった:「テストは最後にやるもの」からの脱却
    参加者からは「テストを『最後にやるもの』ではなく、『開発のメインプロセスを補強するもの』と捉えられるようになった」という声は、チーム全体で品質を考えるというカルチャーがより醸成された証です。

  • ② 解像度が上がった:QAの仕事への深い理解
    「なんとなく知っていたQAの仕事が、どういった観点や進め方をしてるのか具体的に知れて良かった」「毎回質の高いテスト設計ができる理由がわかった」など、QAの業務への理解とリスペクトの声もいただきました。

  • ③ 視野が広がった:チームで学ぶことの価値
    ワークショップでの「他の人のテスト分析観点を見ていろいろ考えが深まるのでよかったです!」という感想は、まさに開発組織全体で学ぶことができた嬉しい声です。

  • ④ 明日から使える:すぐに活かせる実践的な学び
    「ジュニアなエンジニアとかだと実装後のセルフチェックとして網羅できているといい観点ばかりだなと思いました!」という、翌日からの業務に直接活かすことができそうな声もいただきました。

そして何より嬉しかったのは、「取り組み自体が素敵だなと思ったので、ぜひ社外に発信していってほしいなと思いました!」という声でした。

4. まとめ

今回の勉強会がうまくいった要因は、思想と思考の型を示し、そして参加者が主体的にアウトプットする場を設計したことだと考えています。
そして、多くのエンジニアを巻き込んで開催したテスト勉強会を通して、開発組織全体の品質カルチャーをさらに強くすることができました。
ただ、今回の活動がゴールではありません。
プロダクト開発はエンジニアとQAだけではなく、デザイナーやプロダクトオーナー、さらにはビジネスチームとも連携して進めています。
ユーザーにとって「いいもの」を届けられるように、会社全体まで活動の幅を広げて品質カルチャーを醸成していきたいと考えています。

この記事が同じようにエンジニアを巻き込みたいと考えるQAエンジニアの皆さんの参考になれば幸いです!

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