Shopify 抽選販売の実装
はじめに
Shopifyで抽選販売を行いたいと考えたものの、対応しているアプリ(例:Raffle 315、Appifyなど)は月額費用が高く、定期的な利用にはコストが見合わないと感じました。
そこで、「比較的安価で抽選販売を実現できる方法はないか?」という観点から、もともと予約販売用途で導入していた「RuffRuff予約販売」アプリの機能を応用できないかを検討しました。
対象読者
- Shopifyで抽選販売を実装したいと考えている方
- 抽選販売専用アプリでは月額費用が高いため、コスト面で導入をためらっている方
- お客様への通知メールをカスタマイズする際にLiquidの編集が可能な方(※本記事では具体的なコード編集までは解説しません)
使用アプリ
RuffRuff予約販売(本来は予約販売用アプリですが、後払い(オーソリ→後決済)機能も備えています)。後払い機能を利用するには、Shopifyの仕様上、ShopifyペイメントまたはPayPalエクスプレスのいずれかを有効にしておく必要があります。こちら
※料金プラン・プランの違いについてはこちら
抽選販売における要件
- 抽選方法:先着順ではなく、応募者の中から当選者を後で選ぶ(アプリによる自動抽選は不要、手動でOK)
- 後払い形式:当選者のみ決済する
- 応募時にオーソリを取得し、当選後のキャンセルを防ぐ
実装ステップ
ここからは、RuffRuff予約販売アプリを使って抽選販売を実現するための具体的な設定手順を説明します。
1. 商品作成
Shopifyの管理画面のサイドバー「商品管理」から、抽選販売したい商品を作成してください。
2. RuffRuff予約販売のインストール
ストアからインストールして有効化してください。
3. 予約販売ルールの作成
まずは、RuffRuff予約販売アプリ内で「抽選販売に見立てた予約販売ルール」を作成していきます。
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Shopifyの管理画面のサイドバー「アプリ」→「インストール済みのアプリ」から「予約販売」をクリックし、設定画面を開きます
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「予約販売ルールを設定する」セクション内の「設定する」をクリックします
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右上の「ルールを作成」→「購入オプションを利用した予約販売」を選択し、新しい予約販売ルールを作成します
ルール名
任意のルール名を設定してください。
条件設定
どの条件で対象商品にするかを設定する箇所です。ここでは有効期間を設定するだけでも動作します。
アクション
- 「予約販売時・条件外・開始日前・終了日後」それぞれに対して、カートボタンの文言や表示メッセージを設定できます。
- また、「注文タグ」を活用すると、お客様への通知メールを個別に出し分けることが可能です。
- 購入数の制限を使えば「1回の注文で1個まで」といった制限は可能ですが、複数回の注文自体は防げないため、完全な制御はできません。
購入オプション
- 「購入オプションを有効にする」にチェック(予約プランの名前や説明などは任意で入力)
- 「後払い」セクションの「後払いの支払期日をチェックアウトからの日数で指定する」にチェック
- 保存
※これらの設定内容は一例です。実際の運用に応じてカスタマイズしてください。
4.商品にルールを適用
抽選販売にしたい商品に、先ほど作成したルールを適用します
- 予約販売アプリの「商品一覧」から該当商品を選択
- 「ルールを適用」をクリックし、作成済みのルールを適用します
5.メールのカスタマイズ
- Shopifyの管理画面から「設定」>「通知」>「お客様通知」へ進み、通知メールのカスタマイズを行います。
- 予約販売ルールで付与したタグが含まれる注文に対してのみ、専用のメールを出し分けることが可能です。
- 「注文の確認」テンプレートを編集し、応募完了時に送信されるメールを調整します。
- 「注文のキャンセル」テンプレートでは、落選者への通知用に内容を調整します。
6.動作確認
設定が完了したら、実際にテストして動作確認を行ってください。
オペレーション
設定が完了したあとは、実際の運用フェーズに入ります。ここでは、抽選の流れに沿ったオペレーション(応募受付・抽選・通知・決済・キャンセルなど)の手順をまとめています。
1.お客様:抽選応募期間
商品ページから抽選応募(=注文)を行う
2.管理者:抽選作業
応募者リストをもとに、任意の方法(例:ランダム抽選など)で当選者と落選者を決定します。
3.管理者:当選者の決済実行
- Shopify管理画面「注文管理」で当選者の注文をまとめて選択
- 「(•••)その他の操作」をクリック
- 「後払い請求をする」をクリック
- RuffRuffアプリの請求画面に遷移
- 「請求する」→ 確認ダイアログで再度「請求する」
4.管理者:落選者の処理
- Shopify管理画面「注文管理」で落選者の注文を選択
- 「(•••)その他の操作」→「注文をキャンセル」
- 「注文#〇〇をキャンセルしますか?」に対し、以下を設定
- キャンセル理由:「その他」(※キャンセル理由は任意です)
- 「在庫を補充」「お客様に通知を送信する」にチェック
- 「注文をキャンセル」をクリック
5.管理者:商品の発送準備・発送
該当の当選者分の発送処理
6.お客様:商品のお受け取り
商品が発送されると、通常のShopify注文と同様にお客様に発送通知が届きます。
その後、商品が指定の配送方法で届けられます。
工夫したポイント
- 高額な抽選販売専用アプリを導入せず、既存の予約販売アプリを応用して実現
- Shopifyのオーソリ(後決済)機能を活用し、当選後のキャンセルリスクを低減
- RuffRuffの比較的安価なプランでも運用でき、コストを抑えた試験導入が可能
課題と改善余地
- 抽選ロジックは手動運用のため、応募数が多い場合はオペレーション負荷が大きくなる
- 当選者の決済失敗(カードの期限切れ等)の可能性があるため、リマインド設計が必要
まとめ
抽選販売は専用アプリが必要という先入観があったが、予約販売アプリを工夫することでコストを抑えて十分に実現可能であることが分かった。
小規模な抽選販売や、初回導入時のテスト運用には特に有効な方法。
同じような課題を抱える方の参考になれば幸いです。

ASTRSK(astrsk.co.jp)は、スタートアップ・新規事業開発に強いシステム開発会社です。サービスやシステムの構築を得意としており、開発をはじめデザインやUXにおいても優れた経験と技術を有しています。
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