はじめに

この記事は Flutter Advent Calendar 2025 1日目の記事です。

私は2025年10月19日に韓国で開催されたFlutter Allianceに参加してきました。
あれから時間は経っていますが、せっかくなので、その時の現地の熱気や学び、そして私自身の登壇体験についてレポートします。

対象読者

海外カンファレンスでの登壇に興味がある
アジアのFlutterコミュニティの動向が気になる
「やってみたいけど...」と躊躇していることがある

1. Flutter Alliance 2025とは

Flutter Allianceは、Flutter Seoul、Flutter Tokyo、Flutter Taipeiが共同主催するアジア初のFlutterカンファレンスです。
今年の開催地は韓国のMicrosoft Koreaです。

https://flutter-alliance.org/

Google、Microsoftなどのエンジニアも登壇し、AIなどの最新技術トレンドはもちろん、Flutterの描画の仕組みやライブラリの内部実装に踏み込んだ「深掘り系」のセッションも充実しており、非常に濃密な技術共有の場となりました。

この3名がこのFlutter Allianceを牽引してくれていて、日本からは私を含め4名が登壇しました。

私自身は登壇者と公式カメラマンという二つの役割で参加しました。

https://x.com/jaichangpark
https://x.com/ma_freud
https://x.com/yiichenhi

Flutter Tokyoとは

Flutter Tokyoは、Google公式のFlutter Meetup Networkの東京支部です。

現在、日本で活動しているFlutter Meetup Networkのグループは、Flutter Tokyoのみとなっています。

Flutter Meetup Networkは、Flutterへの情熱で結ばれたMeetupグループの国際的なネットワークで、2025年12月1日時点で、世界62カ国に140のグループが存在し、106,743名のメンバーが参加する巨大なコミュニティとなっています。

私たちはその一員として、初心者から経験者まで誰でも気軽に参加でき、最近のFlutterでの取り組みをシェアできる場を目指して活動しています。

私はその1つのFlutter Tokyoの共同オーガナイザーの一人として、コミュニティの運営に携わっています。

https://x.com/flutter_tokyo

2. 登壇までの道のり

元々は登壇する予定ではなかった

正直に言うと、最初は登壇する予定はありませんでした。
理由は単純で、英語に自信がなかったからです。
技術的な内容を30分間、英語で伝えきれるのか。質疑応答でうまく答えられるのか。不安ばかりが先に立っていました。

背中を押してくれた仲間

そんな私の背中を押してくれたのが、同じFlutter Tokyoのオーガナイザーである青木さんでした。

「ブルさんならいけるよ」

この一言で、「やってみよう」という気持ちになりました。

青木さんは本当に背中を押す才能がある方だと思います。
Flutter Tokyoのイベントでも、様々な方の背中を押して登壇に導いてきました。
今回、自分がその対象になって、改めてその力を実感しました。

約1ヶ月間の準備

登壇を決めてからは、約1ヶ月間の準備期間がありました。

スライド作成
- 日本語で構成を固めてから英語に翻訳
- Figma Dev Mode MCP × Claude Codeの実践的な内容を中心に構成
発表原稿の準備
- 英語に自信がないため、原稿を一言一句用意
- 今思えば「原稿を読むスタイルでいい」と割り切ればよかったという後悔がある
- ゆっくり、明瞭に話すことを意識
デモ動画の事前準備
- ライブデモはリスクが高いと判断
- 実際のClaude Codeの動作を事前に録画
- Before/Afterのコード生成の様子を収録

直前の英語力の成長

登壇直前になって、自分でもわかるくらい短期間で英語力が伸びていることに気づきました。（それでもまだまだですが。）

準備期間中、毎日のように英語の原稿を読み込み、発音を確認し、何度も練習を重ねた結果です。

追い込まれると人は成長するものだと実感しました。

3. 登壇：Figma Dev Mode MCP × Claude Code × Flutter

発表概要

10月19日（日）14:30-15:00、Room Aにて30分の発表を行いました。

セッションタイトル
「Accelerating Flutter UI Development with Figma Dev Mode MCP × Claude Code」

内容

発表は大きく6つのパートで構成しました。

Figma Dev Mode MCPとClaude Codeの基礎
- MCPの価値：標準プロトコルでAIがFigmaを自律的に読み取れる
- なぜFlutterで話題にならないのか（Code Connect未対応など）
ツールを活かすための前提条件
- Figmaにエンジニアリングの視点を持ち込む
- AIがUIコードを生成することを前提にした設計（UI層とビジネスロジック層の分離）
Figmaの理解と構造化
- Variables、Component、Annotation、命名規則の重要性
- 構造化 = ノイズ削減 = 正確なAI生成
Claude Codeで意識すること
- デザインシステムとの紐付け
- カスタムコマンドの活用（/figma-mcp-createなど）
Flutter実装パターンの例
- 構造化されたFigmaと構造化されていないFigmaの比較
- Annotationを活用した動的な振る舞いの実装
AI生成コードの品質担保
- AIのミスを判断できる仕組み/人が必要
- 作業の適切な分類（自動化可能 / AI得意領域 / 人間必須）

アトラエで実践してきた内容を、具体的な実装パターンとともにお伝えしました。

ちなみに、私が所属している株式会社アトラエでは、Green,Wevox,Yentaなどのプロダクトを運営しています。
私はそこでモバイルエンジニアとして、Flutterをメインに、Kotlin, Swiftなどのアプリ開発を担当しています。

アトラエのメンバーもとても背中を押してくれていて、今回の登壇についても公式サイトのニュースに掲載してくれました。

こうしたサポートがあるからこそ、挑戦できているなと感じています。

質疑応答

発表後の質疑応答では、2つの質問をいただきました。

Figma Dev Modeの料金プランについて
Dev SeatとFull Seatの料金とできることの違いについての質問で、それについて説明しました。
Figma Dev Mode MCP以外に試しているツールはあるか
時間がなかったこともあり、その場では「ない」と答えました。ただ、登壇後に質問してくださった方と直接お話しする機会があり、そこで詳しく説明することができました。

初めての英語登壇を終えて

正直に言うと、瞬間的に自分が何を言っているのかわからなくなることがありました。

実は今回、公式カメラマンも兼任していたため、直前まで複数Roomを行ったり来たりして撮影に走り回っていました。
そのため、自分の発表の準備や気持ちを整える時間が全く取れず、息つく暇もなく本番を迎えることになり、そこは本当に苦労しました（笑）。

頭の中で日本語から英語に変換しながら話す場面では、思考が追いつかなくなることも。
「今、自分は何を言った？」という瞬間が何度かありました。

ただ、準備した原稿があったおかげで、そういう瞬間でも次の文章に進むことができました。
原稿を用意しておいて本当に良かったと思います。

ただ、改めて英語力は継続的に鍛えていかないといけないと痛感しました。これは今後の明確な課題です。

それでも、伝えたいことは伝えられたと思います。
聴衆の反応を見ながら、スライドの補助もあり、なんとか乗り切ることができました。
終わった瞬間の達成感は、今でも忘れられません。

また、いろんな登壇を見て、改めてまだまだ磨き足りないなと思うことがありました。
そういう意味でも、このような場はとても貴重な場となっています。

4. 各セッションの感想

カメラマンとして撮影しながらだったため、すべてのセッションに集中して聴くことは難しかったものの、印象に残ったセッションを紹介します。

日本人登壇者のセッション

Tsuyoshi Chujo (Chooyan)「AnimatedTo Changes Your Moving Animations, but How?」:

最近Flutter公式からも注目されているライブラリ gesture_recorderやanimated_to の作者であるChooyanさんのセッションです。
「Rebuildだけでアニメーションさせる」という魔法のようなパッケージの裏側にある、RenderObject のカスタマイズやレイアウト計算の仕組みについて深く解説されていました。技術的な深さはもちろんですが、Sliverやネスト、HitTestといった現状の課題についても正直に共有されており、今後の進化が非常に楽しみな内容でした。

Kenichi Kambara (korodroid)「Designing Borderless UX in Flutter: Insights from 50 Countries」:
50カ国以上を旅した経験を持つKambaraさんによる、グローバルなUXデザインについてのセッションでした。
LTR（左横書き）とRTL（右横書き）圏におけるUI/UXの違い（例えば「戻る」ボタンの矢印の向きやアイコンの配置など）や、各国の文化背景に基づいたデザインの重要性について、実体験を交えて語られていました。また、AI（ChatGPT, Claude, Gemini）を活用した翻訳やローカライズの効率化についても触れられており、世界中のユーザーに届けるための「ボーダーレスな体験」を作るためのヒントが詰まっていました。世界中で登壇されているその姿に、エンジニアとして強く憧れを感じました。

Ryutaro Iseki「Why MapLibre? Flexibility and the Freedom to Unlock Full Potential in Flutter Apps with Maps」:

Google MapsやMapboxといった有料マップSDKのリスク（予期せぬコスト増など）に対し、OSSで無料かつカスタマイズ性の高い「MapLibre」という選択肢を提示する内容でした。
自身が開発・運営されているアプリ「Foodgram」で実際に2年間MapLibreを利用し、マップコストをゼロに抑えている事例は非常に説得力がありました。
個人開発者やスタートアップにとって、強力な選択肢になると感じるセッションでした。

そんな彼も記事を書いていたのでぜひご覧ください！

海外ゲスト・Onlineセッション

Remi Rousselet (Riverpod Creator)「Riverpod 3.0 Changes」:
Riverpodの作者であるRemi Rousseletさんによる、待望のRiverpod 3.0に関するセッションでした。
自動リトライ機能の導入、Notifier 構文の統一による簡素化、Mutation によるUI副作用（フォーム送信など）の管理など、開発者体験を大きく向上させる変更点が紹介されました。特に、これまでの Configuration 機能を少し後退させ、Builder ベースのアプローチに注力するという方針転換は、今後のRiverpodの方向性を知る上で非常に重要なインサイトでした。

https://riverpod.dev/ja/docs/whats_new

Flutter Koreaのセッション

Dream Walker「Getting Started with On-Device AI in Flutter」:
本イベントの主催者でもあるDream Walkerによる、On-Device AI（オンデバイスAI）の入門セッションでした。
AIの実行環境を「Model（脳）」「Hardware（体）」「Inference Engine（翻訳機）」の3要素に分解して解説し、TensorFlow Liteの後継である「LiteRT」や「Google AI Edge SDK」といった最新ツールの動向も紹介されていました。
特に実践編では、flutter_gemma や cactus といったパッケージを使って、Flutterアプリ内でGemmaモデルなどを動かす具体的な手順が示され、アプリエンジニアにとってAIがより身近なものに感じられる内容でした。

Flutter Taipeiのセッション

Yii Chen「Beyond Features: Building Apps with Exceptional User Experience」:
単なる機能実装を超えた「体験（Experience）」の作り方についてのセッションでした。
UIとUXの違いから始まり、マイクロインタラクション（数字のフリップアニメーションやドラッグ&ドロップなど）の実装詳細、そしてLocal DBを正としたオフラインファーストなアーキテクチャについて解説されていました。
特に、「We're not just developers, we're writers, and we're real users.（私たちは単なる開発者ではなく、ライターであり、ユーザーである）」という言葉には、コードを書くだけでなく「ユーザーの体験」そのものを作るクリエイターとしての矜持を感じ、非常に感銘を受けました。

5. アジアのFlutterコミュニティとの交流

Flutter Korea：Dream Walkerとの再会

Flutter KoreaのオーガナイザであるDream Walkerとは、Flutter Kaigi2024以来の再会でした。
彼はFlutter Allianceの創設者・主催者でもあり、このカンファレンスを実現させた立役者です。
カンファレンスの運営で忙しい中でも、登壇者やスタッフへの細やかな配慮を欠かさない姿勢に感銘を受けました。

今回を通じてより親しくなることができたと感じています。
同じオーガナイザーとして、コミュニティ運営の苦労や喜びを共有できる仲間が近くにいることは、大きな励みになります。

Flutter Taipei：Yii Chenとの対話

Flutter TaipeiのオーガナイザであるYii Chenとは、AI時代における各国の開発者事情やエンジニア市場について話す機会がありました。

どこの国の会社も同様で、AIの登場によって以前より　ハイレベルな開発者を探しています。
ただ、そもそもFlutter人材は不足しているので雇用もうまくいきません。

若手を育てたいけど、実際にはAIの方が使い勝手が良かったり優秀だったりします。
そんなAI時代なので、「ただコードが書ける」だけでは厳しくなる可能性があり、どういったところが差別化ポイントになっていくのだろうか。

そんな話をYii Chenと交わしました。

異なる国・コミュニティの視点から意見を交わせたのは非常に刺激的で、今後のキャリアを考える上でも貴重な時間でした。

日本からの参加者との時間

今回は登壇者4名に加え、他の日本からの参加者も含めて総勢7名ほどで行動を共にしました。
全員がFlutter Tokyoのイベントに参加したことがある、気心の知れた仲間たちでした。

初めての海外カンファレンスで緊張する場面もありましたが、「いつもの仲間たち」と一緒だったことで、安心感を持って過ごすことができました。

韓国の街を一緒に回ったり、食事をしたり。
カンファレンス以外の時間も含めて、最高の思い出になりました。

6. カメラマンとしての記録

今回、登壇だけでなく公式カメラマンとしても参加しました。
愛用のCanon R6 Mark IIと三脚を日本から持ち込み、カンファレンスの記録を残しました。

カメラマンとして参加することで、登壇者一人ひとりの表情や、会場の熱気を間近で感じることができました。

ファインダー越しに見る登壇者の姿は、それぞれの準備と想いが伝わってきて、撮影しながら感動する場面も多かったです。

写真を通じてカンファレンスの空気感を残すことは、参加者の思い出になるだけでなく、コミュニティの記録としても価値があると考えています。

SNSで「この写真、自分が写ってる！」という反応をもらえると、カメラマンとしてとても嬉しいです。

最後の抽選会では、Tシャツや技術書が当たるたびに会場が沸き、その笑顔を写真に収めることができて本当に良かったです。

7. コミュニティ、そして「人」への感謝

今回のFlutter Allianceを通じて、技術的な学び以上に、コミュニティを支える「人」の温かさと強さを実感しました。

正直なところ、コミュニティ運営は大変です。
私もオーガナイザーの端くれとして痛感していますが、全員が忙しい中で時間を割き、時には自分のことを後回しにしてでも「場所」を作り続けています。

今回、最高の舞台を用意してくれた皆さん。
彼らの「やり切る意志」があったからこそ、私たちも最高の思い出を持って帰国できました。
心からの感謝を伝えたいと思います。

8. 「完璧じゃないから」と諦めないでほしい

最後に、この記事を読んでくださっているあなたへ。
もし今、「海外カンファレンスに興味はあるけど...」と躊躇しているなら、ぜひ一歩踏み出してみてください。

今回の私がそうだったように、準備が万全でなくても、英語が流暢でなくてもいいんです。

「完璧になってから」を待っていたら、チャンスは逃げていきます。
大切なのは、やらない理由を探すのではなく、「やってみる理由」を見つけること。

そして、もし足がすくんだら、周りの仲間を頼ってください。
私には青木さんがいたように、あなたにも背中を押してくれる人が必ずいます。

一歩踏み出した先には、想像以上の景色が待っています。
私が今回、韓国で得た経験と自信は、行く前の何倍もの価値がありました。

少なくとも、私たちFlutter TokyoはいつでもWelcomeですし、めちゃくちゃ応援します！

9. 来年のFlutter Allianceでお会いしましょう

次回の開催地はまだ未定ですが、Dream Walkerが今アジアで探しているとのことでした。
場所がどこであれ、私は参加しようと思います！

登壇できるかは分かりませんが、少なくとも運営(カメラマン)として、愛用のカメラのR6 Mark IIと共に皆さんの勇姿を記録しに行きます！

なのでいつでも写真撮ってほしければ気軽にお声がけください！笑

次回予告

次は日本からもっと多くの仲間と一緒に行けることを願っています。
普段のFlutter Tokyoでのイベント、そして来年のFlutter Allianceでお会いしましょう！

📢 お知らせ & 関連リンク

登壇資料(日本語版)

Flutter Tokyo
写真見て一緒にわいわいしたなと思った方も、Flutter Tokyoも毎月のようにハイブリッドで開催してますのでお気軽にご参加ください！

https://flutter-jp.connpass.com/

株式会社アトラエ
もし私と一緒にアトラエのメンバーになることに興味を持ってくださった方がいたら、ぜひ、以下リンクから詳細をご覧ください。
良い仲間と、良いプロダクトを創る、アトラエのメンバーを募集しています！よろしくお願いします！

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