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ドキュメント文化 vs 同期型コミュニケーション文化

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これはなに

議論形態について色々と調べた内容をまとめた資料。
内容としては ドキュメントを起点に議論を展開するドキュメント文化 と、ドキュメントを使用せず口頭で合意形成を行う同期型コミュニケーション文化 の比較。
前者も意味合いとしては同期型コミュニケーションとなるが、この資料では同期型コミュニケーション=同じ時間・人の間でのみ共有される議論形態を指す。

モチベーションとしては、最近知り合ったベンチャー企業の方が同期型コミュニケーション文化を賞賛していた際、この辺りのコミュニケーション設計を体系的に理解出来ていなかったので双方を比較し批評する為に書いている。(批評するプラットフォームがドキュメントというのが皮肉のようになってしまっている☺️

そもそも議論とは?

複数の認識・前提・視点を統合し、意思決定の質を最大化すること。

構造的には以下の三段階に整理される。

① 認識を揃える

  • 前提・事実認識・価値観を可視化し差分を明確にする
  • ズレを発見する装置である為、意見の衝突が発生する事は健全な状態
  • => 共通の地図を持つ事がゴールとなる

② 視点を広げる

  • 議論を通じて、自分一人では見えてこなかった視点・リスク・代替案を見つける
  • 「盲点の発見」こそが議論の価値となる
  • => 意思決定の材料を最大化する事がゴールとなる

③ 意思を固める

  • 集めた情報を元に、「何を」「なぜ」「どのように」進めるかを決定する
  • 議論のゴールは合意そのものではなく、行動可能な意思決定となる
  • => 組織として前に進む為の合意形成がゴールとなる

tips:誤った理解例

誤った目的 問題点
勝つ・説得すること 感情的な対立が増え、論点がズレる
全員の満足を優先すること 意思決定が曖昧になる
その場の納得感を得る 安心感は得られるが、実行段階で破綻する
結論を急ぐこと 前提が揃っていないまま決定し、リワークが発生する

ドキュメント文化 vs 同期型コミュニケーション文化

結論として事業フェーズ等の状況問わずドキュメント文化に倒すのがベター。

同期型コミュニケーション文化が抱えている課題

同期型コミュニケーションの最大の問題は情報処理が人依存になってしまうことで、非合理な意思決定・説明責任の欠如・属人化の発生を招いてしまうこと。
プログラマ的視点で言うなら登録データの非永続化、ログの欠如・処理の考慮漏れ等を許容するシステムとなっている。

課題について三層に整理すると以下のようになる。

① 時間依存性(Temporal Bottleneck)

  • 同期型コミュニケーションは「同じ時間・場所・文脈」でしか発生しない
  • 参加出来なかったメンバーへの情報共有にも時間的コストがかかる
  • 結果としてステークホルダーの数だけ合意形成にかかる時間が指数的に増えていく

② 記憶依存性(Memory Bottleneck)

  • 参加者全員の共通認識が残らず、認知していない意思決定などが発生する
  • この構造は、属人化・再発防止不能・説明責任の欠如を招く

③ 認知不可の遍在(Congnitive Bottleneck)

  • 全員が同じ速度で議論を理解出来る訳ではない
  • 認知負荷の低い人物の発言力が強まってしまう。
  • 結果、非合意な意思決定に繋がる

なぜ同期型コミュニケーションを選択するのか

同期型コミュニケーションを選択する理由には認知バイアスなどといった組織運営におけるトラップが絡んでくる。
ドキュメント文化を経験し、そのメリットを十分に享受出来ていないニュートラルな状態で選択してしまうのは理解出来る。
ここでは理由を可視化し構造的に理解を深めていく。

カテゴリ 内容 結果
心理的要因 口頭ベースの方が早い・楽・温度感が伝わると錯覚する。認知不可の遍在を政治的側面から悪用したい。 短期的に安心感は得られるが長期的には負債化する。
文化的要因 話せばわかる・根回し文化 など日本的ヒューマンオペレーション 書くこと = 事務的・冷たい と言う誤解
構造的要因 ドキュメント整備の費用対効果が短期的に見えてこない 投資効果が見えずドキュメント軽視が常態化
スキル的要因 書く・構造化するスキルがチームにない 書く文化が育たず、結局話した方が早い。となる

ドキュメントは議論をデザインする装置

まとめのようになってしまうが、なぜ議論を行う際にドキュメントを参照した方が良いのか。その答えを可視化していく。

以下、同期型コミュニケーションが抱えている課題とドキュメントを使用した結果のマトリクス

課題 ドキュメントを使用した結果
ゴール/合意形成の欠如 明示的に会の目的を共有することで課題意識が共有される
前提知識の偏り 前提知識を記載する事で参加者間での知識差分の解消が行われる
寄り道による議題の失念 本題が目に見えている状態で議論を行うことにより解消される
雑談による時間の浪費 アジェンダという議論の地図が可視化される事で時間意識が芽生える
内容の失念 決定内容と背景がステークホルダー全員に共有される。

結論として、ドキュメント文化は議論をデザインし、これら課題を解決する装置になり得るので採用した方が良い。

所感

今回ChatGPTに壁打ちになってもらったのだが、最高過ぎた。

同期型コミュニケーション文化を賞賛された際のモヤモヤを構造的に理解する事が出来た上に新たな発見を得られたので今後も学習に活用していきたい。

また、今回の話はコミュニケーション設計という組織設計に関わる分野の話らしい。この辺の議題面白いので深ぼっていきたい。

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