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都電LT #0 を開催してみた

2025/01/12に公開

去る2025年01月11日、「都電LT #0」なるイベントを開催してきました。終始大盛り上がりでイベントとしては大成功と相成りましたので、運営側の視点から「次は自分が都電LTをやりたい」という人のために色々とまとめを残しておきます。

貸し切り車両
貸し切り専用車両。わかりにくいが方向幕に「貸切車」と書かれていてテンションアゲアゲ

都電LTとは

何の紹介もなくいきなり「都電LT」と書きましたが、端的に言うと都電荒川線を1両まるまる貸し切って、そこを会場としてLT大会を行う、というイベントです。

通常のLT大会は

  • 専用の会議室やオフィスなどの会場を用意して
  • マイクとプロジェクターを使って
  • 5分間で行う

イベントですが、都電LTは

  • 都電の車両をまるっと貸し切って
  • 車内設備が使えないため印刷した資料や地声を駆使して
  • 3駅分(約5分)の駅間で行う
    異色のイベントとなります。

もともと YAPC2024::Hakodate 2024 のアフターイベントとして開催された「函館市電LT[1]にフィーチャーされ、せっかくなら東京でもやってみようと、函館市電LTの言い出しっぺと旭川で天ぷらを食べながら相談した2024/09/02の会話が発端となっています。

ハッシュタグ「#toden_lt」でイベントの様子が後追いできますので、まずはTwitterで検索してみてください!

都電の貸し切りについて

基本的には都電公式サイトの情報を参考にできますが、一部直接やってみないと分からなかったことがあるので色々と補足しつつ説明します。

下見について

何はともあれ下見は行くと良いです。乗車時の揺れや、どこで発表をさせた方が良いかなどについて感覚を得ることができます。今回は進行方向前側に立ってもらう(折り返すと逆になる)という方式でやってもらうことにしました。また、不明な点を荒川車庫併設の都電営業所で直接聞くこともできました。その節はご丁寧に対応いただきありがとうございます。このおかげで申し込みに対する不安をかなり払拭することができました。そのときの知見は以下の文章にも随時織り込んでいます。

申し込みについて

都電の貸し切りは、貸し切り日の2ヶ月前の1日の朝10時から申し込みをすることができます。例えば今回だと01月11日に貸し切りを行いたかったため、11月01日の午前10時に申し込みをしています。申し込みは荒川車庫に併設された都電の営業所に行くか、電話で行います。今回は電話で行いました。

計画では年末に開催予定だったため、10月01日にも電話をしていました。しかし231回かけ直してようやく電話が繋がった午前10時20分ごろの時点で、希望日がすでに埋まってしまっていたため、あえなく断念となりました。

11月01日に電話をした際は、100回かけ直して10時05分に電話を取ってもらえたため、上手いこと予約まで進むことができました。

その後、都電のHPから申込書をDLして情報を埋め、電話で教えてもらった秘密のメールアドレスに送信すると申し込みは完了となります。最後に、運転当日朝11時までにイベント決行の連絡を入れる必要があるので、こちらも忘れずに。

利用できるダイヤについて

平日ダイヤに関しては色々柔軟に対応可能のようですが、休日ダイヤは13時三ノ輪橋発、14時に早稲田で折り返して15時三ノ輪橋着の1便しか対応していません[2]。このため申し込みが集中するようです。

貸し切り料金について

片道13,820円です。今回は往復だったので27,640円でした。個人でまるまる被っても普通に払えるぐらいの金額だったのも今回のイベントを後押ししてくれたひとつの理由となります。今回は参加者でざっくり割り勘して、ひとり1000円+カンパという形できれいに収めることができました[3]

ちなみに、荒川車庫前→三ノ輪橋の経路も「片道」に含まれてしまうようなので、この経路を合算すると最大4往復分の料金を払うことになります。あまりコスパが良くないので、積み込みに時間がかかる企画を行うなどのよっぽどのことがない限りは無理に借りなくても良いものかと思います。

料金の支払いは最初の乗車時に行います。降車時にもできるとありますが、折り返し営業便になるまでに結構時間的余裕がないため、もたつくと大変です。また現金のみの精算となりますが、おつりも用意してくれるのでちょうどの額または28,000円を持参すると良いでしょう。手書きの領収書をくれるので受け取ってください。

車両について

都電の車両は申し込むときに、7700系、8500系、8800系、8900系、9000系から選ぶことができます。車両のスペックは新しいため8x00系が高めかと思われます。しかしラッピング車両が多数走っていてどれが当たるか分からないという欠点もあります。7700系や9000系はレトロっぽい見た目で固定なので、今回はその中でも車歴が浅い9000系に絞って申し込みました。

なお車両数が少ない9000系のうち1台が臨時で修理に入ってしまったらしく、当日出せないかもしれないので代わりに何を出して欲しいか教えてという電話を直前に受けています。これはレアパターンかもしれませんが、一応そういうシチュエーションにもなりうると頭の片隅においておくと良いでしょう。なお、当日は無事に9000系での運行となりました。

電車の定員自体は60人程度に設定されていますが、着席可能数はどれも20席です。荒川線の駅間を早稲田の前後で分割しつつ3駅分で割っていくと、18枠+あまり前後2枠取れたので、前後の余った部分は開会式と閉会式に割り当て、全ての参加者が着席できるよう見学枠を設けず18人全員が発表枠という設計に落とし込みました。

実際にイベントをやってみて、やはり立ち見がいると席から見えなくなってしまうことも容易に予想できたので、多少の立ち見は入れても良いかもしれませんが、参加人数自体は最大で25人程度かと思われます。ただ、余った座席は荷物置きとして重宝されたので理想的には20人ぴったり程度に抑えた方が取り回しやすいと感じるところです。

その他

車内清掃をせずそのまま折り返し営業運行となるため、車内での飲食は原則禁止で、飲み物として水またはお茶のみが例外的に許可される、という規則になります。これは違反するとかなり怒られが発生する可能性がありますので、参加者への周知が必ず必要です。

また、早稲田折り返し後の荒川車庫前電停で乗務員の交代が行われます。進行方向側のドアの前は広く開けておくとスムーズです。全員でお礼が言えるととても気持ちよく交代の議を終えられます(重要)。

発表について

今回車内設備が一切使えないというのが逆に面白い縛りとなって、皆さんの創意工夫あふれる様々な発表を見ることができました。制約はイノベーションを生むんですね。しみじみと感じます。また発表時間も約5分とありますが、道路または専用軌道上での信号待ちなど外部要因で伸び縮みするため、発表する側も非常にスリリングな体験を味わうことができます。無慈悲に中断されることある一方、戻って詳しい話を補足したり、思わぬ質疑応答タイムが生まれるなど、楽しいアクシデントとなりました。

https://x.com/windhole/status/1877488773644300471

基本の発表スタイルはiPadやノートPCを手に持って資料を見せながら地声で行うというものでしたが、紙芝居の枠をこのためだけに買って発表してくれたり、文字が細かいので手元で見てくださいと事前にconnpassの資料共有機能で手元のスマホから見られるようにしてくれていたり、スライド同期ツールを自作して挑む猛者がいたり、音楽が流れたり、スケッチブックに書いてきたり、発表資料と言ってまるまる持ってきたスーツケースから次々に何かを取り出したりするなど、本当に予想もしない発表が次々と現れて、我々の常識をぶっ壊してくれました。

今回LTを盛り上げるに当たって「都電LTタイマー」というツールを雑に作成しました。これも函館市電LTにフィーチャーされています。機能としては現在地から選択した電停までの距離を計測して表示してくれるWebアプリです。オマケで時速と予想到着時間も表示していますが、GPSのブレがダイレクトに反映されるため結構ピーキーになってしまい、もう少し安定させる方策を仕込む必要がありそうです。ただ、現在地が分かるだけで結構盛り上がりまして、「残り1分」のベルの代わりに「発表終わりそうだけどあと1駅あるよ!」とか「まだ終わってないけどあと0.3駅しか残ってないよ!」みたいなかけ声が自然に湧き出てきたのがとても印象的でした。

また「貸し切り」というのが珍しいのか、駅で訝しみつつ中を覗く人や、乗り込もうとして扉が開かないことに驚く人など、乗っているときの謎の優越感(?)も楽しみのひとつかと思います。早稲田で折り返すときに運転手さんが車内を横切って反対側の運転台まで移動されるのですが、「みんな話がうまいね」と感想を述べてくれたのも良かったポイントでした。指さし呼称で安全運転しつつも、発表を聞いてもらっていたことにびっくりでした。

次回に向けて

まず、申し込みの電話をかけるのが結構しんどいので勢いが必要です。バイブスの高まりを作っていきましょう。それさえ超えればあとはconnpassを用意して告知を頑張るだけです。LTタイマーは使い回しができるので、次回以降は参加者の迎え入れに集中できそうです。

また15時に三ノ輪橋で強制解放されます。今回そのためオフィシャルな懇親会を用意しませんでしたが、結局ほとんどの参加者が物足りないと残ってくれたので、やはり事前に何か見繕って置いた方が良さそうであるなと感じています[4]

冬なのでインフルやコロナなどの感染の可能性もあり、そのために直前のドタキャンがあるとその枠がまるまる空くので駅間のカウントに結構困ります。一般の会場でやるLTと違って休憩時間での調節が難しいためです。ドタ参加させられる人を見繕っておくとか、主催陣の発表枠を最初は削っておいて足りなくなったら自分で話すとか、いろいろな策を仕込んでおくと安全でしょう。

あとまったりお昼を食べていたら主催が遅刻しそうになりました。今回は元々知っている人が先に集合場所に立っていてくれたので、とても助かりました。ありがとうございます......

https://x.com/aruneko99/status/1877920778609463417

なにはともあれ、ご参加いただいた皆さん、そして今回勝手に巻き込んでしまった運営の皆さん、都電LTを盛り上げていただいて本当にありがとうございます。またのご参加、あるいは主催を心よりお待ちしております。電車を借り切ってのLT大会には一定の知見が溜まりましたので、路面電車などがある各地でのイベントの余興にもいかがでしょうか。喜んで手伝いに行きますので、お声かけお待ちしています[5]。このノウハウを活用して広げよう公共交通LTの輪!

脚注
  1. もっとも、函館市電に関しては車内設備が利用可能であるため、車内のディスプレイやマイクを使うことができ、もう少し一般的なLTに近いイベントであったであろうと推測できます。 ↩︎

  2. 正確には、荒川車庫前発着の便でも貸切可能なため、スタート前に荒川車庫前→三ノ輪橋の経路と折り返し後の三ノ輪橋→荒川車庫前の経路も追加で貸し切りに含めることが可能です。含めなかった場合はゴール後の三ノ輪橋折り返し便に一般のお客さんを乗せて、とぼとぼと車庫に帰っていきます。 ↩︎

  3. 不特定多数に対してSNSなどで募集を行い有料のイベントとして開催すると旅行業法の規制を受けるケースがあるようです。今回は苦しいですが参加費が無料だけど貸し切り代金は割り勘するよという言い訳を使っています。 ↩︎

  4. 今回は三ノ輪橋駅前のカフェ兼ホテル「都電屋」さんにお世話になりました。急だったにもかかわらず15名ほどの参加者をまるっと受け入れてくれて、本当に助かりました。お料理おいしかったので皆さんもぜひ。PayPay含む各種電子マネー決済も対応してます。 ↩︎

  5. 次はゆいれーるでやりたいなぁ ↩︎

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