KaTeXの数式環境一覧
はじめに
KaTeXでは数式環境を使って行列、表、場合分け、方程式などを表現できます。
この記事では、KaTeXに実装されている全ての数式環境について説明します。
一覧表
環境 | 引数 | 結果 |
---|---|---|
matrix | 行列 |
|
matrix* | [lcrから一つ] |
行列 |
pmatrix | (行列) |
|
pmatrix* | [lcrから一つ] |
(行列) |
bmatrix | [行列] |
|
bmatrix* | [lcrから一つ] |
[行列] |
vmatrix | |行列| |
|
vmatrix* | [lcrから一つ] |
|行列| |
Vmatrix | ‖行列‖ |
|
Vmatrix* | [lcrから一つ] |
‖行列‖ |
Bmatrix | {行列} |
|
Bmatrix* | [lcrから一つ] |
{行列} |
smallmatrix | 小さな行列 |
|
array | {lcr|:の重複順列} |
表 |
darray | {lcr|:の重複順列} |
ディスプレイスタイルの表 |
subarray | {lcから一つ} |
小さな表 |
cases | {場合分け |
|
dcases | {ディスプレイスタイルの場合分け |
|
rcases | 場合分け} |
|
drcases | ディスプレイスタイルの場合分け} |
|
split | 行分割(インライン不可) |
|
equation | 番号付き方程式(インライン不可) |
|
equation* | 番号なし方程式(インライン不可) |
|
align | 番号付き&揃え(スペース付き、インライン不可) |
|
align* | 番号なし&揃え(スペース付き、インライン不可) |
|
aligned | 番号なし&揃え(スペース付き) |
|
alignat | {&の数/2} |
番号付き&揃え(インライン不可) |
alignat* | {&の数/2} |
番号なし&揃え(インライン不可) |
alignedat | {&の数/2} |
番号なし&揃え |
gather | 番号付き中央揃え(インライン不可) |
|
gather* | 番号なし中央揃え(インライン不可) |
|
gathered | 番号なし中央揃え |
|
CD | 可換図式 |
共通事項
環境は\begin{環境名}
で始まり\end{環境名}
で終わります。
改行には\\
、\cr
、および\\[distance]
を使います。distance は{1em}
などのKaTeX単位です。
環境内では平行実線\hline
および平行点線\hdashline
が使えます。
\arraystretch
は数式環境で通常の行の高さに掛けられる倍率です。\arraystretch
の定義が全体に波及することを望まないなら、{}
で定義を囲んで閉じ込めます。
{
\def\arraystretch{1.5}
\begin{array}{c:c:c}
a & b & c \\ \hline
d & e & f \\
\hdashline
g & h & i
\end{array}
}
matrix系 - 行列
matrix
、patrix
、batrix
、vatrix
、Vatrix
、Batrix
は行列です。最初の文字に応じて括弧の種類が決まります。
\begin{matrix}
a & b \\
c & d
\end{matrix} \quad
\begin{pmatrix} % 丸括弧
a & b \\
c & d
\end{pmatrix} \quad
\begin{bmatrix} % 角括弧
a & b \\
c & d
\end{bmatrix} \quad
\begin{vmatrix} % 縦棒
a & b \\
c & d
\end{vmatrix} \quad
\begin{Vmatrix} % 二重縦棒
a & b \\
c & d
\end{Vmatrix} \quad
\begin{Bmatrix} % 波括弧
a & b \\
c & d
\end{Bmatrix}
これらの環境名に*
を付けると揃え位置を指定できます。[l]
は左揃え、[c]
は中央揃え、[r]
は右揃えです。
\begin{vmatrix*}[l]
a_{11} - \lambda & a_{12} & a_{13} \\
a_{21} & a_{22} - \lambda & a_{23} \\
a_{31} & a_{32} & a_{33} - \lambda
\end{vmatrix*} \quad
\begin{vmatrix*}[c]
a_{11} - \lambda & a_{12} & a_{13} \\
a_{21} & a_{22} - \lambda & a_{23} \\
a_{31} & a_{32} & a_{33} - \lambda
\end{vmatrix*} \quad
\begin{vmatrix*}[r]
a_{11} - \lambda & a_{12} & a_{13} \\
a_{21} & a_{22} - \lambda & a_{23} \\
a_{31} & a_{32} & a_{33} - \lambda
\end{vmatrix*}
smallmatrix
は小さな行列です。*
付きはありません。
\begin{smallmatrix} a & b \\ c & d \end{smallmatrix}
array系 - 表
array
、darray
は数式を表の形に並べます。揃え位置lcr
と垂直線位置|:
の重複順列を設定できます。
\begin{array}{c|cc}
a & b & c \\
x & x + y & x + y + z
\end{array} \\
\begin{array}{l|cc:r}
\text{左} & \text{中央} & \text{中央} & \text{右} \\ \hline
x & x + y & x + y + z & x + y + z + w \\ \hdashline
x^2 & x^2 + y^2 & x^2 + y^2 + z^2 & x^2 + y^2 + z^2 + w^2
\end{array}
subarray
は小さな表です。揃え位置の{l}
または{c}
一つだけを指定します。&
は使えません。
\sum_{
\begin{subarray}{l}
i \in \Lambda \\
0 < j < m
\end{subarray}
}
cases系 - 場合分け
cases
、dcases
、rcases
、rdcases
は場合分けです。各行の&
で区切られた最初の二項は左揃え、それ以降は中央揃えです。
cases
、dcases
は左側に波括弧を付けます。cases
はテキストスタイル、dcases
はディスプレイスタイルです。
\begin{cases}
na & (r = 1) \\
\frac{a(1 - r^n)}{1 - r} & (r \ne 1)
\end{cases} \quad
\begin{dcases}
na & (r = 1) \\
\frac{a(1 - r^n)}{1 - r} & (r \ne 1)
\end{dcases}
rcases
、rdcases
は右側に波括弧を付けます。rcases
はテキストスタイル、rdcases
はディスプレイスタイルです。
\begin{rcases}
na & (r = 1) \\
\frac{a(1 - r^n)}{1 - r} & (r \ne 1)
\end{rcases} \quad
\begin{drcases}
na & (r = 1) \\
\frac{a(1 - r^n)}{1 - r} & (r \ne 1)
\end{drcases}
split - 行分割
split
は式を複数の行に分割します。
式を揃える位置として、各行に&
を一つだけ置けます。インラインモードでは使えません。
\begin{split}
a &= b + c \\
&= d + e
\end{split}
equation系 - 番号付き方程式
equation
は方程式に番号を振ります。インラインモードでは使えません。
\begin{equation}
a^n + b^n = c^n
\end{equation}
これ単体では改行できず、&
も使えません。改行にはsplit
が必要です。
\begin{equation}
\begin{split}
a &= b + c \\
&= d + e
\end{split}
\end{equation}
equation*
は番号を振りません。
\begin{equation*}
a^n + b^n = c^n
\end{equation*}
align系 - 行揃え
align
、align*
、aligned
は複数の行を各行の奇数番目の&
で揃え、偶数番目の&
でスペースを入れて区切ります。
-
align
は各行に番号を振ります。インラインモードでは使えません。 -
align*
は番号を振りません。インラインモードでは使えません。 -
aligned
は番号を振りません。インラインモードでも使えます。
\begin{align}
a &= x + 2 & b &= 2x & c &= x^2 \\
a &= y & b &= y - 1 & g &= \frac{y}{3}
\end{align}
\begin{align*}
a &= x + 2 & b &= 2x & c &= x^2 \\
a &= y & b &= y - 1 & g &= \frac{y}{3}
\end{align*}
\begin{aligned}
a &= x + 2 & b &= 2x & c &= x^2 \\
a &= y & b &= y - 1 & g &= \frac{y}{3}
\end{aligned}
番号を振りたくない個別の行には\notag
を指定します。
\begin{align}
a = b \\
c = d \notag \\
e = f
\end{align}
alignat系 - 余白のない行揃え
alignat
、alignat*
、alignedat
は{&の数/2}
を引数に取り、複数の行を各行の奇数番目の&
で揃えます。位置を揃えるのに必要な最低限のスペースを偶数番目の&
に挿入します。
-
alignat
は各行に番号を振ります。インラインモードでは使えません。 -
alignat*
は番号を振りません。インラインモードでは使えません。 -
alignedat
は番号を振りません。インラインモードでも使えます。
\begin{alignat}{2}
10&x +& 3&y = 2 \\
3&x +& 13&y = 4
\end{alignat}
\begin{alignat*}{2}
10&x +& 3&y = 2 \\
3&x +& 13&y = 4
\end{alignat*}
\begin{alignedat}{2}
10&x +& 3&y = 2 \\
3&x +& 13&y = 4
\end{alignedat}
&
の存在によって記号周りの空白が想定通りに入らない場合、空の{}
を挟んで調整するテクニックがあります。
\begin{alignat}{2}
10&x +{}& 3&y = 2 \\
3&x +{}& 13&y = 4
\end{alignat}
gather系 - 中央揃え
gather
、gather*
、gathered
は複数の行を中央揃えします。&
は空白を挿入する位置です。
-
gather
は各行に番号を振ります。インラインモードでは使えません。 -
gather*
は番号を振りません。インラインモードでは使えません。 -
gathered
は式中で使えます。インラインモードでも使えます。
\begin{gather}
a & b & c & d & e \\
a = x + 2 & b = 2x & c = x^2 & d = 2x^2 + 2 \\
a = y & b = y - 1 & g = \frac{y}{3}
\end{gather}
\begin{gather*}
a & b & c & d & e \\
a = x + 2 & b = 2x & c = x^2 & d = 2x^2 + 2 \\
a = y & b = y - 1 & g = \frac{y}{3}
\end{gather*}
\begin{gathered}
a & b & c & d & e \\
a = x + 2 & b = 2x & c = x^2 & d = 2x^2 + 2 \\
a = y & b = y - 1 & g = \frac{y}{3}
\end{gathered}
CD - 可換図式
CD
は可換図式です。
@<<<
、@>>>
は左右の矢印で、@<上ラベル<下ラベル<
や@>上ラベル>下ラベル>
とすると矢印の上下にラベルを付けます。
@AAA
、@VVV
は上下の矢印で、@A左ラベルA右ラベルA
や@V左ラベルV右ラベルV
とすると矢印の左右にラベルを付けます。
斜めの矢印はありません。
@|
は縦長イコール、@=
は横長イコールで、@.
は何も表示しません。
\begin{CD}
A @<<< B @>>> C \\
@AAA @| @A\text{left}A\text{right}A \\
C @= D @. E \\
@VVV @. @VV\text{right}V \\
F @<\text{top}<\text{bottom}< G @>>\text{bottom}> H
\end{CD} \\[1em]
\begin{CD}
A @>f>> B @>g>> C @>h>> D @>j>> E \\
@VVlV @VVmV @VVnV @VVpV @VVqV \\
A' @>>r> B' @>>s> C' @>>t> D' @>>u> E'
\end{CD}
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