Turtle Soup AI:英語の質問力を鍛えるウミガメのスープ【第2回 AI Agent Hackathon】
この記事は第2回 AI Agent Hackathon with Google Cloud提出用の記事です。
実際のアプリ動作
リンク
URL:https://turtle-soup-47osjzu5qq-an.a.run.app/
はじめに:英語で謎を解く、ちょっと変わったAI体験
英語を勉強しようと思って、英単語アプリを開いて3日坊主になった経験はありませんか?
私たちも、そんな一人です。
今回のハッカソンで私が作ったのは、**「勉強としての英語」ではなく「英語で遊ぶ」**ことを目的としたAIエージェントです。
その名も、ウミガメのスープ × 英語 × 音声入力 × AI。
聞いただけで少しカオスですが、一言でいえば「英語でウミガメのスープ(水平思考クイズ)を楽しめる音声インタラクティブAIゲーム」です。
何を作ったのか?
開発したのは、英語で出題される「ウミガメのスープ」クイズを、音声を通じてAIと一緒に解き明かしていく、1人用のインタラクティブゲームエージェントです。
- 英語で提示される不思議なストーリー(水平思考クイズ)
- プレイヤーは音声でAIに質問を投げかける(Yes/No形式)
- 最大10回の質問で真相にたどりつくことを目指す
- ヒントとして関連する英単語を2つAIが提示
- 最後にはAIが英語で正解とその背景を説明
ただし、このゲームの目的は「正解すること」ではありません。
英語を使ってAIとやりとりしながら、問いかける・考える・つながることそのものを楽しむ体験を提供することを意識しています。
なぜこのアイデアなのか?
きっかけは、英語学習のモチベーションの低下でした。
英語学習というと、多くの人が「単語帳をめくる」「文法問題を解く」といった形式的な勉強を思い浮かべると思います。でもそれって、どこかで「やらなきゃいけない」と義務的に感じてしまいがちです。
そこで私たちはこう考えました:
「英語を学ぶためにゲームをする」のではなく、「ゲームをするために英語を使う」構造にすれば、自然と英語が身につくのでは?
英語は目的ではなく、何かを達成するための手段に変わる。
これは語学習得の本質でもありますし、AIを介した体験だからこそできる挑戦だと思いました。
ウミガメのスープ × 英語 × AI の魅力とは?
ウミガメのスープとは?
水平思考(Lateral Thinking)クイズとも呼ばれ、一見不条理に見えるストーリーの裏にある真相を、質問を通じて探るゲームです。
AIは出題者として、あらかじめストーリーと答えを保持しています。
プレイヤーはYes/Noで答えられる質問を英語で投げ、真相に迫っていきます。
このジャンルは元々、推理力や論理的思考を刺激する遊びとして人気があります。
今回はそこに「英語」と「音声入力」、そして「AI」を組み合わせることで、教育とエンタメを融合した新しい体験を目指しました。
遊び方の流れ
- AIが英語で問題を出題します
- プレイヤーはマイクに向かって英語で質問をします(最大10回)
- AIはYes/Noで返答しつつ、ヒントとして英単語を提示してくれます
- プレイヤーは推理を重ねて真相に迫ります
- 最後にAIが答えとその背景を英語で説明してくれます
例題:
Problem
A woman walked out of a supermarket, looked at the receipt, and suddenly started crying. Why?
Questions and Answers
- User: Was it because of the price? → AI: No
- User: Did she buy something she didn’t mean to? → AI: Yes
- User: Was it related to a mistake by the cashier? → AI: No
- User: Did the receipt remind her of someone? → AI: Yes
Answer
She saw a familiar item on the receipt — a specific brand of candy her late daughter used to love.
Though she didn’t realize she had picked it up, seeing it on the list brought back memories and emotions.
学べる英語スキル
このエージェントを通じて、以下のようなスキルが自然と身につきます。
1. 質問力(Questioning Ability)
Yes/Noで答えられる質問を英語で即興で考えることで、語順や構文の実践力が高まります。
→ "Did she know the person?" や "Was it an accident?" のような英語をその場で組み立てる練習になります。
2. 語彙と推論力(Vocabulary & Reasoning)
ヒントとして与えられる英単語から、状況を推理する訓練になります。
語彙の意味を「辞書的に知っている」から「文脈の中で使える」へと進化させる狙いがあります。
3. 発音と音声認識(Pronunciation & Speech Input)
音声認識を使うことで、自分の発音が伝わるかを意識するようになります。
認識されないことで気づく発音の課題も含め、アウトプットの質を高めるトレーニングになります。
4. 論理的思考と状況把握(Logical Thinking)
ストーリーの背景を読み解く過程で、「なぜこの行動をとったのか」「どんな前提があるのか」などを考える力が養われます。
技術構成とプロンプト設計
技術構成
- フロントエンド: Web Audio API + JavaScriptで音声入力対応
- AIモデル: Gemini Proを活用し、ストーリー生成、応答、ヒント提示を制御
- 音声認識: Whisper APIによる英語音声→テキスト変換
- UI/UX: モバイルでも操作しやすいよう極力シンプルに設計
プロンプト設計
AIの役割は「出題者」ですが、裏では以下のようなプロンプトで制御しています。
- ストーリーを矛盾なく生成し、その背景に感情や出来事の流れがあること
- プレイヤーからの質問に一貫性を持ってYes/Noで返答する
- ゲームバランスを調整するためのヒント生成(英単語2語)
特に、出題・回答・ヒントの一貫性を保つことに苦労しました。
工夫した点
- 音声でのやりとりに特化することで、英語の「話す・聞く」経験を強化
- ヒントを単語で出すことで、過度に助けすぎない設計に
- 質問回数を10回に制限してゲーム性と緊張感をプラス
- Geminiの応答スタイルを統一し、自然な流れを維持
審査観点への取り組み
観点 | 内容 |
---|---|
アイデアの質 | 英語学習と娯楽の融合。AIが出題者になる逆転の発想 |
課題の明確さと解決アプローチ | 英語学習のモチベーション維持が難しいという課題に対し、問いかけ体験で継続性を支援 |
実現性 | Gemini + 音声認識 + UIを用いた一通りの機能を実装。今後の拡張性も設計済み |
今後の展望
- ユーザーが出題者になれるモード(逆にAIが質問者に)
- 質問内容に対するAIの英文添削モード(学習フィードバック)
- ストーリーの難易度調整(子ども〜上級者対応)
- マルチプレイ対応(協力 or 対戦形式)
最後に
このハッカソンで私たちが目指したのは、「AIを通じて問いかけを楽しむ」という、ちょっと変わった体験です。
英語はあくまで手段。その先にあるのは、考えることの楽しさであり、誰かとつながる面白さです。
AIはただの道具ではありません。ときに仲間として、ときに先生として、**「一緒に遊び、学ぶ存在」**にもなれる。
そんな未来の片鱗を、今回のエージェントを通じて感じていただければ幸いです。
ぜひ、英語で遊んでみてください!
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