Gemini 2.5 Pro - 概要

2025/03/31に公開

Gemini 2.5 Pro とは?

Gemini 2.5 Pro は、Google によって開発された最新かつ最先端の大規模言語モデル(LLM)の一つです。従来の Gemini Pro の優れた機能を継承しつつ、推論能力やコーディング支援機能などが大幅に強化されています。

Google は Gemini 2.5 Pro を「これまでで最高のモデル」であり、「現時点で業界最高水準のモデルの一つ」と位置付けています。単に性能が高いだけでなく、人間との自然な対話や、ユーザーが直感的に感じる「良さ(vibe)」も追求されている点が特徴です。テキストだけでなく、画像、音声、動画といった複数のモダリティ(種類)のデータを扱えるマルチモーダル対応も強みとしています。

Gemini 2.5 Pro の主な特徴

Gemini 2.5 Pro は、多くの側面で注目すべき進化を遂げています。主な特徴を以下に挙げます。

卓越した推論能力

一般的な推論ベンチマークにおいて、最先端の性能を発揮します。特に数理分野や科学分野における問題解決能力、長文の読解・要約能力において高い評価を得ています。

強力なコーディング能力

コーディング支援機能が大幅に向上しており、開発者にとって強力なパートナーとなり得ます。
特に、以下のような点で優れています。

  • ウェブアプリケーション作成: 単一のプロンプトから、視覚的に魅力的でインタラクティブなウェブアプリケーション(例えば、シンプルなゲームなど)を生成する能力があります。
  • エージェント型アプリケーション: 自律的にタスクを実行するエージェントのようなアプリケーション開発においても高い能力を発揮します。
  • コード編集と変換: 既存のコードの編集や、異なる言語への変換などを効率的に行うことができます。

高度なマルチモーダル対応

Gemini シリーズの強みであるマルチモーダル機能がさらに進化しています。

  • 動画・画像理解: 動画の内容を理解したり、画像の詳細を読み取ったりする能力が向上しています。
  • 画像からの UI 生成: 手書きのデザインスケッチから、それを再現したウェブ UI のコードを生成するなど、高度な画像認識とコード生成能力を併せ持っています。

100 万トークンの長文コンテキストウィンドウ

一度に処理できる情報量が大幅に増加し、100 万トークンという長大なコンテキストウィンドウに対応しました。これにより、非常に長いドキュメントや動画、コードベース全体を読み込ませて、それに基づいた応答や処理を行うことが可能になります。

「性能」と「感覚的な良さ」のバランス

Gemini 2.5 Pro は、客観的なベンチマークスコアの高さだけでなく、ユーザーが実際に使用した際の「感覚的な良さ(vibe)」、つまり対話の自然さや楽しさも重視して開発されています。開発者自身も、簡単な挨拶への応答、詩の作成、指示に対する理解力の高さ、思考プロセスや出力の自然さに感銘を受けたと語っています。

学術的な評価とユーザー体験のバランスを取ることは難しい課題ですが、Gemini 2.5 Pro はこの両立に成功しているモデルと言えるでしょう。実際に、LLM の評価プラットフォームである LMArena では、他の高性能モデルに対して大きな差をつけて評価されています。

技術革新と開発背景

Gemini 2.0 の発表からわずか数ヶ月で登場した Gemini 2.5 Pro ですが、この「0.5」の増加は単なるマイナーアップデートではありません。モデルの根本的な考え方の変革と、性能における大きな飛躍を意味しています。Google は今後、全ての Gemini モデルを「考えるモデル」に進化させることを目指しており、問題解決へのアプローチが大きく変わる可能性があります。

この飛躍的な進化は、プリトレーニング(事前学習)、ポストトレーニング(追加学習)、そして推論(思考プロセス)といった AI 開発の全ての段階における技術革新が集結した結果です。各専門チームが連携し、共通の目標に向かって研究開発を進めたことで実現しました。特にコーディング能力の向上は、データ選定からチューニング、推論時の思考プロセスに至るまで、開発全体で優先的に取り組まれた成果です。

安全性への取り組み

Google は、モデルの性能向上と同時に安全性も極めて重視しています。Gemini 2.5 Pro の開発プロセスには安全性評価が不可欠な要素として組み込まれており、モデルの各開発段階(チェックポイント)で安全性テストが実施されます。

さらに、専門チームによるレッドチーム活動(意図的に弱点を探す活動)も行われ、意図しない挙動や潜在的なリスクがないか徹底的に検証されています。安全性は開発の後工程ではなく、モデルをより良く、より役立つものにするための重要な要素として捉えられています。

今後の展望

Gemini 2.5 Pro は現在、実験的な段階で提供されていますが、今後はより多くの開発者が大規模に利用できるよう、以下のような展開が予定・検討されています。

  • 価格設定とプロダクション提供: 正式な価格設定が行われ、実際の製品やサービスで利用できるプロダクション環境での提供が開始される予定です。
  • Gemini Flash への展開: より軽量で高速なモデルである Gemini Flash にも、2.5 Pro の技術が展開される可能性があります。
  • 思考時間の最適化: より単純なプロンプトに対しては、思考(推論)時間を短縮する最適化が行われる予定です。
  • 開発者による制御: 開発者がモデルの挙動をより細かく制御できる機能の追加が検討されています。
  • 画像生成機能の統合: 現在は搭載されていませんが、将来的には画像生成機能が統合される可能性もあります。

さいごに

Gemini 2.5 Pro は、その卓越した性能とバランスの良さ、そしてマルチモーダル対応能力により、AI の可能性を大きく広げるモデルです。特にコーディング支援やエージェント開発においては、これまでの常識を覆すようなインパクトをもたらす可能性を秘めています。

今後の正式リリースやさらなる機能拡張によって、私たちの開発体験や AI との関わり方がどのように変わっていくのか、非常に楽しみです。


https://blog.google/technology/google-deepmind/gemini-model-thinking-updates-march-2025/#gemini-2-5-thinking

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