[H2025ID] Hardening 2025 Invisible Divide 参加体験記
1. はじめに
Hardening 2025 Invisible Divideに参加してきた。
自身の振り返りも兼ねて、参加体験記をまとめる。
1.1. 前提
- 参加は2回目。前回はH2023Gに参加。
- チーム4 QuadLinkにて参加。9人チーム。
- メンバーは自分以外の8人が初参加。
- チーム名由来は、メンバーの所属で4グループに大別できたため。4者が連携・Linkし、見えない分断を越えるチーム。
- 8/22 選考結果発表、10/7 沖縄入りにつき、実質1ヶ月強の準備期間。
2. 準備
2.1. チームで行ったこと
チームでの集まりは、週2で開催していた。
個別の準備タスクや対応・相談は、Discordチャットの会話ベースで進めた。
日付 | 行ったこと |
---|---|
8/25(月) | キックオフ, リーダー/チーム名決定 |
8/29(金) | チーム紹介PV提出, BreakingOut(全体) |
9/2(火) | H2023G 参加経験共有 |
9/4(木) | 役割(暫定)の決定 |
9/9(火) | 過去資料読み合わせ |
9/11(木) | 準備内容ブレスト |
9/16(火) | 想定インシデントの書き出し(相談員さん参加) |
9/18(木) | NW構成図読み方解説 |
9/25(木) | 競技会しおり/持ち物/グッズ相談 |
9/28(日) | 模擬環境演習 |
9/30(火) | MP候補選定 |
10/2(木) | 直前の不明点相談 |
2.2. 個人で行ったこと
前回行った以外のことを今回はやろうと思い、以下の対応をしていた。
ファシリテーションと技術班に興味があったのだが、準備期間中は大体ファシリテーションに終始してた[1]。
2.2.1. チーム紹介PVの作成
- 選考結果通知当日:動画用曲探し〜片っ端からフリーBGMを聴く〜
- チーム集合からチーム紹介PV/プレゼンお披露目まで1週間程度の中、動画制作をどうにか進めるため
- 制作期間の短さから、スライド形式の動画にしようと構想。
- 曲は、起承転結があること・2分以内に収められること・拍が一定であること(音とスライドの当てはめやすさ)を中心に選定。
- https://www.dova-s.jp///bgm/play22440.html#google_vignette
- 8月下旬: 動画制作〜スライドで遊ぶ〜
- 各スライドに表現したい内容と秒数を書いたコンテを作成。スライドのリンクを全員に共有。
- ロゴを作成してもらったり、メンバー紹介の文章・写真は全員がそれぞれ作ってくれたおかげで、作業がかなり楽だった。
- iMovieの動画編集ではスライド+音楽の合体だけなので、変更が簡単でファイル容量が軽かった。
動画より抜粋
2.2.2. 初回参加体験の共有
- 9月初旬: 共有会〜H2023G初回を経て〜
- 初回参加(H2023G)時はビジネス系チームで参加したので、競技経験談をスライド作成して共有
- 経験の共有は、参加2回目の責務だと思ってる
共有会のスライド
2.2.3. MTGのファシリテーション
- 9月中: 定例MTGのファシリ〜with交通整理〜
- 定例:週2回、毎週火曜・木曜 20:00-21:00枠で開催
- 休みの人向け・情報共有用に、#generalで要約版を公開
- Tips: ファシリテーションの工夫
- 「北風と太陽」寓話の考えで、意見を言い出しやすいような、柔らかい雰囲気づくりを心がけてた。
- 全員が意欲的で主体性の高いメンバーだったので、感覚だけでファシリができた。
(そうじゃない場合は、仕組みで淡々と振り分ける方式の方が向いてる) - 場づくりはする、されど意思強制はせず、をかなり注意してた(つっぱしりがちなので)
- 毎回のMTGで何を話す会か・次回何話すかは決めるようにしてた。
- チームビルディングは特に施策をした記憶がなく、自然とできあがった。
議事録テンプレ
2.2.4. 技術対策
9月は繁忙期とファシリの兼ね合いで、模擬演習以外まともに技術対策ができずに1ヶ月経った。
10月、開始直前まで悪あがき。
- 10月: インプット〜直前対策〜
- 行きの飛行機で「本気で学ぶ実践Linux入門」を熟読。使えそうなコマンドをひたすらメモ。
- 行きの飛行機待合で「IPA白書2025」を流し読み
- 10月: シェルスクリプトの用意〜GPT謹製〜
- パスワード変更、nologin設定、所属ユーザの確認、バックアップなどサーバの堅牢化に役立ちそうな処理を片っ端から作ってもらう。
- 競技資料とmdファイルの情報を洗いつつ、起きそうな脆弱性と対策、対策で落ちた場合の復活方法を整理
3. 競技会当日
サーバ担当として堅牢化とインシデント対応を行なっていた。
スコアボードから時折流れる「私の取り扱う脆弱性はココロ、人の心で御座います」の無機質なAI音声に対して、「いやまじでそうなんよな...」と心がちくちくしながら対応してた。
(もちろん元ネタは某せぇるすまんのセリフだが。人の心理の隙間を突いた攻撃は無くならないよなーと)
3.1. 作業関連
- 担当サーバについて、root, userパスワード変更を実施
- 用意していたシェルスクリプトが動かなかった。急遽シンプルなスクリプトを作成。
- 用意していたパスワードが規定のパスワードポリシー違反だった。。
- MySQL rootパスワードの設定ミスでDBアカウント追い出されかけた。safe modeで起動・変更したり。
- 担当サーバについて、バックアップの実施
- 設定ファイルのどこを保存しておけば復旧が楽か?と試行錯誤
- 多種多様なサーバ群の環境なので、優先度順に対応してもよかったかも
- 担当サーバの設定対応
- 挑戦するも、なかなかうまくいかず
- 画面を見て調査したいとなり、途中からRDPで繋いで操作したりもしてた
3.2. インシデント関連
インシデントについては、事前に決めてたインシデントフローによって発番・フォーラムに順次起票していた。
MP[2]の製品やお助けサービスにより防御・封じ込め対応は大変助けていただいた。
- Webページ改ざん: メンバーが即座にコンテンツ修正して対応◎
- AD関連: AD掌握は起きてなかったと思ってたが、気づいてないだけだったっぽい(bind関連)
- オペレーションミスの自滅: 今回のランキング1位。圧倒的これ。
- コンテキストスイッチの分断、生成AIを信じて爆発、設定変更の影響範囲が思ったより広範だったなど。
- ファイル関連: 解説聞いてて「そこまで見てなかったな...」事案が頻発した。
- ランサム対策に気を取られすぎた。
- 本来非公開にしたい情報が公開されてる事案も当然あるよなと。。(実際には脆弱性診断で指摘・発覚しがち)
4. 振り返り
個人・チームの取り組みで良かった点・反省点を振り返る。
4.1. 良かった点
- 前回の競技経験の反省から、「情報はなるべく集約する。ツールはシンプルに。認知負荷を下げる!」を徹底していたのが功を奏した。
- 個人的には、当日「情報どこに書いてたっけ」の探索時間ロスはだいぶ削減できた。
- よく見るファイルのリンク集を作ってくれたメンバーもいた。
- ステッカー・タオルのグッズ制作で、チームの結束が一段と強まった。
- メンバーのおかげで、おしゃれなデザインで発注が間に合った。
- 特にタオルは、会場の寒暖差・雨対策にまで幅広く活用でき、実用面もばっちりだった。
- 身につける系のグッズは、広い会場や移動中も、チームメンバーを見つけやすい。
- 写真撮影が楽しくなるので、ぜひ来年以降の方にもおすすめしたい。
- 競技直前まで粘って準備対応をつづけたこと。
- 行きの飛行機内で読んだLinux入門本は、サーバ構成・設定方法理解の役に立った。
- 1週間前のチーム内操作環境演習のおかげで、VPN, SSH, RDPツールで環境接続する手順の不安が解消された。
4.2. 反省点
- 技術力・知見の不足
- 申し込んだ6月時点で「2-3ヶ月あるし今からLinuxサーバで遊んどこう!」と息込んでたが、その後仕事の繁忙期が続き、まともに対策できず。。
- 2回目なので、前回と違うことをなるべく経験・吸収しようという形に落ち着いた。
- サーバ環境が多種多様だったので、もう少し解像度を上げて「自分は今回何を技術班で取り組みたいのか」を決められるとよかったかもしれない。LAMP環境を重点的に見たいのか、NW/FW周りを触ってみたいのか、Windowsに挑戦したいのか、DNS/Mailサーバいじりたいか、など。
- 完璧な状態というのはなく、日々の経験の積み重ねが大事だと今回も実感した。
- Audit系に取り組めなかった
- 「インシデントが起きていることに早く気づく」策が不足してたなと。
- 画面操作でのアラートだけだと限度があるので、仕組みで導入できると早期検知・復旧につながると思った。
- 他チーム発表のll, git, OSSツール改ざん検知の取り組みが素晴らしく、今度はぜひ参考にしたいと思った。
- 復旧関連の掘り下げが不足していた
- ひとくちにバックアップといっても、具体的に各環境内でどの設定ファイルが復旧に必要なのか?の観点が抜けてた。
- Restoreする方法、設定ミスに対してRevertする方法もセットで準備できるといいなと思った。
- ビジネス・経営視点の考慮不足
- 請求書処理で売上が確定したり、契約書周り・社内管理サーバの重要性を考慮すべきで(初回参加時にも言われたが)、記憶からすっこ抜けてた。
- 親会社子会社の関係、HDの対応などは他チームに任せきりになっていた。
- 競技のスコアやランキング、堅牢化・攻撃防御はそれぞれ一要素にすぎないのだが、いざ取り組むと近視眼的に捉えた行動をしてしまいがち。
- 一歩引いた視点で見て考えることも大切だと思った。
- Softening Dayで紹介されてた「経営層のためのサイバーセキュリティ実践入門」などの書籍を読んでみたくなった。
5. 最後に
2回目の参加も学びの多い機会となった。なにより一番良かったのは、このQuadLinkのチームメンバーで共に競技に取り組めたことだと思っている。
2回目ということで、MTGのファシリをやっていたが、仲間同士で一緒に作っていく感じや助けてもらうことも多々あり、チームのありがたさを実感する1ヶ月だった。
振り返ると悔しい点もあったりするが、それも経験として今後につなげていきたい。
今回は見えざる分断がテーマだったが、相談員さんたちの「見えざる分断から見える結束へ」という言葉がとても響いた。
また、「今回のコンセプトロゴは、金継ぎである。見えない小さいひびが広がり割れた器をモチーフにしている。傷跡を見せてその傷跡も価値として繋げていく」という説明はとても心を打つものだった。
見えない分断、小さなひびが自分の内面や周囲の間に起きていないか、時折見つめ直すことを忘れないようにしたい。
QuadLinkとH2025IDのグッズたち。宝物。
Discussion