『ハッカーと画家』を読んで
『ハッカーと画家』を読んだ。2004年に刊行された本[1]とは思えないほど、ポール・グレアムは先見の明のある考えを持っていて、未来人か何かではないかと読み進めながら恐怖していた
業務に活かす
本書はエッセイ集だが、プログラマが書いているということもあり、そのまま業務に活かせそうな記述も多く見受けられた。
(実際、監訳者もあとがきで「読めば何かやりたくなる本」という旨を記しているくらい、実践的な記述も多いエッセイとなっている。)
そんななかで気になった記述をピックアップする
コードは人間が読むもの
ポール・グレアムは、プログラミングに関して一つだけ覚えてほしいこととして、以下を挙げている。
プログラムは、人々がそれを読むために書かれるべきである。
たまたま、それが計算機で実行できるにすぎない。[2]
業務でコードを書き始めて、この文章の意味がよく分かるようになった。業務のコードは他人のための読み物ということを意識して書かなければ、負債となる。可読性を高めるように書かなければいけないということを示すこの一文は、人間がコーディングする限り不滅の標語になるはず。
そういえば、著者が本書で褒めちぎっているLispは、元々は(コンピュータに読ませるものとしての)プログラミング言語ではなかったという話が後半で出でくる。その辺りの考えもここに詰まっているのかもしれない。
良いデザインとは
著者は本書で、良いデザインと悪いデザインは明確に存在すると述べ、良いデザインの原則を示している。
この原則は14個も示されているので全ては示さないが、気になった原則をピックアップする。
「良いデザインは単純である」
Piet Mondrian – Compositie met rood, geel, blauw en zwart
単純でなければならないと強制されれば、本物の問題と向き合わなければならなくなる。
数学では、短い証明が良い証明である傾向がある。
絵画でも、少数の素材をよく観察した静物画のほうが、レースのひだを無意味に繰り返したものよりも面白く見える。
単純であるほど、本質に近づかざるを得ないという考えが気に入った。
この項目に絵画をつけるとしたら、モンドリアンの絵かもしれない。
「良いデザインは再デザインだ」
間違いを大失敗のように考えるのではなく、簡単に見つけて簡単に直せるようにしておくことだ。
レオナルド・ダ・ヴィンチのスケッチのように、変更が容易な仕組みであることで、間違いを許容し、より難しい対象を目指せるようになる。こうして作られたデザインが良いデザインとなる。
個人的には、「15世紀にテンペラから油絵に移行したことで上書きが効くようになった」という話が面白かった。現在では上書きだけでなくCtrl+Zも使える(デジタル絵の話)。
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