個人開発をリリースして考える「MVPってなんだろう」
この記事は「個人開発 Advent Calendar 2022」10日目の記事です🎄🎅
猫グッズレビューサイトをリリースしたよ
今年、猫グッズのレビューサイト「レビュニャー」をリリースしました🐈🐈🐈
フリーワードで商品・レビューを探したり、レコメンド機能で自分の猫に合ったグッズを発見できるサイトです。
閲覧は登録不要。Googleアカウントで無料登録するとレコメンド機能が使えます✨
リリース後に立ちはだかる集客の壁
伸びない閲覧数と投稿数
レビュニャーはUGC(ユーザー生成コンテンツ)が中心となったサービスで、レビューを閲覧するユーザー・投稿するユーザーの両者がいないと成り立ちません。
そして、投稿が少ないので閲覧数が伸びない・閲覧数が少ないので投稿のモチベが起きない...のデッドロックにハマりやすく、個人開発では難易度が高いジャンルです。
(昨日のhokuさんの記事「個人開発あるある」にもありますね)
レビュニャーも案の定ここで引っかかり、訪問者数が低空飛行する日々が続きました。
閲覧数を伸ばすために試した施策
リリース当初、閲覧数や投稿数が伸びないのは単純に露出が少ないからという仮説から、猫飼いの友人や会社のメンバーにお願いしてレビューを投稿していただき、以下の施策を試してみました。
- TwitterでOGP画像付きでレビュー投稿を拡散
- 猫用品に関するお悩みにサイトへのリンク付きで回答
施策の結果
このような施策を試すと以下の効果は見られました。
- リンクを掲載したページの閲覧数が上がる
- 流入したユーザーはサイト内を回遊する
- 閲覧したユーザーの約10%はリピーターとなる
しかし、理想的なユーザーストーリーとしてイメージしていた「閲覧ユーザーが『自分のレビューや猫も見てもらい』と思い、レビュー投稿する」動きはありませんでした。
その他のデータも見た結果、SNSでの展開は一時的にユーザーが増えますが、レビュニャーを支える閲覧・投稿のサイクルは回らず、時間の経過とともに閲覧者数も再び減ることがわかりました。
どうしたら閲覧→投稿のサイクルが回るのか
リリース前の段階から、UGCが軸のサービスで投稿者の体験は重要だろうという考えのもと、投稿体験は手厚めに機能実装をしていました。
投稿が少ないのは、投稿フローに問題があるのか?
それとも、閲覧の時点でレビュニャーに魅力を感じず投稿に至らないのか?
リリースして数ヶ月が経っていたので、今のレビュニャーがユーザーの問題をどこまで解決できているのか、そして投稿に繋げるのに足りないものを知るためインタビューを実施しました。
ユーザーインタビューだ!
レビューの内容はいいが...
インタビューは「uniiリサーチ」を通じて行いました。
リーンキャンバスのペルソナや事前質問から、レビュニャーで解決しようとしている問題を持ち、継続的なユーザーになりうるのではと感じた4名にインタビューしました。
こんな感じでまとめてます。miro大活躍
インタビューで得られた情報(一部)
- レビュニャーの投稿は、SNSや通販サイトと比較して親しみやすさや正直な印象を与えており、猫グッズ購入の参考にできると感じている
- 一方で、投稿・商品数の少なさや検索性の低さは不満
- 検索しようとしても何を入力すれば良いのかわからない
- 自分が気になっている商品でも名前まで覚えていない
- 猫を飼い始めたばかりの人は「自動餌やり機」「脱走防止」といった商品ジャンルの存在すら知らない
- 検索しようとしても何を入力すれば良いのかわからない
- 投稿する楽しみが少なくモチベーションが湧かない
レビューに満足したからといって投稿するわけではない
インタビューを通して、投稿までたどり着けばユーザーは欲しい情報を得られ、レビュニャーで目的を達成できそうだとわかりました。差別化として猫の品種・年齢を記載したり、複数画像を掲載したのは効果があったようです。
しかし一方で、投稿を発見するまでのストレスから「検索〜閲覧〜目的の達成(購入の参考となる情報ゲット)」の流れに乗れないユーザーがいること、閲覧で良い体験が得られることと投稿へのモチベーションは分けて考える必要があることが分かりました。
サイトを見て楽しんでくれたから投稿してくれるだろう、というのは運営者にとって都合の良い考えで、投稿には別のモチベーション作りが必要です。
また、既存の施策として「Twitterに投稿する」機能もありましたが、ユーザーからは「わざわざTwitterに投稿しようと思わない。このサイト内でコミュニケーションが完結すると嬉しい」という声もあり、よりユーザーの多い場で共有して欲しいという運営者の期待に対してもユーザーには明確な動機が必要でした。
自分が他のサービスを使っている時の感情を思い出せば当たり前のようですが、自分が作ったサービスだとつい都合が良い方に考えてしまいますね...。
初回リリースは本当にMVPだったのか?
「できる」と「したい」の差
ユーザーインタビューを終えて思ったのは「レビュニャーはまだMVPになりきれていない」でした。
MVP(minimum viable product)の定義には様々ありますが、ユーザーに価値を提供できる必要最小限のプロダクト、と捉えています。
スケボーが車になっていくあのイラストが浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
レビュニャーの初回リリース前には、課題の仮説を立て、課題を解決するための体験を考え、閲覧・投稿の両方で理想のユーザーストーリーを満たせる機能を実装しました。
そのため、インタビューした4名のように「依頼」をすればほとんどの人は投稿もレビュー検索もできるのです。
しかし、これは「使える」けど「使いたい」プロダクトではないことから、大多数のユーザーは想定していたユーザーストーリーを歩むことができていません。
この点から、「レビュニャーはまだMVPになりきれていない」と感じました。
上の図にあるように、MVPはUXの質を測る手法の一つである「UXピラミッド」の一部の階層(機能する、信頼できる、など)だけを満たすものではなく、狭くても良いので特定の体験についてEmotionalな部分も含めたすべてを満たすのが望ましいようです。
ツイートで「Emotional Design」としてまとめられている部分は、UXピラミッドでは「便利である」「楽しい・心地よい」「価値がある」と続きます。
Level 4: CONVENIENT – 便利である
Level 5: PLEASURABLE – 楽しい・心地よい
Level 6: MEANINGFUL – 価値がある
インタビューを振り返ると、レビュニャーはまだLevel 2: Reliable(信頼できる)とLevel 3: Usable(使いやすい)の間だと感じます。
開発していた時点で、Usable(使いやすい)をゴールに置き、使いやすければ使ってくれるだろうという勘違いに陥っていたのは、Level 4以降の階層を「使える」と分けて考えられていなかったのが原因です。
自分がSaaSでしかPdMの経験がなく、特にLevel 5以上を意識したユーザー体験を作る経験や発想が足りないのも一因かもしれません。
UXピラミッドの概念を知ることで、自分のサービスの現在位置とどのような順序でユーザー体験を積み上げていけば良いのか考えるヒントが得られました。
ここからの展開を考える
大きく分けると、2軸ありそうです。
1. メインの体験で足りていない箇所を補う
a. 既存の機能のクオリティ向上(検索性、わかりやすさ)
b. 前後の体験を補える機能の実装(投稿後のリアクション(いいねなど)、検索ワードの提案)による一連の体験の改善
当初の機能で提供したかった価値を感じてもらうまでに足りていない体験を補う方向です。
点レベルでの体験を改善する(a)と、体験を線で見た時に足りていない部分を足す(b)の二つにさらに分けることで、総合的に「Level 4: CONVENIENT – 便利である」以上を目指します。
2. 提供できる価値を増やす
新しい価値を提供して、UXピラミッドの幅を広くする方向です。
今回のインタビューで、レビュニャーには、すでに知っている商品のレビューを見つけるだけでなく「商品を発見する場」としての役割を期待されていることが分かりました。
実際に、インタビューした4人全員が猫を飼い始める際に通販サイトや友人を通じた情報集めに多くの時間をかけており、ここには「どの商品を買うか」だけでなく「そもそも何が必要なのか」という悩みも含まれます。
また、比較対象となる通販サイトは、キーワード検索から得られる情報量は多いですが、「季節(換毛期、冬)」「猫の属性(年齢、品種)」「環境(多頭飼い、コンパクトな家)」といった、猫独特の文脈からの商品提案は強くない印象です。
検索以外での商品発見の機会を増やすことは、メイン体験(レビュー閲覧・投稿)の入り口となるとともに、他サービスとの差別化のチャンスになりそうです。
最後に
個人開発に限らず、どこまで作ってリリースするかはプロダクト作りの初期の悩みの一つです。
レビュニャーはリリース後とはなりましたが、ユーザーインタビューとUXピラミッドを通じて「便利さ」「楽しさ」の要素が足りていないのでは?と気づくことができました。
また、UXピラミッドの考え方を通じて、次に作るものやその後の改善の進め方のヒントが得られました。
個人開発してみたけどイメージ通りの使い方をしてもらえない、次に何をしたら良いのかわからない、という方は、ユーザーインタビュー・ユーザーストーリーマッピング・UXピラミッドなどUXの手法からヒントを得られるかもしれません。
発見と改善を重ね、楽しい個人開発ライフを送りましょう!
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