量子論から量子コンピュータへ
量子論のルール
量子コンピュータを説明するため、ここでは[清水]に従って量子論のルールとして以下の3つを採用しよう。(以下では簡単のために縮退がある場合を除いておく。)
微妙に不正確な表現を使ってたりもするが、詳細は割愛する。
- 系の状態は複素ベクトル
で記述される。これを量子状態と呼ぶことにする。|\psi \rangle - 物理量は、自己共役演算子
で記述される。観測される値は、\hat{A} の固有値の内の1つ\hat{A} が対応する。固有値は必ず実数になる。また固有値a に対応する固有ベクトルをa と書くことにしよう。すなわち、|a \rangle である。A|a \rangle= a|a \rangle - ある固有値
を観測できる確率a は、P(a) と与える。P(a) = |\langle a | a \rangle|^2
最後のルールをボルンの規則とよぶ。
自己共役演算子
加えて、以下のルールを要請する。
a. 量子状態
b. 測定を行うと、状態ベクトルは測定を行った基底のいずれかに射影されてしまう。
古典コンピュータで計算・情報処理とは何だったかを思い出すと、あるビット列を変換し、所定のビット列を得ることであった。上記のルールを駆使して状態ベクトルを操作し、ある入力ベクトルから所定の出力を行うのが量子コンピュータを用いた情報処理である。
古典コンピュータとの比較は、
の様にまとめられるだろう。キュービットについては次節で触れる。
量子ビットあるいはキュービット
量子計算においてもビットに対応するものが必要であるので2準位系を導入しよう。物理系において 2 準位系は、例えばスピンがある。これは
の様にかける。状態ベクトルはベクトルであるため
という重ね合わせの原理をみたす。ただし係数は
となる。計算してみると、
を得る。
量子計算を行うには、このような2準位系とみなせるものであれば何でも良い。たとえば、
- 核子スピン
- 光
- トランズモン(超伝導体を用いた方式の一種)
- トポロジカル絶縁体
- イオントラップ
等がある。
2準位系を再現した各素子をキュービット(qubit)と呼ぶ。
量子コンピュータを用いた計算は、キュービットを多数ならべて、それぞれにユニタリー変換を繰り返し適用し、最後に測定を行って結果を読み取ることで行われる。
(気が向けば続きを書きます)
参考文献
- [清水] 「量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために」 清水 明、サイエンス社、(2004/4/1)
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