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格子QCDの教科書色々

2023/01/05に公開

あいさつ

あけましておめでとうございます。2023年もよろしくおねがいします。
この記事では、素粒子物理学の一分野である格子QCD/格子ゲージ理論の(読んだことのある)教科書の所感をまとめたいと思います。
個人的な感想ですが、何かの参考になれば。

格子QCDとは?

離散時空の上で定義された量子的な非可換ゲージ理論です(場の量子論の一種)。数学的に厳密な定義がある場の理論。またスパコンを使うと色々計算できる。Wikipedia

格子QCDの教科書

以下では格子QCDの教科書で僕が読んだことがあるもの(以下)の感想を挙げておきます。

  1. 青木本
  2. 石川本
  3. Gattringer本
  4. Rothe本
  5. Creutz本

もちろん全部は通読していません、念の為。

青木本

  • 著者: 青木慎也
  • 初版: 2005
  • 言語: 日本語
  • Amazon: ここ
  • 良い点: くりこみ群の視点から格子理論を解説。理論的な側面だけでなく、実際の計算で使うアルゴリズムや解析手法も書いてある。ニールセン二宮の定理を含めカイラルフェルミオンの記述がかなり詳しい。網羅的。
  • 悪い点: 記法が統一されていない所がある。熱浴法の言葉の定義が一般的なものと異なる(気がする)。
  • コメント: 最初に読んだ本なので刷り込み効果があるかもしれないが、良い本。hopping parameter展開を用いた青木相の解説はさすが本人というところ。最初の一冊はこれでいいと思うけど、2023年1月現在、新品が手に入らないっぽい。

石川本

  • 著者: 石川健一
  • 初版: 2018
  • 言語: 日本語
  • URL: ここ
  • 良い点: 新しい本なので新しい結果が書いてある。くりこみ群の視点から格子理論を解説している。薄いので読破しやすい。また理論もアルゴリズムも書いてある。捻った江口河合模型の話も書いてある。
  • 悪い点: SGCライブラリなので入手が不安定。また薄いため網羅的でない。
  • コメント: アルゴリズムの解説が具体的で良かった。世界最速のWilson fermion のコードの開発者による教科書。

Gattringer本

  • 著者: Christof Gattringer, Christian B. Lang
  • 初版: 2009
  • 言語: 英語
  • Amazon: ここ
  • 良い点: 有限温度密度の取り扱いがある。網羅的。
  • 悪い点: 詳細が書かれていない事項も結構ある。また摂動とかの話はほぼ無い。
  • コメント: スケールセッティングの項目、少ししか書いていないが、他に取り扱ってる本もないので良かった。また最初の量子力学の説明のところが好み。読みやすさでいうとこれでもいいと思う。またHMCの説明が良い。

Rothe本

  • 著者: Heinz J. Rothe
  • 初版: 1992
  • 言語: 英語
  • Amazon: ここ
  • 良い点: 経路積分から説明があるため、入門的。有限温度やトポロジーの取り扱いがある。格子摂動論の話がかなり丁寧に書いてある。
  • 悪い点: 古い。特に後半のシミュレーション結果の事項は80年代の結果も…。あとフォントや記法が(僕にとって)読みづらい。
  • コメント: 2番目に読んだ本。スタンダードな内容はカバーされている。あと、オープンアクセス

Creutz本

  • 著者: Michael Creutz
  • 初版: 1983
  • 言語: 英語
  • Amazon: ここ
  • 良い点: コンパクト。格子計算の創始者が書いた。群上の積分、強結合展開が詳しい。
  • 悪い点: 古い。内容は原著論文に当たれば良いものも多い。ダイナミカルフェルミオンについてはなかった(HMCの発明より前なのでそれはそう)。
  • コメント: 3番目に読んだ本(ただあんまり真面目に読んでなかった)。オープンアクセス

(他にもMontvay-Munster も有名ですが数カ所しか見てないのでコメントは無いです。)

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なにかのお役に立てば幸いです。

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