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EthereumのL2の断片化の解決案
この記事は、以下の動画の内容のまとめです。
はじめに
現在のEthereumエコシステムでは、複数のL2やロールアップが独立したサイロとして存在しています。これは非効率的であり、ユーザー体験を損なう要因となっています。本記事では、「United Chains of Ethereum」というビジョンを紹介し、L2間の統合と効率化について詳しく解説します。
1. 同期的コンポーザビリティ
共有シーケンサーの概念
複数のL2やロールアップが単一のシーケンサーを共有することで、以下の3つのレベルの同期性を実現できます:
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同期的インクルージョン:
- 複数のロールアップ上のトランザクションが同時にチェーンに含まれることを保証
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同期的実行:
- ステートルートに関する保証を提供
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同期的コンポーザビリティ:
- 資産の即時的な移動と清算を可能にする最も強力な形態
スーパートランザクション
共有シーケンサーは「スーパートランザクション」を実行できます:
- 複数のサブトランザクションで構成
- リアルタイムでの資産移転が可能
- サブトランザクション間で依存関係を持つことが可能
- 仮想的なロッキングメカニズムを使用
証明の遅延時間の課題
同期的コンポーザビリティを完全に実現するには、高速な証明生成が必要です:
- スロット時間が12秒の場合、ブロック開始時には11秒の証明時間が利用可能
- ブロック終了近くでは数ミリ秒しか証明時間がない
- Nova等の効率的な再帰的証明や、専用ASICの開発が進行中
- 証明ASICにより、コスト・並列性・電力効率で大幅な改善が期待される
流動性プロバイダーによる代替案
リアルタイム証明が実現するまでの代替手段として、流動性プロバイダーを活用できます:
- 即時的な流動性を提供
- デメリット:
- 手数料が発生
- 資本効率が低下
- 仲介者が必要
- NFTなど一意の資産には適用困難
- 大規模な取引には流動性の制約
2. 分散型シーケンサー
概要
分散型シーケンサーでの事前確認は、以下の特徴を持ちます:
- ユーザーが次のスロットのシーケンサーを確認可能
- 各スロットで異なるシーケンサーが活動
- スラッシング(ペナルティ)メカニズムが重要
スラッシングの種類
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安全性の違反:
- 約束した実行内容と異なる実行
- 誠実なシーケンサーでは発生しない
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活性の違反:
- オフライン等による事前確認の不履行
- 誠実でも技術的問題で発生する可能性
MEV-Boostの修正
従来のMEV-Boostパイプラインを以下のように拡張:
- ユーザーから事前確認情報を上流に伝播
- ビルダーは事前確認を考慮してブロックを構築
- ビルダーの担保設定が必要
3. Based シーケンシング
コンセプト
L1のプロポーザーをシーケンサーとして活用する新しいアプローチ:
- Ethereumの既存モジュールを活用:
- 決済モジュール
- データ可用性モジュール
- シーケンシングモジュール(新規活用)
メリット
- L1のセキュリティを継承
- 信頼できる中立性
- コンポーザビリティの確保
- L1の大規模なTVL(時価総額)へのアクセス
実装の課題
- 高帯域幅が必要
- 複数のフルノード運用が必要
- 高可用性と低遅延が要求される
- 実行チケット機能の実装待ち
短期的な解決策
- 信頼できるゲートウェイの導入
- プロポーザーからゲートウェイへの権限委任
- ゲートウェイの担保設定
まとめ
Ethereumの統合チェーンビジョンは、以下の段階で実現を目指します:
- 中央集権的シーケンサーから分散型シーケンサーへの移行(80%の課題)
- 共有シーケンシングの実現(15%の課題)
- Based シーケンシングの導入(5%の課題)
このビジョンの実現により、Ethereumエコシステムの断片化が解消され、より効率的で統合された環境が実現されることが期待されます。
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