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EthereumのL2の断片化の解決案

2024/10/08に公開

この記事は、以下の動画の内容のまとめです。
https://www.youtube.com/watch?v=4v_nSddO-24

はじめに

現在のEthereumエコシステムでは、複数のL2やロールアップが独立したサイロとして存在しています。これは非効率的であり、ユーザー体験を損なう要因となっています。本記事では、「United Chains of Ethereum」というビジョンを紹介し、L2間の統合と効率化について詳しく解説します。

1. 同期的コンポーザビリティ

共有シーケンサーの概念

複数のL2やロールアップが単一のシーケンサーを共有することで、以下の3つのレベルの同期性を実現できます:

  1. 同期的インクルージョン

    • 複数のロールアップ上のトランザクションが同時にチェーンに含まれることを保証
  2. 同期的実行

    • ステートルートに関する保証を提供
  3. 同期的コンポーザビリティ

    • 資産の即時的な移動と清算を可能にする最も強力な形態

スーパートランザクション

共有シーケンサーは「スーパートランザクション」を実行できます:

  • 複数のサブトランザクションで構成
  • リアルタイムでの資産移転が可能
  • サブトランザクション間で依存関係を持つことが可能
  • 仮想的なロッキングメカニズムを使用

証明の遅延時間の課題

同期的コンポーザビリティを完全に実現するには、高速な証明生成が必要です:

  • スロット時間が12秒の場合、ブロック開始時には11秒の証明時間が利用可能
  • ブロック終了近くでは数ミリ秒しか証明時間がない
  • Nova等の効率的な再帰的証明や、専用ASICの開発が進行中
  • 証明ASICにより、コスト・並列性・電力効率で大幅な改善が期待される

流動性プロバイダーによる代替案

リアルタイム証明が実現するまでの代替手段として、流動性プロバイダーを活用できます:

  • 即時的な流動性を提供
  • デメリット:
    • 手数料が発生
    • 資本効率が低下
    • 仲介者が必要
    • NFTなど一意の資産には適用困難
    • 大規模な取引には流動性の制約

2. 分散型シーケンサー

概要

分散型シーケンサーでの事前確認は、以下の特徴を持ちます:

  • ユーザーが次のスロットのシーケンサーを確認可能
  • 各スロットで異なるシーケンサーが活動
  • スラッシング(ペナルティ)メカニズムが重要

スラッシングの種類

  1. 安全性の違反

    • 約束した実行内容と異なる実行
    • 誠実なシーケンサーでは発生しない
  2. 活性の違反

    • オフライン等による事前確認の不履行
    • 誠実でも技術的問題で発生する可能性

MEV-Boostの修正

従来のMEV-Boostパイプラインを以下のように拡張:

  • ユーザーから事前確認情報を上流に伝播
  • ビルダーは事前確認を考慮してブロックを構築
  • ビルダーの担保設定が必要

3. Based シーケンシング

コンセプト

L1のプロポーザーをシーケンサーとして活用する新しいアプローチ:

  • Ethereumの既存モジュールを活用:
    1. 決済モジュール
    2. データ可用性モジュール
    3. シーケンシングモジュール(新規活用)

メリット

  • L1のセキュリティを継承
  • 信頼できる中立性
  • コンポーザビリティの確保
  • L1の大規模なTVL(時価総額)へのアクセス

実装の課題

  • 高帯域幅が必要
  • 複数のフルノード運用が必要
  • 高可用性と低遅延が要求される
  • 実行チケット機能の実装待ち

短期的な解決策

  • 信頼できるゲートウェイの導入
  • プロポーザーからゲートウェイへの権限委任
  • ゲートウェイの担保設定

まとめ

Ethereumの統合チェーンビジョンは、以下の段階で実現を目指します:

  1. 中央集権的シーケンサーから分散型シーケンサーへの移行(80%の課題)
  2. 共有シーケンシングの実現(15%の課題)
  3. Based シーケンシングの導入(5%の課題)

このビジョンの実現により、Ethereumエコシステムの断片化が解消され、より効率的で統合された環境が実現されることが期待されます。

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