住宅ペアローンの借入額と収入の割合を対応させる必要があるか国税庁に聞いてみた
先日、このツイートを見て、実際にどうなのか気になったので国税庁に聞いてみました。
TL;DR
あくまで、国税庁の解答を私なりにまとめたものなので、法的に厳密な根拠があるわけではありません。参考程度にとどめてください。
- ペアローンの夫婦の借入額と物件の持分割合は一致させた方がいい。
- ペアローンの夫婦の借入額と収入比は一致させるに越したことはないが、一致しないからと言って常に贈与税が発生するわけではない。
- 夫が妻のローンを一時的に負担するなら、年110万円の控除枠を超えた範囲が課税されそう。ただし、事前の約束のもとで夫が負担する場合は一括課税される可能性があるが、実態を見て判断する。
- 配偶者のローンの肩代わりが必要なら、税務署で相談に乗ってもらえる。
国税庁の質疑応答事例より
「共有の家屋を連帯債務により取得した場合の借入金の額の計算」において、前半では夫婦で連帯債務をする場合は、ローンの借入額と物件の持分割合を一致させる必要がある点について説明されています。例えば、夫3000万円、妻2000万円の借入だと、持分割合は夫:妻=6:4になります。持分割合を1:1とかにすると、差額に贈与税がかかるという話です。これは納得できます。
同記事の末尾に
(注) 連帯債務の負担割合は、所得金額等に応じて合理的に定める必要があり、夫が妻に代わって負担する借入金は、夫から妻に対する贈与となります(昭34.6.16直資58「共かせぎ夫婦の間における住宅資金等の贈与の取扱について」)。
と記載があります。言及されている記事「共かせぎ夫婦の間における住宅資金等の贈与の取扱について」を見てみると、
当該借入者および返済者がいわゆる共かせぎの夫婦であり、かつ、借入資金の返済が事実上当該共かせぎの夫婦の収入によって共同でされていると認められるものについては、その所得あん分で負担するものとして取り扱われたい。
なお、その借入者が贈与を受けたものとして取り扱う金額は、歴年ごとにその返済があった部分の金額を基として計算することにされたい。
夫婦の収入の割合に応じて、ペアローンの借入額を按分するのが正しいような記述に見えます。ただ、この記事だけだとわかったようなわからないような気がするので、直接国税庁に電話してみます。
国税庁の回答
電話で担当の方に具体例を提示しながら、どのように贈与税がかかるのか、どう判断するか聞いてみました。
Q. ローンの借入額と持分割合を一致させる必要があるか?
A. 一致させた方が良い。
Q. ローンの借入額と収入を一致させる必要があるか?(税金的な意味で)
A. 一致させた方が良いが、一致させないからといって常に贈与税がかかるわけではない。
Q. 例えば、夫 600 万円、妻 400 万円の収入がある家庭で、夫2500万円、妻2500万円のペアローンを組み、妻が自分の収入の中から 2500 万円の返済を行う場合、夫から妻への 500 万円の贈与となるか?
A. あくまで、妻が自力で返済する範囲において、それ自体は贈与とはならない(つまり贈与税は発生せず)。ただし、実態を見ないとなんとも言えない。
Q. 上記の例について、夫が 500 万円分の妻のローンを肩代わりしていたとして、どう課税させるか?
A. 基本的には、夫が負担した妻のローンの毎年の返済額が 110 万円を超えた額に対して、夫から妻への贈与税が発生する。家の引き渡しのタイミング等で一括課税されるわけではない。ただし、事前に夫婦間の約束があって負担している場合は、一括課税される可能性がある。
Q. 事前の約束とは何か?
A. 夫が妻に対して 500 万円のローンの肩代わりをする明確な約束があったとみなせる場合は一括課税される。単年度ごとに110万以内におさまっていればいいというものでもなく、総合的に判断される。全体を見て明らかにおかしな贈与があるとすれば、110万円/年を超えていなくても、一括課税になる恐れがある。あくまで可能性の話であり、個別の事情を鑑みて判断する。電話ではここまでしか言えない。
Q. 例えば、妻が育児等で長期間働けなくなって、夫がローンを肩代わりする場合にどういう手続きを取れば良いか?
A. そのタイミングで税務署に相談してほしい。常に「この手続きを取れば良い」というものがあるわけではない。いろいろな事情があると思うので、そこ加味してサポートする。
最後に、丁寧に教えていただいた国税庁に方に感謝申し上げます。
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