住宅ローンの返済額を計算する式の導出過程について説明した資料が見つからなかったので、自作しました。間違いがあれば、優しく教えてください。
TL;DR
元利均等返済を前提として、月利 \alpha、借入額 y_0、返済期間を m ヶ月とした場合の毎月の返済額は
x = \frac{\alpha (1 + \alpha)^m}{(1 + \alpha)^m - 1} y_0
です。
毎月の返済額
月々の金利 \alpha は一定だと仮定します。金利は通常、年利で表記されますが月利は年利を 12 で割れば良いです。例えば、年利が 1 % なら \alpha = 0.01 / 12 です。
返済 n ヶ月目の残債を y_n とし、y_0 を最初の借入額とします。元利均等返済の場合、毎月の返済額 x 円は一定ですが、以下のように元本の返済額 w_n と利子の返済額 \alpha y_{n-1} が含まれています。
利子は前月の残債に比例し、x から利子を引いた額 w_n が元本返済に充てられるため、利子分・元本分の返済額は毎月変動します。n ヶ月目の残債は前月の残債から元本返済額を引いた額になり、
という漸化式で表されます。w_n を展開すると、
y_n = y_{n-1} - (x - \alpha y_{n-1}) = (1 + \alpha) y_{n-1} - x
ですね。この一般項を求めると、
y_n = (1 + \alpha)^n y_0 - \sum^{n-1}_{i=0} (1 + \alpha)^i x = (1 + \alpha)^n y_0 - \frac{(1 + \alpha)^n - 1}{\alpha} x
となります。一般的に、住宅ローンは 20 年とか 35 年で返済を終えるように契約します。返済完了を m ヶ月目とした場合に、y_m = 0 になるべきなので、毎月の返済額は
x = \frac{\alpha (1 + \alpha)^m}{(1 + \alpha)^m - 1} y_0
です。ここで求めた x はあらかじめ決めた返済期間でローンを払い終えるために最低限支払うべき返済額です。返済額を x よりも多くすれば、より早く返済を終えることになります。住宅ローンの返済はどう計算する?方法とシミュレーション例を紹介 - auじぶん銀行 にも同じ式が記載されていますね。
住宅ローンの毎月の返済額は、以下の計算式で求めます。
毎月の返済額=月利×(1+月利)^総返済回数÷{(1+月利)^総返済回数-1}×借入額
※^は、べき乗を示します。
※元利均等返済の場合の計算式です。元金均等返済の場合は計算式が異なります。
例えば、4000 万円 を 35 年ローンで借りて、年利 1 % で返済する場合は、\alpha = 0.01 / 12, m = 420 なので
x = \frac{\alpha (1 + \alpha)^{420}}{(1 + \alpha)^{420} - 1} \times \text{4000 万円} \approx \text{11.29 万円}
という返済額になります。
元本・利子の返済額の推移
求めた x の式を使って、n ヶ月目の残債を求めることができます。先ほど紹介した
y_n = (1 + \alpha)^n y_0 - \frac{(1 + \alpha)^n - 1}{\alpha} x
の式に x を代入して、
\begin{align*}
y_n
& = (1 + \alpha)^n y_0 - \frac{((1 + \alpha)^n - 1)(1 + \alpha)^m}{(1 + \alpha)^m - 1} y_0 \\
& = \frac{((1 + \alpha)^m - 1)(1 + \alpha)^n - ((1 + \alpha)^n - 1)(1 + \alpha)^m}{(1 + \alpha)^m - 1} y_0 \\
& = \frac{(1 + \alpha)^m - (1 + \alpha)^n}{(1 + \alpha)^m - 1} y_0
\end{align*}
となります。n ヶ月目の利子 \alpha y_n と元本返済額 w_n (= x - \alpha y_n) の推移をプロットすると、以下のようになります。
毎月、元本を返済することで徐々に利子も減っていくことがわかります。
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