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モバイルアプリにおけるサインアップフローの適切なタイミング

2023/07/28に公開

私はウズというマダミスアプリを開発しているCTOの茶屋です。最近、社内でモバイルアプリにおけるログインフローの適切なタイミングについて議論しました。その議論を元にZennの記事にまとめて共有しようと思います。

ここで言及する"サインアップフロー"は、ユーザーの認証情報の取得とアカウント設定の両方を含むものを指します。

モバイルとWebの間の差異

ログインフローはユーザー認証やデータの永続化を可能にする要素です。一方、ユーザーにとってサインアップフローは利便性向上の要素ではなく、むしろユーザーの労力が増える要素となります。したがって、サインアップフローが不要な場合は、その回避を目指すのが基本的な設計方針となります。

Webサービスの一例として、あなたが今読んでいるZennは、「サイトにアクセス」から「記事を読む」までの流れではログインフローを経ることなく体験可能です。しかし、「記事を書く」ことになると、初めてサインアップフローを経験します。(またZennの場合、SEO対策の観点からも、すぐにサインアップフローを設けられないという課題が存在します。)

一方で、以下の記事で指摘されている通り、モバイルアプリは「ダウンロード」というユーザーの行動を阻害する要素が存在します。このため、サインアップフローがもたらすネガティブ要素がWebサービスと比べて少なく、ダウンロードすぐにサインアップという手法が取られることも多いです。

https://auth0.com/blog/should-you-make-your-users-login/

サインアップフローのタイミングとその利点・欠点

以下に、「ダウンロード直後にログインを求める」場合と「必要に応じてサインアップを求める」場合の利点と欠点を比較します。

ダウンロード直後にログインを求める場合

利点:

  • 利用規約やプライバシーポリシーへの同意、アカウントの作成など、必要な手続きを一度で完了させることができ、その後のユーザー体験をスムーズに進められます。
  • ユーザーの個々の設定や進行状況を最初から追跡できるため、パーソナライズされた体験を提供することが可能です。

欠点:

  • ログインが必須となると、アプリの利用を阻害し、初回ユーザーの離脱を招く可能性があります。
  • ユーザーはまずアプリを試してみたいと思うことがあります。そのため、最初からアカウント作成を強いられると、ユーザーがアプリを使用することを躊躇する可能性があります。

必要に応じてサインアップを求める場合

利点:

  • ユーザーはアプリをダウンロードしたらすぐに探索でき、アプリの特性や機能を理解しやすくなります。
  • アプリへの自然な興味を通じて、アカウント作成への抵抗感を和らげることが可能であり、それによりユーザーのエンゲージメントを高める可能性があります。

欠点:

  • ユーザーが既にいくつかの機能を使用し始めた後にアカウント作成を求めると、流れを中断する感覚を与え、体験の質を下げる可能性があります。
  • ユーザーがいつサインアップするかを正確に予測できないため、初期のユーザーデータ収集が難しくなる可能性があります。

モバイルアプリにおけるサインアップフローの実例調査

実際のアプリを具体的に見ていくことで、サインアップフローの設定についての理解を深めましょう。

マッチングアプリ

マッチングアプリはダウンロード直後にサインアップを求める例です。その理由は、アプリの主要な提供価値がユーザー間のマッチングにあり、これにはユーザー固有の情報が不可欠です。つまり、ユーザーが自己の情報を提供しなければ、そのサービスの中心的な価値を体験することができません。

乗換案内アプリ

一方、Yahoo乗換案内のような乗換案内アプリは、サインアップせずに利用することが可能です。その中心的価値は乗車駅から降車駅までの最適ルートの提案であり、これは特定のユーザーデータを保持する必要がないからです。したがって、サインアップフローは後段の機能として配置されています。

ECアプリ

ECアプリは、その中心的な提供価値(商品の購入)を利用するためにはサインアップが必要です。しかし、サインアップの際には配送先の登録やクレジットカード情報の入力が求められ、そのフローはユーザーにとって負担が大きくなります。そのため、購買のタイミングに至るまでサインアップを遅らせるというアプローチを取っています。

考察と結論:最適なサインアップフローの配置タイミング

モバイルアプリにおいて、ダウンロード直後にサインアップフローを提示することには、一定の合理性があります。特に次の2つの条件を満たしている場合には、このアプローチが有効であると考えられます:

  • アプリのメインの提供価値を体験するのにサインアップが必要
  • サインアップに伴うアカウント情報の必要な入力量が多くない。

例えば、私たちが開発しているマダミスアプリ「ウズ」は、中心的な提供価値としてマダミスのプレイと観戦を提供しており、これらはサインアップが必要となります。さらに、サインアップに必要な情報は電話番号やソーシャルログイン、ニックネーム、自己紹介のみであり、これらはユーザーにとって負担にならない情報入力です。したがって、「ウズ」ではダウンロード直後にサインアップフローを提示することは合理的です。

この記事を通じて、サインアップフローの配置とそのタイミングが、アプリのユーザー体験とエンゲージメントに大きく影響を及ぼすことが理解いただけたと思います。これらの考え方を活用し、各アプリの目的とユーザーのニーズに合った最適なサインアップフローを設計することをお勧めします。

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