統計検定 1 級に合格するまで
2021/11/21 (日) に実施された統計検定 1 級の試験に無事合格することができたので、備忘録も兼ねてやったことをまとめておきます。誰かの参考になれば幸いです。
Summary
- わからない点を参考書で勉強しながら解答の道筋を覚えるまで過去問をひたすら解く
- 勉強時間は少なくとも 100 時間程度は必要
- 統計検定 1 級は統計の基本的な概念を学ぶには非常に良い試験であるが、実務でよく必要になる知識は学べないため、大枠を理解する程度の勉強に止めてその後は実務で必要な個別の勉強をすると良い
統計検定受験の目的
まずは統計検定を受験した目的です。
受験前の自分の状態はこんな感じでした。
- 研究で使うことがあったため確率分布などの概念は知っている
- 微分・積分・線形代数の計算は問題ない (ただ社会人になってかなり鈍っていた)
- 統計は基礎統計を学部 1 年で学んだだけで不偏推定量も知らない
つまり、実践的な数学のスキルはあれども統計に関しては全くの素人といった感じでした。
仕事上、統計の知識の必要性は日々感じていたため、勉強のモチベーションを維持しつつ基本的な統計の概念を実践を通じて学ぼうと思い、統計検定の受験を決めました。
なぜ 1 級にしたのか
当初、自分にいきなり 1 級は無理だと思っていたため、準 1 級を受験しようかと思っていました。しかし、
- 自分の現状のスキルからすると 1 級より準 1 級の方が勉強時間が必要そう
(準 1 級では自分には不必要そうなかなり細かい統計の知識まで要求されている) - 自分のバックグラウンドが統計でないことから 1 級を持っていた方が転職などで有利そう
という理由から 1 級を受験することにしました[1]。
結果から言えば、この選択は「統計の基礎力が身に付いた」という点と「そのくらいの勉強で合格できた」という点で正しかったと思います。おそらく準 1 級を受けていたらもっと勉強時間が必要になっていた上に、個人的にあまり必要のない細かい知識まで勉強することになっていたのではないかと思います。
勉強方法
参考書
勉強方法を検討するにあたって、様々なサイト[2]を参考にさせていただきました。
それらのサイトをまとめると、結局、
- 統計の基礎を 竹村本 or 現代数理統計学の基礎 で学ぶ
- なるべく多くの過去問に取り組む
の 2 つに帰着するかと思います。
もちろん、午後試験の統計応用など、さらに細かい対策もたくさんできるとは思いますが、統計検定に受かるためだけの勉強をしても本末転倒だと考えていたので、個別的な対策にはあまり踏み込みたくありませんでした。そこで、わからないところは前後含めて参考書で理解を深めながらひたすら過去問を解くという方針でいくことにしました。
参考書としては、統計検定 1 級に必要な知識が過不足なくシンプルに記述されているという点で 現代数理統計学の基礎の方がおすすめかもしれません。ただ、個人的には語り口調で考えの道筋まで書いてある本が好きなので、参考書には 竹村本 を選びました。
また、公式の参考書が日本統計学会から出版されていますが、網羅的であるが故に単なる事実の羅列になりがちなため、個人的には必要ないと思います。それよりも統計に必要な知識が順序立ててきちんと書いてある上記の参考書の方がより統計学についての理解が深まると思います。
過去問については、2014 のものまで購入して解きましたが、過去に遡るほど難しく傾向も変わるため、2016 のものまで解けば十分かもしれません。これらを何も見ずに解答が再現できるくらいまで繰り返し解くことにしました。
勉強時間
きちんと計ったわけではありませんが、本格的な勉強は 11 月に入ってから始めたため、全勉強時間はおよそ 80 時間程度だと思います。
個人的にはかなりギリギリの勉強量だったと思うので、似たような境遇の方でも少なくとも 100 時間くらいは勉強に費やす覚悟を持つと良いかなと思います。
その他細々としたこと
最後に、合格基準など細々したことについてまとめておきたいと思います。
1 級の合格基準は公開されていませんが、6 割程度というのが受験者のコンセンサスになっているようです。しかし、部分点があることや問題難易度自体が変化することから一概には言えないことも確かです[3]。
受験時間がかなり厳しいため 2 完を目指して問題を解き、それが無理そうなら 3 問目もできるだけ解くという心算で臨むと良いかもしれません。
また、回答は罫線付きの用紙をまとめた冊子に記入するようになっており[4]、回答用紙の雰囲気としては東大入試の理科の回答用紙に近いです。回答冊子は受験開始前に中を見ることが可能なので、始まる前にどうなっているか確認しておくと良いでしょう。
統計検定 1 級は 5 問中 3 問を解く方式であるため、簡単な問題を見極めることも大事になってきます。和からさんのサイトを参考に、過去問を使って問題を見る目を養ってみるのも良いかもしれません。
最後に
午前の統計数理はともかく、午後の統計応用に合格しているとは思いませんでした (統計応用は 2021 年から傾向がかなり変わったので最低点が下がったのかもしれません)。そういった感じで合格してしまったため、検定や分布など統計の基本的な部分はかなり勉強になったと思う一方、いわゆる「統計検定 1 級合格」に対して世間が想像するほどの統計的スキルが身に付いたとは言い難い気がしています。
しかし、統計検定 1 級の勉強をいくらしたとしてもデータ分析などで実際必要になるスキル (効果検証や A/B テストなど) は身に付かないため、あくまで
- 勉強のモチベーションを保つ
- 統計の基本的な知識を実践的に使えるようにする
といった点にフォーカスして受験するのが正解な気がしています (そして逆にそれだけわかっていれば合格できるという点でも良い試験です)。
統計検定 1 級の受験を通じて短期集中して統計の基礎的・実践的なスキルを身に付け、その後は各自で必要な統計的スキルを磨いていくといったスタンスで取り組むとよいのではないでしょうか。
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友人に準 1 級より 1 級の方が楽だよと言われたのも大きかったです。 ↩︎
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実際、僕も特に午後試験はそこまで取れていないだろうと思ったら受かっていました。 ↩︎
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2018統計検定1級受験記も参考に。 ↩︎
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