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【世界で大注目】AIエディタ「Aide」を徹底解説します。Cursorと同等以上の力を秘めるAIエージェントを持ちます

2025/01/29に公開

近年、ソフトウェア開発の現場では、AIによるコード生成やデバッグ支援が急速に普及してきました。GitHub Copilotの登場を皮切りに、CursorやTRAE、Windsurfなど、多彩なツールが「コードをより早く書くための補完・提案機能」を提供しています。

しかし、これらのAIコーディング支援ツールは、まだ多くの成長課題も抱えています。たとえば複数ファイルにわたる大規模なリファクタリングや、継続的なタスク分割などは、単にコードを提案するだけでは完結しません。そこで最近海外で注目を集めているのが、「Agentic IDE(エージェント駆動IDE)」 略してAIDEと呼ばれる新しいAIエディターです。

https://aide.dev/

今回紹介するAIDEは、CodeStory(YC S23 バッチ)が開発を進めるオープンソースのAIネイティブIDEです。SWE-benchというベンチマーク(GitHubから収集した実世界のソフトウェア問題に対する大規模言語モデルの評価のためのベンチマーク)で高いスコアを出したことでも注目され、オープンソースかつデータプライバシーに配慮した設計を強調しています。

本記事では、AIDE の概要や機能、インストール方法から他のAIエディタとの比較、実際の使用感に至るまでを総合的に解説します。CursorやTRAEなど既存のAIエディタを使っている方も、AIDEの個性や強みを知ることで新しい選択肢を検討できるでしょう。

[筆者のコメント✍️] 何故この記事を書こうと思ったかというと、CursorやWindsurfといった高機能AIエディタはかなり注目されていませんが、まだ国内でAIDEについて大きな発信を見かけたことはありませんでした。
しかし、このAIDEのAgent(Assistant/Agentic)はかなり優れたAIエージェントであり、CursorのComposerAgentとWindsurfCascadeの中間のような使用感です。問題解決の自律性にはかなり可能性を感じることができました。さらに定額課金であることから私はCursorとAIDEを中心にWindsurfを補助的に使おうと思っています。かなり感動できたからこそ皆さんにもお伝えできればと思います。

1. AIDE とは何か?

1.1 CodeStory社と YC S23

AIDE を開発する CodeStory は、Y Combinator(通称: YC) のS23バッチ(2023年夏)で採択されたスタートアップの一つとされています。YC出身の企業にはAirbnbやDropboxなどがあり、スタートアップ界隈では非常に有名です。

AIDE のローンチ時にYCの公式アカウントがTwitter(現在のX)で発表していたように、「オープンソースで、デベロッパーのデータをプライベートに扱うAIネイティブIDE」 という点が大きな注目を集めました。

1.2 「Agentic IDE」とは

AIDE が位置づけているジャンルは、“Agentic IDE” あるいは“AIネイティブIDE”と呼ばれています。これは以下のような要素を持つ開発環境です。

  • AIエージェントがプロアクティブに行動
    • 単にコードを提案するだけでなく、ビルドエラーやリンターエラーを検知して修正提案を行い、必要なら複数ファイルに対する変更もまとめて提示してくれる。
  • マルチファイル・マルチタスク
    • プロジェクト規模が大きくとも、AIがコードの文脈を理解し、関連するファイルを探し出して編集できる。
  • 会話型 + IDE統合
    • いわゆる「チャットUI+コマンド」で完結するのではなく、エディタ内で発生するイベントやファイル構造を常に監視し、連動する。

AIDEはこれらの要素に加え、「開発者が最終的なコントロールを常に持てるようにする」ことを理念としています。具体的には、VS Codeネイティブのスナップショット(チェックポイント)を簡単に取りつつ、必要に応じて「ロールバック」できる仕組みを持つことが大きなポイントです。

1.3 SWE-benchとは?

SWE-bench は、LLM(大規模言語モデル)やAIエージェントがどれだけソフトウェア開発に貢献できるかを評価するためのベンチマークプロジェクトです。

  • Lite: 比較的小規模の課題を解いて、修正の正確さやコードの完成度を測る。
  • Verified: さらに高難度で、論理的な整合性やマルチファイルの理解、テストスクリプトのパスを含む。

AIDEは、このSWE-bench Lite や Verified で高いスコア(約43%の課題解決率) を達成したと報告されています。これは同ジャンルのCursorや他社エージェントと比較してもトップクラスの数字であり、大きな注目を浴びました。


2025年1月29日時点で、国内ではあまり話題になっていない一方で世界中では結構なレベルで注目が集まっています。上記画像通り、OpenRouterによるとClineの1/6程度のレベルではありますが、3位に位置付けています。

2. AIDEの主な特徴

2.1 プロアクティブなエージェント機能

AIDEは 「単にAIに指示をするだけ」 の仕組みにとどまりません。ユーザが何か問題を抱えていそうだと判断すると、AIが「このファイルにも修正が必要では?」や「リンターエラーが出ているので修正案を提示します」といった具合に、能動的に提案してきます。

たとえば、あるファイルを編集していてビルドやテストが失敗すると、AIDEのエージェントが自動的に「logを読み込み、コンパイルエラーの原因を特定」し、該当箇所を修正する差分を提案するといった動きをするのです。

これを支えているのが、後述するローカル環境でのLSP(Language Server Protocol)やビルドログ解析など、さまざまな内部仕組みです。

2.2 マルチファイル編集とロールバック機能

実際に大規模プロジェクトでAIを使うときに厄介なのが、「複数ファイルにわたる変更」の管理です。AIが膨大な差分を一気に出してきても、そのまま全部適用するのはリスクが高いですよね。

AIDEはVS Code風のチェックポイント機能を持ち、必要に応じてロールバックできるようになっています。Gitを使ったバージョン管理とは別にAIDE自身が小まめにスナップショットを作り、もしAIによる編集が不適切なら短時間で巻き戻せます。

この機能により「AIに自由度を与えるが、最終的な責任は人間がリスク無くコントロールできる」という理想に近づけています。

2.3 チャット+“@シンボル”によるコンテキスト参照

AIDEのチャットパネルでは、**「@File」「@Code」「@Symbol」**などのシンボルを入力することで、直接エディタが認識しているファイル名やクラス・関数名をサジェストしてくれます。これらを選ぶと、対応するコード内容がチャットにコンテキストとして自動挿入され、LLMへ送られる仕組みです。

  • @File: ワークスペース内のファイル一覧から選ぶ
  • @Code: 言語サーバが提供するコードシンボル(クラス・メソッドなど)
  • @Folder などフォルダレベルも将来的に拡張?(一部言及あり)

このように、ファイルやコードブロックを即座にAIと共有できるため、大規模な会話でも「ここの行を見て」といった細かい指定が簡単になります。

類似機能はCursorやTRAEにも存在しますが、AIDEでは「複数ファイルをまとめて@指定」したり、エージェントが自動で不足ファイルを引っ張ってくるなどの工夫があるようです。

2.4 ローカルファースト構成と「sidecar」バイナリ

AIDEはローカルファーストなアーキテクチャを取っているのも特徴のひとつです。以下のようなイメージです:

  • AIDE本体: エディタとしてのUIやVS Codeライクな拡張機能、キーバインドなどを提供
  • sidecarバイナリ: ローカルマシン上でLLMへのプロンプトを生成・受け取りし、エディタの内部情報(LSPイベント、変更履歴など)を管理

この構成のおかげで、開発者側が扱うデータ(ソースコードなど)の多くを外部に送信せずにAI支援を受けることができます。ただし、有料版でクラウドモデルを使う場合はAPI経由となるため、完全にデータを送らずに済むわけではありません。

とはいえ、「ユーザが選択したLLMだけに必要最低限の情報を送る」 というポリシーが徹底しており、プライバシー面のメリットを評価する声が多いです。

https://github.com/codestoryai/sidecar

2.5 “.aiderules”によるカスタム指示

リリースノートから、「.aiderules」という設定ファイルが最近追加されたことがわかります。

これは、エディタ全体や特定のファイルに対して、「AIにはこういったスタイルや方針でコードを書かせたい」**というルールを宣言する仕組みです。

たとえば:

# .aiderules
style:
  indent: 2
  curlyBraces: "sameLine"
stopWords:
  - "someProprietaryFunction"

上記のように書くと、AIはコード生成時に「インデントは2スペース」「波括弧は同じ行に」などのスタイル指針を守ろうとします。さらに使って欲しくない関数を列挙しておけば、誤ってAPIを呼ばれるリスクを下げることができるかもしれません。

Cursorが「.cursorrules」という仕組みを持っているのと同様、AIDEもプロジェクトごとのポリシーやスタイルガイドをAIに覚えさせるための手段を強化してきているようです。

3. インストール・価格プラン

3.1 ダウンロードの手順(macOS / Windows / Linux)

AIDEは公式サイト(https://aide.dev/ )からダウンロードできます。執筆時点(2025年1月)では、以下のようなビルドが用意されています。

  • Mac(.dmg / .zip): Apple Silicon / Intel の2種類
  • Windows(.exe / .msi / .zip): x64 / ARM64
  • Linux(.tar / .deb / .rpm など): まだ一部はアルファ版

インストールしたあと、AIDEを起動するとエディタ画面が立ち上がるので、**ワークスペース(フォルダ)**を選んで作業を開始します。

3.2 無料プランと有料サブスクリプション

AIDEには 無料プラン(Free) と有料プランがあります。主な違いは以下の通りです。

  • Freeプラン:
    • 月50回までのチャット&エージェント呼び出し
    • 1つのエージェントまで
    • Discord上でのコミュニティサポート
    • 自前キー(BYOK)によるLLM利用もカウント対象
  • Creator($20/月):
    • プロモデル(Claude Sonnet 3.5, GPT-4o, Gemini 1.5 Pro など)への無制限アクセス
    • エージェント呼び出し無制限
    • 優先的なSlack/Emailサポート
  • Mastermind(Coming Soon):
    • Nエージェント同時利用(並列処理?)
    • Claude 3.5 Sonnetなど複数モデルを好きに割り当て
    • さらにVIPサポートや早期機能へのアクセス等

現時点(2025年1月)では、「無料枠でもClaude Sonnetやo1-miniなどを試せる」 とのアナウンスがあり、かなりお得という評判です。

一方で、大量にエージェントを稼働させたり、高度なLLMをガンガン使いたい場合は有料プランが前提となることはほかのAIツールと同様です。

4. AIDEの基本的な使い方

4.1 エディタを起動してプロジェクトを開く

AIDEはVSCodeベースで作られている(ので拡張も導入できる)、内部はElectronベースでカスタムされています。起動後に 「Open Folder」 を押して作業したいプロジェクトを開くと、左にファイルツリー、中央にエディタ、右か下に端末やAIチャットパネルなどが配置される構成です。

4.2 アシスタントパネルの使い方

画面右側または下部に 「Assistant」と呼ばれるパネル があり、ここでAIエージェントとのチャットを行います。一般的なチャットUI同様、テキストボックスに質問や指示を入力し、Enterキーで送信します。

  • コード生成要望: 「このファイルにこういう機能追加して」
  • エラー修正依頼: 「実行時に○○エラーが出た。直して」
  • リファクタリング: 「この関数をもっと効率的に書き直して」
  • ドキュメンテーション生成: 「メソッドにJSDocコメントを追加して」
  • テストコード作成: 「ユニットテストを追加して」

など、幅広い要件に対応するのは他のAIエディタと似ています。ただAIDEの場合、エージェントが自発的に「関連ファイルを含めた修正」を提案してくるのが大きな特徴です。

このAssistantのAgenticモードがAI駆動開発のキーとなるAIエージェントです

4.3 クイックインボーク(CMD + K)とスポットライト式操作

AIDEのユニークな操作感として挙げられるのが、CMD + K(またはCTRL + K)で呼び出すスポットライト風ポップアップです。Macのスポットライト検索に似たUIが中央に現れ、ここに自然言語で命令を入力できます。

  • Refactor selected code
  • Explain line 30-50 in main.ts
  • Add docstring to current function

などなど

選択中のコードやファイルに応じてAIが適切に提案や差分を返してくれます。Sidebarを見ずとも、このクイックインボークだけで会話を進められるため、エディタを縦横無尽に操作しながらAIに働きかける感覚を味わえます。

4.4 コンテキスト付与(@File, @Code)と編集の流れ

チャットパネルやCMD + K いずれにおいても、AIDEは「@シンボル入力」によるコンテキスト指定に対応しています。

たとえばチャット入力欄で「@」と打つと、ファイルやコードシンボルの一覧がサジェストされ、Enterで選ぶと次のようなテキストが挿入されます:

@File src/utils/formatDate.ts

送信するとAIは、そのファイル内容を読み込んだうえで回答や提案を行います。さらに別のファイルも同時に指定すれば複数コンテキストをまとめて送れます。

修正や追加の提案が行われる際は 「差分表示」 がエディタ上に提示され、まとめてApply(Accept)またはRejectするか、行単位で適用をコントロールすることが可能です。

コンテキストをピン留めできるのもかなり良いと思います。

5. 類似ツールとの比較

5.1 Cursor

CursorはAIエディタとして有名な存在であり、非常に洗練されたUIや高性能な補完が特徴です。AIDEと同様、ファイル内差分プレビューやチャットベースの指示などを提供していますが、オープンソースではない点やデータ送信の制御が限定的という見方もあります。

Cursorと比べると、AIDEは機能がシンプル(tab補完など細かい機能が欠けていたりする、AI駆動開発を前提としている)

一方で、Cursorは早くから製品化されており、大規模プロジェクトの対応やVS Codeライクな操作感が安定している点を強みとしています。

既存プログラマーがいきなりAI駆動開発をするには少し壁があるかもしれません。tab補完からはじめてChatやComposerと移行していくのが一番慣れやすいとも考えています。そういう意味ではCursorを選んでおけば間違い無いと思っています

5.2 Windsurf

Windsurfは大規模コードベースを横断的に解析して、LLMに最適化したコンテキストを提供することを得意とします。AIDEにも似た機能がありますが、Windsurfは 「コード全体をスキャンして関連箇所をAIに自動マッピングする」 など、さらに踏み込んだ設計がなされているという評価があります。

そのぶん、WindsurfはまだUX面や操作性で粗があるとも言われており、AIDEやCursorなどの方が現時点で使いやすいという意見もあります。

著者自体は、WindsurfのCascade(AIエージェントをかなり推していますが、エージェント使用に追加課金が採用されていることからWindsurfをファーストチョイスにはしていません)

6. AIDEを取り巻くコミュニティと開発状況

AIDEはオープンソースであるため、GitHub上にリポジトリが公開されています。バグ報告や機能リクエストも積極的に受け付けており、IssueやPull Requestが頻繁にやり取りされています。

また、Discordを中心にコミュニティが形成されていて、開発者同士が「大規模コードベースでハングする」「.aiderulesの書き方が分からない」といった相談をしています。大手AIコミュニティ(Redditのr/aidevtoolsなど)でもAIDEに関する議論が盛んです。

  • 高速なアップデートサイクル
    • バグフィックスや新機能が週単位でリリースされることもしばしば。
  • プラグインエコシステム
    • VS Code互換を目指す部分もあり、既存の拡張機能との連携を検討している段階。

今後さらにエージェント機能が充実すれば、自動テストやセキュリティスキャンをエディタ内で完結させるなど、より「IDE+AIエージェント」の融合が進むと予想されます。

7. メリット・デメリットの総括

メリット

  • オープンソースでデータプライバシーに配慮
    • ローカル環境で動く“sidecar”構造により、必要以上にコードを外部に送信しない。
  • プロアクティブなエージェント
    • Linterエラーやビルドログを分析し、複数ファイルに跨る修正案を自動提案してくれる。
  • ロールバックや細かい差分適用が簡単
    • VS Codeネイティブなスナップショット管理により、安全にエージェントを活用可能。
  • モダンなUI/UX + スポットライト風操作
    • CMD + K でのクイックインボークなど、操作性が洗練されている。
  • 豊富なLLM・モデル切り替え
    • AnthropicやOpenAI、Gemini/Deepseekなど多様なモデルへの切り替えが可能

デメリット

  • 大規模プロジェクトでの不安定さ
    • メモリ消費やコンテキスト上限でハングする報告が一定数ある。
  • 開発途中の機能が多い
    • コミュニティベースで急ピッチに進んでいる反面、バグや仕様変更が頻繁。
  • AI駆動開発に特化しすぎているところ
    • 既存プログラマー(VSCodeを使用)が急にAIDEに移行した時に、Cursorと比べお勧めできるかというと微妙な気はする

以上がAIDEに関する解説になりました。AI駆動開発では自分ではなくAIが中心になって開発を行いますが、この際にAgent機能が大切になってきます。このAgent機能の性能はもちろんLLM自体の問題解決も重要なのですが、サービス開発における95%は知識を求められる地道な積み重ねです。その95%を以下に確実に積み重ねるかの部分では、Agentのバックエンド部分(コンテキスト認識やRAGなの創意工夫)が重要です。今回紹介したAIDEは全体的にAgentの質が高く、自分は他のものよりも優先して使い込んでみたいと思わされている程です。

ということで、今回の内容はここまでです。実際にAIDEを使い込んでいく過程での知見はYoutubeやX、Zennでも共有していく予定ですので是非ともフォロー&チャンネル登録をよろしくお願いします!

https://www.youtube.com/@ai_masaou

https://x.com/AI_masaou

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