低温環境でのリポバッテリー放電特性(簡易実験)
背景
ドローンを寒冷地で飛行させることが多くなってきたため、バッテリーの低温環境下における放電特性を評価してみました。
少し前に行った試験ですが、簡易的にできるだけお金をかけずにバッテリーの放電特性を評価するための実験系を組み、室温及び低温環境で試験しました。
また、市販されている断熱材の評価もしましたので、その結果を紹介します。
使用したもの
バッテリー
AirTruckで使っているバッテリーは、Tattu製の6S22000mAhのバッテリーです。
これを4つ搭載し、2直列、2並列の12S44000mAhとなっています。
放電試験装置
放電させるのにできるだけ費用を抑えるために、セメント抵抗を使用しました。
実際にAirTruckが飛行しているときの電流は60~70A程度で、1.6C程度の放電ですが、まずは0.7C放電での試験を行ってみました。
データロガー
データロガーはHIOKIのLRB431を使用しました。
電圧と熱電対による温度を計測しました。
断熱材
カインズで下記の断熱材を手に入れることができたので、それぞれ評価してみました。
①省エネシート
②アルミ保温シートL
③断熱シート
熱電対
バッテリーの表面温度や雰囲気温度を計測するために、熱電対を使用しました。
バッテリーの天面と側面に熱電対を貼り付けて計測しました。
冷凍庫
低温環境を簡単に模擬できる環境として、冷凍庫を使用しました。
後ほどご説明しますが、温度制御が正確ではないので、あくまでも定性的にしか評価することができません。
実験結果
室温及び冷凍庫試験
バッテリー電圧変化グラフから、低温下(-10℃以下)では、放電持続時間が、15~20分程度短縮しました。
各温度変化グラフから、低温下(-10℃以下)においても、バッテリーは自己発熱により、温度上昇しました。
→低温下における飛行については、バッテリーの温度低下により、飛行時間が短縮します。
※本来このような実験は恒温槽を使用しますが、仕方なく冷蔵庫を利用したため、低温時の温度変化は、冷蔵庫の特性と考えられます。冷蔵庫の空冷ファンが回ると温度が下がり、止まると温度が上がる現象がみられます。(下図紫丸部)
※ドアを開け閉めしてしまったため、下図赤丸部が発生してしまいました。
バッテリー電圧変化 室温と低温環境の比較
雰囲気温度変化
バッテリー天面温度変化
バッテリー側面温度変化
断熱材比較試験
購入した3種類の断熱材でバッテリーを覆えるような箱をそれぞれ作りました。
それぞれの断熱材で覆ったバッテリーを、室温の状態から、冷凍庫に入れ、時系列的なバッテリー表面温度を計測し、断熱材の比較を行いました。
断熱材の比較
②の断熱材が一番優れていることがわかりました。
断熱材放電試験
最後に、バッテリーを断熱材で覆い、室温の状態から冷凍庫に入れ、冷凍庫内で放電させて、温度変化及びバッテリー性能がどのようになるか検証しました。
バッテリー電圧変化 断熱材の比較
雰囲気温度変化
バッテリー天面温度変化
バッテリー側面温度変化
バッテリー電圧変化グラフから、断熱/保温材2で包まれたバッテリーの放電持続時間は、15~20分程度延長され、室温におけるそれと同等の放電持続時間となりました。
各温度変化グラフから、低温下(-10℃以下)においても、雰囲気温度に馴染まずほぼ一定の温度を保ち、その後、バッテリー自己発熱により、バッテリーは温度上昇していきました。
→断熱/保温材の効果は大きく、低温下においても、常温時と同じようなバッテリー性能を満足することが可能とることがわかりました。
まとめ
今回行った実験は、あくまでも簡易的な実験でありますが、バッテリーを使用する前に15℃程度に温めた状態で、断熱材で覆い、できるだけ速やかに放電(1C程度)させることにより、外気温がマイナス10度程度であれば、室温状態と同程度の放電特性になることがわかりました。
今後、より低温な環境で、より定量的に評価していきたいと思います。
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