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HashiCorp Vaultユーザ会(第1回)の開催レポート!

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はじめに

こんにちは。イオンスマートテクノロジー株式会社(AST)でSREチームの林 aka もりはやです。
加えて私はHashiCorp ambassador 2025も任命いただいております。

さて、まだまだ暑い最中の2025年9月1日(月)14:00〜18:00、IBM虎ノ門オフィスにて初開催となる「HashiCorp Vaultユーザ会(第1回)」が行われました。本記事では当日の雰囲気と各セッションの学び、開催きっかけの熱量をレポートします。

イベント公式URL:
https://vaultuserjp1.splashthat.com/

TL;DR

  • 「HashiCorp Vault ユーザ会」第1回はHashiCorpさんがIBMと一緒になって以降、初めてIBM虎ノ門オフィスで開催
  • セッションは再学習・Kubernetes 連携・社内基盤としての展開・暗号化ユースケースなどバランス良し
  • 書籍プレゼントもあるクイズ大会も行いインプット直後にアウトプット

イベント概要

イベントの概要について公式ページより以下に引用します。一言で表現すれば「HashiCorp Vaultに興味ある方集まれ〜!」でしょうか。

セキュリティの未来を語ろう ― Vaultを使う人も、これから使いたい人も。

HashiCorp Vault に関心のあるみなさまが、つながり・知見を共有し・実践的活用を学び合うことを目的に初開催されました。「すでに運用しているプロダクション事例」から「現在キャッチアップ中」「導入を検討している部門」まで多様なフェーズが同室となり、アプローチの成熟度比較や質疑が活発でした。

開催までのきっかけ

今回のイベントは私(もりはや)が企画・司会・登壇まで行いましたが、きっかけは別のイベントによるものでした。

それは2025年07月17日に行われたイベントHashiCorp Do Cloud Right Summit Tokyoです。
このイベントはHashiCorpさんのユーザ事例をプロダクトに固定せずに聞ける楽しいイベントでしたが、その中でもとくに「Vault を使える基盤として整備し、みんなに使ってもらえるようになるまで」 by 株式会社インターネットイニシアティブ 鈴木 高彦さんのセッションに胸を打たれたのです。

HashiCorp Vaultは当社もHCP Vaultとしてマネージドサービスを導入しており、知らないサービスではありませんでしたが、私自身はあまり関わることなく過ごしていた中で、鈴木さんの社内展開の話が本当に素晴らしいと感じたのです。

その場で一気に熱量が高まった私は懇親会の中で鈴木さんにお話をうかがい、さらにVaultについて学びたいと思い立ちました。
懇親会の中で少なくない方と話しながらテンションも上がり、気がつけば「今度Vaultの勉強会やりましょう!」と宣言していました。

Vault勉強会を開催することが決まれば、あとは日時と会場だけです。その場でHashiCorpの伊藤さん、Hiroさん、Gwennさん、Taroさんらに会場を貸してくださいとお願いし快諾いただきました。ほぼ勢いだけでのお願いでしたが、きちんと持ち帰っていただき場所を確保してくれたのは感謝しかありません。

こうして実現したのが今回の「HashiCorp Vaultユーザ会(第1回)」です。
しかも9月1日はHashiCorpさんがIBMとしてオフィス自体も新しくなる記念すべき日で、そんな忙しそうな初日からユーザ会へ会場を貸してくれるフットワークの軽さに改めて脱帽と感謝をお伝えします。

セッションレポート

さて当日のセッションを振り返っていきます。

1. 2025年にHCP Vaultを学び直して見えた景色 〜ダニンクルーガーの最初の山から〜

トップバッターは私、もりはやでした。私の後のセッションに技術的な深さや社内展開の素晴らしい事例が控えていることはわかっていたため、HashiCorp Vaultへ入門してみた楽しさといったものをユーモアを交えつつお話しました。「うなずきチャレンジ」は個人的にはやっていて楽しかったです。あと「社内ドキュメントが福利厚生」と言える当社の環境は素晴らしいですね。

2. Vault Meets Kubernetes

続いては、株式会社NTTデータ クラウドプロフェッショナル統括部 望月 敬太さんこと@mochizuki875さんのセッションです。

望月さんとはSNSではもちろん、リアルでも軽くお会いしたことがある関係でしたが、何よりも日本で唯一のHashiCorp Vault本と言って良い書籍『Kubernetes Secret管理入門 HashiCorp Vaultで実現するセキュアな運用』の著者のお一人ということでお声かけし、快諾いただいて登壇してもらいました。

セッションを通して聞いたあと、『この力作スライドが世の中に生まれてくれて本当にありがとう』というのが最初の所感でした。
望月さん自身もおっしゃるように「スライドだけをみても内容がわかるような構成」となっていますので、KubernetesとVaultに興味のある方にはとても良い内容になっています。

自分がとくに学びとなった部分としては「4. KubernetesからVaultへのアクセス」のところで、すでに導入済みであることから漠然としていた接続の手段と、それが複数あり条件によって選択できること、基本的には”Kubernetes auth method”を利用すれば良いことがよく理解できました。

また、「5.2.2 Trigger Rollout Restart」については3rd PartyのReloaderとVSO(Vault Secret Operator)とのmanifestの運用しやすさについての質問も飛び交い、非常に充実したセッションとなりました。

また、望月さんからは後半のクイズ大会に向けて自著『リスクから学ぶ Kubernetesコンテナセキュリティ コンテナ開発者がおさえておくべき基礎知識』も寄贈いただきまして、盛り上げに貢献していただきました。

3. Vault を使える基盤として整備し、みんなに使ってもらえるようになるまで

小休憩を挟んで3番手に登壇いただいたのが、株式会社インターネットイニシアティブ ネットワーク本部 SRE推進部 シニアエンジニア 鈴木 高彦さんの「Vaultを基盤として整備し、 みんなに使ってもらえるようになるまで」です。

前述したように、本イベント「HashiCorp Vaultユーザ会」をやろうとなったきっかけが鈴木さんのセッションでしたので、今回も再演をお願いする形となりましたが、前回よりもさらにボリュームアップしていただけました。

このセッションの素晴らしいポイントは、語弊を恐れずに表現すれば「HashiCorp Vaultという初見ではとっつきにくいプロダクトをちゃんと社内に展開できた事例」でしょう。

ユーザへのメリットの提示、興味を持った時にちゃんと触るためのドキュメントの整備、テナント作成時の最低限の支援などを通し、社内へVaultを普及していく流れは素晴らしいものです。私たちもこれはぜひ真似をしなければならないと強く感じています。

これからVaultを普及していきたいVaultユーザの方には必見の内容と言えます。

4. シークレット管理だけじゃない!HashiCorp Vault でデータ暗号化をしよう

最後は 株式会社エーピーコミュニケーションズ 埜下 太一さんこと@nnstt1さんのセッションです。
タイトルは「シークレット管理だけじゃない!HashiCorp Vaultでデータ暗号化をしよう」で、私のようなタイトル通りにVault=シークレット管理と考えている方には刺さる見事な内容でした。

冒頭では埜下さんがHashiCorp Vaultを学べた素晴らしい記事にも言及されていたので、本記事でも紹介します。
私もざっと読みましたが参考リンクも含めてVaultの主要な範囲を押さえており、入門としては今も有用な記事です。

https://zenn.dev/nameless_gyoza/articles/hashicorp-vault-hands-on

埜下さんのセッションは手書き風の構成図が大変見やすいのが特徴ですが、なんと言ってもその資料の構成のストーリーが見事でした。
スライドP14では「HashiCorp Vaultのデータ保護」と題して「Transit Secret Engine」と「Transform Secret Engine」の暗号化後(Transit)と変換後(Transform)の一枚絵が表示されます。

この時点で聴衆である私たちの多くはTransitもTransformも似たようなものに見えており、さっぱりわからないという状況の中で埜下さんからは「このスライドを覚えていてください、最後には全部わかるようになります!」と景気の良い発破をもらいながらセッションを聞きました。

そしてP37では実例とともに暗号化後、変換後のサンプルが提示されますが、それまでのセッションを通して聞いたことでなるほど!そうなるよね!!と理解できる状態になっていたのは知的で気持ちの良い体験でした。

クイズ大会

すべてのセッションを終えたあとは10問ほどのVaultクイズ大会を行いました。
クイズ大会については、準備段階では懇親会前のちょっとした余興と考えており、Vaultに関連するけど何も知らなくても回答が可能な問題ばかりを準備していました。

しかし、素晴らしいセッションが続いているなかでいくつかの問題を当日のセッション内容に沿ったものに変更するなどし、そこそこ手応えのあるものになっていたはずですが、全問正解者は8名ほどにもなり、望月さんの書籍やHashiCorpグッズを見事に勝ち取られていました。

IBMオフィスでの懇親会

懇親会はIBMさんのオフィスをそのまま利用させてもらいました。会議室を出た広いロビーが会場として利用できたため、30名弱ほどでも余裕を持って利用することができ、Vaultをはじめイベント自体の感想や日々の業務についてなど多岐にわたる交流ができて良い時間となりました。

懇親会前に撮影した集合写真を記念として掲載します。(当日、撮影にあたって写真OKの方のみでとお声かけしましたが、掲載が困る方はお気軽にご連絡ください)

おわりに

こうして勢いをきっかけに開催に至った「HashiCorp Vaultユーザ会(第1回)」でしたが、素晴らしい場になったと感慨深く振り返ることができました。
参加・登壇・HashiCorp運営のみなさま、本当にありがとうございました。引き続きコミュニティで学びを循環させていきましょう。

私自身としては当社の業務においてVaultに直接関わる頻度は少なかったのですが、今回をきっかけにHashiCorp Vaultの魅力や知見を改めて多く得ることができましたので、積極的に自分のタスクの一部として取り組んでいこうと決意を新たにしました。

それではみなさま、Enjoy Vault & Secure Delivery!

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