Microsoft Teamsのライブ音声翻訳Interpreter Agentのインプレッション(中国語話者との場合)
はじめに
こんにちは。イオンスマートテクノロジー株式会社(AST)でSREチームの林 aka もりはやです。
本記事ではMicrosoft社のコミュニケーションツール『Microsoft Teams(以降はTeams)』の「リアルタイムの音声読み上げ通訳」機能を中国語ネイティブなメンバーとのディスカッションで使用したインプレッション(初感と気づいたこと)を紹介します。
重要なこととして、あくまで2025-08-28時点の経験をもとに紹介しますので、本機能のスタートラインでしかなく、今後の進化に期待するためのスナップショットとして残す内容となります。
この素晴らしい機能を展開してくれたMicrosoft社には敬意と感謝しかなく、文中に批判めいたと感じる内容があればベースにそれらがあるとお考えください。
TL;DR
本記事を箇条書きでまとめると以下です。
- リアルタイム音声翻訳「Interpreter in Microsoft Teams meetings」2025年6から7月ごろにリリースされた
- AST(当社)ではいち早くMicrosoft 365 Copilotを社員の希望者へ展開済み
- グループ企業の中国語メンバーとのIT関係のディスカッションで早速試してみた
- ”完璧な翻訳”には精度も速度も程遠いが、理解ゼロの言語に対して極めて強力な機能だったし、今後が期待できる
Interpreter in Microsoft Teams meetingsとは
「Interpreter in Microsoft Teams meetings」は「Interpreter Agent」とも呼ばれるMicrosoft Teams会議の機能です。
Microsoft 365 Copilotライセンスの一部として提供され、利用者はTeams会議において多言語の音声をリアルタイムの音声読み上げ通訳を通じて、優先する言語で話したり聞いたりするのに役立ちます。
私たち日本人であれば、会議の参加者が英語話者でも中国語話者でも一律日本語として聞けてしまう夢のような機能です。
以下の動画はわずか1分程度ですが、この機能を理解するのに十分以上のものです。
動画内では別言語で話す会議の参加者が、声質をそのままにスペイン語や韓国語に変換して聞こえる様を紹介しています。端的に言って驚きの機能です。
正式な一般へのリリース日について、明確なドキュメントを見つけることはできませんでしたが、私たちが利用できるようになったことを気づいたのは今月8月の冒頭です。
リリース当初、私たちのチームではお試し程度に日本人の同僚氏同士で不慣れな英語を喋り、それが日本語に聞こえる不思議かつ役立つ体験をして手応えを掴み、その後は実践の機会を伺っていました。
補足として、この機能を使うためにはMicrosoft 365 Copilotのライセンスが必要ですが、日常的に利用している状態でした。これに関しては先行してAIへの投資を行ってくれている会社に感謝します。
グループ会社の中国語ネイティブのメンバーとの会議で実践開始
こういった状況の中、機会が訪れました。
当グループの一社である「Aeon Digital Management Center(以下、DMC)」のメンバーとのディスカッションが行われることとなったのです。
議題は直近で急激に増加している「New RelicのIngestデータ量の削減」についてで(これに関しては別の記事で紹介予定)、会話の内容はアプリケーションログの用途やNew RelicのPipeline Filterなどの細かな機能にわたり、一定以上のITリテラシーが必要となるものでした。
通常、私たち日本メンバーと中国メンバーが同期コミュニケーションを行う場合、ブリッジSEのような日本語と中国語を堪能に話す方が1名は参加します。
過去に何度かその通訳を通した会議を体験していますが、高い言語能力が要求される大変なスキルと感嘆するばかりでした。
今回の会議でも通訳として参加いただきましたが、「Interpreter Agent」機能を検証がてら利用したい旨を会議開始時にお伝えし、機能を有効な状態で会議を参加しました。実際に有効にするには以下の図のようにTeamsのメニューから行います。
会議の参加メンバーと言語を図示したものが以下になります。
従来の中国語メンバーとの会議での振る舞い
最初の簡単な挨拶とInterpreter Agentを使う旨を伝えるまでは、私はまったく理解のできない中国語の会話が飛び交いました。
従来の会議では、私の中国語への言語能力の低さを嘆くばかりでしたが、それがとくに顕著となるのがDMCメンバー内でディスカッションが行われ始めた場合です。
議論する内容が複雑で難易度が高いものであればあるほど、開発チームとしてディスカッションをするのは当然のことですが、白熱するほど通訳するタイミングも難しいものとなります。
Interpreter Agentが利用できる前までは「Teams Premium」と「Microsoft 365 Copilot」ライセンスが有効時に利用できる「Live translated captions(ライブ翻訳キャプション)」を利用していました。
ライブ翻訳キャプションを使用すると、リアルタイムで会話が指定した言語に翻訳されて字幕として読むことが可能になります。
この機能もとても優れたもので、異国語のメンバーと話す際には重宝してきました。
ただ、Interpreter Agentはそれを超える体験をもたらしました。
Interpreter Agentの凄さを体感
Interpreter Agentを有効にし、翻訳先の言語を日本語に指定して会議を進めた私は衝撃を受けることになります。
図のように、中国語のメンバーがディスカッションを行っているにもかかわらず、私は一切の中国語を聞くことはなくなりました。
その代わりに5秒程度のタイムラグを経て、彼らの声とわかる声質でほどほど流暢な日本語が流れてきました。
正直なところ、翻訳の精度はまだ高いとは言えません。技術的な会話が多いためか適切な単語に変換されていないと感じることは多くありましたし、文章としての体裁が整っていないときもしばしばありました。たとえばドキュメントや手順書と翻訳すべきところを「台本」としてしまうなどです。
時にユーモアのある翻訳に苦笑しつつも、中国メンバー同士の会話のコンテキスト理解度が上がり、現在何について彼らが会話しているかを少なからず理解することができました。
この時の会議は中断や作業などもあり長時間に渡りましたが、従来に比べて圧倒的に疲労感が少ないことに気づきました。その理由は以下によるものです。
- ライブ字幕翻訳に比べて目の疲労が少ない(多くの場合画面にはダッシュボードやターミナルが表示され、並行して字幕を追うのが大変)
- 理解できない言語が耳に入ることがなくなり、多少違和感はあるが母国語で会話を聞くことができる
このような結果を踏まえ、私は今後の英語を除く日本語ではない言語を話す方との会議においてはInterpreter Agentの利用を強く推奨したいです。英語以外としているのは、なんやかんやいって英語教育や映画等によって英語をある程度理解可能と考えているためです。
Interpreter Agent利用時の課題(現時点の)
このような素晴らしいInterpreter Agentですが、多くの伸び代があることも述べます。
それは以下の2つです。
- 翻訳精度の課題
- 翻訳まで数秒のタイムラグ
翻訳精度の課題
おそらく翻訳元、翻訳先それぞれの言語によって大きく変わるでしょうが、現時点で中国語->日本語の翻訳には多くの改善点があります。
適切な単語への翻訳もそうですし、そもそも文章として体をなさないようなケースもありました。
日本語はカタカナによる英語も取り入れてしまう複雑な言語である一方、中国語は漢字のみで構成されているため、その大きな違いによるものなのかもしれません...(言語学等の知識はないためこれはただの感想です)
翻訳まで数秒のタイムラグ
翻訳のタイムラグは明確な課題です。
現在のInterpreter Agentの翻訳は、実際に言葉を発してから5秒〜10秒程度のタイムラグが発生します。
当然ながら一定のまとまりの文章を理解し、別の言語へ翻訳するためには人間のプロの通訳の方でも時間が必要です。
人間の通訳と異なるのは、Interpreter Agentの翻訳後の言葉は、あくまでそれを利用する翻訳先言語の者にしか聞こえず、翻訳前の言語を話す者同士には聞こえません。(今後それを変える設定があるかもしれませんが)
これによって「自分の言葉が翻訳されるのを待つ」といった行為が不要となり、テンポよく次の会話を続けることができてしまいます。
もっとも体験が悪かったタイミングは、通訳の方が中国語メンバーと会話してから日本語に切り替えた時です。
Interpreter Agentで翻訳先言語を日本語に指定した場合、日本語については他の方の声をそのまま聞くことができます。
しかし、通訳の方のように中国語も日本語も話せる場合、日本語に切り替えて話し始めた際の冒頭の数秒が翻訳中の音声にかき消されるケースが散発しました。
その都度、私は「翻訳の音声が流れ終わったので、もう一度さきほど日本語で話した内容を教えてください」とお願いする必要がありました。
このような事象への改善点として、相手が翻訳音声を聞いている状態を明確にわかるようにする機能があると良いかもしれません。
おわりに
以上が「Microsoft Teamsのライブ音声翻訳Interpreter Agentのインプレッション(中国語話者との場合)」でした。
上述した通り、Interpreter Agentの翻訳は厳しい目線でいえば本職の通訳の方に勝るほどではありません。
しかしながら私にとっての中国語のように、未学習の言語に対しては極めて効果のある機能との手応えを得られました。
まだまだリリースされて間もない現在、精度も速度もより改善されていく未来を思うと、まさに世界を変えてしまうほどの機能として「Interpreter in Microsoft Teams meetings」の進化に期待を寄せるばかりです。
それではみなさまEnjoy Microsoft Teams!
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