PagerDutyのユーザ棚卸しをシンプルなPythonとExcelでやりました
はじめに
こんにちは。イオンスマートテクノロジー株式会社(AST)でSREチームの林 aka もりはやです。
2025年も楽しんでやっていきです。
本記事ではPagerDutyの棚卸しを簡単なPythonスクリプトとExcelを使って行なった話をします。
TL;DR
本記事を箇条書きでまとめると以下です。
- PagerDutyのユーザはAzureのMicrosoft Entra IDをIdPとしてSAMLによるSSOで認証と、初回ログイン時の作成を行っている
- Entra ID側を削除してもPagerDutyから自動削除されない
- 未使用ユーザが複数名以上おり、一覧をPythonのスクリプトで取得しExcelで社内へ展開し棚卸しをお願いできた
背景
当社ではPagerDutyのユーザ管理をMicrosoft Entra ID(以降はEntra ID)を利用したSSOで実現しています。
Entra IDのユーザとグループはTerraformで管理されており、PagerDutyの利用を希望するユーザはTerraformでPRを出し、SREレビュー後にマージされることでPagerDutyの利用を開始できます。
(利用希望者側にTerraformのナレッジがない場合はJiraによるチケット依頼でも対応しています)
PagerDutyにはユーザが初回ログイン時に自動で作成するためのAuto-provision users on first loginオプションが用意されており、こちらを有効にすることで「IaCによる事前のレビューさえ通ればあとはユーザがセルフサービスで利用を開始できる」状況を実現しています。
PagerDutyユーザが自動で消えない課題
上述したユーザ作成・認証のフローはうまく機能し、社内のPagerDuty利用者数は順調に増加してきました。
しかし「退職・異動したユーザのPagerDutyアカウントの削除」については人間によるチェックと削除処理が必要です。
最近ではSCIM(System for Cross-domain Identity Management)によるユーザの削除も含めてIdPから反映される仕組みが広がりつつありますが、現状PagerDutyが対応するSAMLによるSSOではユーザ作成と認証は対応しても、ユーザの削除まではされません。
PagerDutyユーザの棚卸しを行う
こうして、年明けという良いタイミングでもありましたので、PagerDutyユーザの棚卸しを実施することにしました。
PagerDutyのGUIでもある程度は可能
PagerDutyのWebコンソールからPeople -> Usersを選択することで、ユーザの一覧を確認できます。
こちらは全体の状況を見たり、ドリルダウンしてユーザ個別の情報を確認する場合には便利ですが、ユーザの棚卸しのような一覧として使うには向いていません。
Pythonで簡単なスクリプトを作成
PagerDutyには優れたAPIが用意されています。
(改めてAPIのドキュメントのChange logを見て、その更新頻度から力の入れ具合も感じ取れます)
List usersを利用
今回行いたいのはPagerDutyユーザの棚卸しであるため List users
を利用します。
List users
は名前の通りユーザの一覧を取得するためのAPIです。
ユーザに関するさまざまな情報を取得できますが、今回必要となるのは以下でした。
- ユーザ名
- メールアドレス
- ユーザが所属するチーム (複数ある場合はどれかひとつ)
- ユーザのPagerDuty上のID (オプションとして後述するAuditログ参照に使う)
Pythonスクリプト
これらを取得するために、AIの力を借りつつ作成したPythonコードが以下になります。
import os
import requests
import configparser
# 設定ファイルの読み込み
config = configparser.ConfigParser()
config.read('config.ini')
# API keyの取得
api_key = config['API']['SECRET_API_KEY']
def get_pagerduty_users():
# PagerDuty APIのエンドポイント
url = "https://api.pagerduty.com/users"
# リクエストヘッダー
headers = {
"Accept": "application/json",
"Authorization": f"Token token={api_key}",
"Content-Type": "application/json"
}
# ページを処理(Pagination)しながら全件のユーザ情報を取得する
users = []
more = True
offset = 0
limit = 25
while more:
# ページ指定のクエリパラメータを追加
params = {
"limit": limit,
"offset": offset
}
response = requests.get(url, headers=headers, params=params)
if response.status_code == 200:
response_json = response.json()
users += response_json["users"]
offset += limit
more = response_json["more"]
else:
print(f"エラー: {response.status_code}")
return None
return users
# ユーザー一覧を取得して表示
users = get_pagerduty_users()
if users:
# ヘッダーを表示
print(f"名前,メール,ID,チーム")
# ループでユーザー情報を表示
for user in users:
# teamsが空の場合は空文字列を表示
if not user['teams']:
print(f"{user['name']},{user['email']},{user['id']},-")
else:
print(f"{user['name']},{user['email']},{user['id']},{user['teams'][0]['summary']}")
他のスクリプトも作成する観点から、APIキーは別ファイル config.ini
へ切り出しています。
# config.ini
[API]
# See: https://support.pagerduty.com/main/docs/api-access-keys#generate-a-user-token-rest-api-key
SECRET_API_KEY = hogefugapiyo
Pythonコードのポイント
大したコードではありませんがポイントは以下の通りです。
- ページネーションへの対応
- Paginationに記載ある通り、取得結果は最大100個を超えられないためoffsetを利用して全結果を取得するようにしています
- チーム情報の取得
- ユーザは必ずしもチームに所属していませんが、している場合は表示するようにしました。棚卸し時の参考情報であるため複数のチームに所属しても最初にHitしたチームのみを表示する割り切った仕様です
CSVとして結果を取得し、そのままExcelへ貼り付けて各部門へ展開
上述したPythonスクリプトを実行すると以下のような結果を得られます。
名前,メール,ID,チーム
もりはや AST,morihaya@example.com,HOGEPIYO,SRE
ユーザ01 AST,user01@example.com,HOGEPIY1,-
ユーザ02 AST,user02@example.com,HOGEPIY2,Developer
...
この結果をMicrosoft 365のExcelへ貼り付け、確認用の列を追加し、共有用のリンクをSlackで各所に展開して棚卸しをお願いすることができました。
今後の展望:ユーザ削除の自動化
今回は仕切り直しの意味も込めて全PagerDutyユーザの棚卸しを行いました。
これは必要な作業ではありますが、今後は削除も自動化していきたいと考えています。
具体的には「Entra ID側のユーザの異動・削除をCIで検知し、PagerDutyのAPI経由でユーザの削除を実施する」仕組みを検討しています。
このような形で削除運用も自動化することで、ライセンスの適正化やセキュリティ向上、定時の棚卸しの労力削減などへの期待があります。
余談:List audit records for a userで最終Audit log時間の取得
上記のPythonスクリプトでやりかけたことにList audit records for a userによる、各ユーザの最終のAuditログの時間取得があります。
ただし、それを実装してしまうとユーザごとにAPIの呼び出しが発生してしまい、今後利用者が増えることでRate limitである 960 requests per minute
に抵触する懸念があったため辞めました。
代わりにユーザのIDを渡すとそのユーザの最終のAuditログの時間を取得する簡易スクリプトを用意し、とくに知りたいユーザについては簡単に調査可能としています。
import os
import requests
import configparser
# 設定ファイルの読み込み
config = configparser.ConfigParser()
config.read('config.ini')
# API keyの取得
api_key = config['API']['SECRET_API_KEY']
user_id = ""
# ユーザのIDからaudit recordの最新の時間を取得
# https://developer.pagerduty.com/api-reference/57cabfee791be-list-audit-records-for-a-user
# より "The returned records are sorted by the execution_time from newest to oldest." とあるため
# 最初の要素のみ取得すれば最新のaudit recordが取得できる
def get_audit_record(user_id):
# ユーザIDが指定されていない場合は処理を終了
if not user_id:
print("ユーザIDが指定されていません。")
else:
print(f"ユーザID: {user_id}")
# PagerDuty APIのエンドポイント
url = f"https://api.pagerduty.com/users/{user_id}/audit/records"
# リクエストヘッダー
headers = {
"Accept": "application/json",
"Authorization": f"Token token={api_key}",
"Content-Type": "application/json"
}
response = requests.get(url, headers=headers)
if response.status_code == 200:
response_json = response.json()
if len(response_json["records"]) == 0:
return "audit recordが見つかりませんでした。"
return response_json["records"][0]["execution_time"]
else:
print(f"エラー: {response.status_code}")
return None
# メイン処理を実行
if __name__ == "__main__":
user_id = input("ユーザIDを入力してください: ")
audit_record = get_audit_record(user_id)
if audit_record:
print(audit_record)
else:
print("エラーが発生しました。")
おわりに
以上が「PagerDutyのユーザ棚卸しをシンプルなPythonとExcelでやりました」の紹介でした。
簡単な運用スクリプトならAI支援でシュッと実現できる大変良い世の中になりました。
一方で「PagerDutyに優れたAPIがある」といった知識や、「APIで簡単にCSVで出力したい」といったアイデアは人間が出す必要があります。
今後も工夫を楽しみながらSREのKAIZENサイクルを回していきたいと考えています。
それではみなさまEnjoy PagerDuty!
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