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HashiCorp Vaultを何となく理解する(8):レプリケーション

2024/12/23に公開

イオン⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠スマートテクノロジーのDevSecOps Div. SREチームの@hikkie13です。

過去の記事に記載がある通り、弊社ではHCP Vaultの導入を進めています。
https://zenn.dev/aeonpeople/articles/6625a900552311
https://zenn.dev/aeonpeople/articles/0b4492898a0fd3

導入には教育・学習が欠かせません。
その過程で得た知識を何回かに分けてまとめていこうと思います。(心が折れない限り)

今回は、Vaultのレプリケーションについてです。

レプリケーションの概要

  • 通常、可用性の観点で、組織は複数のデータセンターにまたいだインフラストラクチャを保持する。
    そのため、アプリケーションアクセスのために、Vaultに高可用性が必要となる。
  • 組織がユースケースやアプリケーションを追加し続けるにつれて、スケールする必要がある。
  • グローバルに強制される共通のポリシーが必要。
  • データセンターに関係なく、アプリケーションが必要とする一貫した秘密情報と構成を提供する。
  • Vault レプリケーションは Vault Enterprise およびHCP Vaultで利用可能。
    • HCP VaultではPerformance Replicationのみ。
  • レプリケーションはリーダーフォロワーモデル(プライマリとセカンダリ)で動作する。
  • プライマリクラスターはシステムの記録として機能し、ほとんどの Vault データを非同期でレプリケートする。
  • プライマリとセカンダリ間のすべての通信は、相互認証された TLS セッションでエンドツーエンドで暗号化される。

レプリケーションの全体イメージ


https://developer.hashicorp.com/vault/docs/enterprise/replication#replicated-data より

  • Vaultのレプリケーションの基本単位は「クラスター」であり、Vaultノード(アクティブノードと対応するHAノード)によって構成される。複数のVaultクラスターは、1対多のほぼリアルタイムな通信を行う。
  • レプリケーションはリーダー/フォロワーモデルで動作する。リーダークラスター(プライマリ)が一連のフォロワークラスター(セカンダリ)とリンクされる。プライマリクラスターは記録の基盤として機能し、ほとんどのVaultデータを非同期的にレプリケートする。
  • プライマリとセカンダリ間のすべての通信は、相互認証されたTLSセッションを使用してエンドツーエンドで暗号化される。
  • レプリケートされるデータについて、プライマリクラスターとセカンダリクラスター間でどのデータがレプリケートされるかは、プライマリとセカンダリ間で設定されたレプリケーションの種類による。レプリケーションの種類については後述する。

2種類のレプリケーション

Vaultのレプリケーションには、Performance ReplicationとDisaster Recovery Replicationがある。

Performance Replication

  • 基本的な構成、ポリシー、およびその他のデータをレプリケートする。
  • クライアントリクエストからの読み取りを処理する能力を持つ。
  • クライアントは、パフォーマンスレプリケートクラスターに個別に認証する。
  • トークンやリースをパフォーマンスセカンダリにレプリケートしない。

Disaster Recovery Replication

  • 基本的な構成、ポリシー、およびその他すべてのデータをレプリケートする。
  • クライアントリクエストからの読み取りを処理できない。
  • クライアントはプライマリクラスター(またはパフォーマンスクラスター)にのみ認証する必要がある。
  • プライマリクラスターで作成されたトークンとリースをレプリケートする。

違い


https://developer.hashicorp.com/validated-designs/vault-operating-guides-adoption/disaster-recovery-setup より

表にまとめると以下となる。

機能 Disaster Recovery Replication Performance Replication
プライマリクラスターの設定をミラーリングする はい はい
プライマリクラスターのバックエンド(認証方式、シークレットエンジン、監査デバイスなど)の設定をミラーリングする はい はい
プライマリクラスターとやり取りするアプリケーションおよびユーザーのトークンとリースをミラーリングする はい いいえ。セカンダリは自身のトークンとリースを管理する。セカンダリが昇格されると、アプリケーションは再認証し、新しいプライマリから新しいリースを取得する必要がある。
セカンダリクラスターがクライアントリクエストを処理できる いいえ はい

Path Filters

Path Filtersを使用することで、特定のシークレットエンジンや名前空間を「許可リスト」または「拒否リスト」に設定し、データセンター間でのレプリケーションを制御できる。
利用シーンの例としては、プライマリクラスターがEU地域内にあり、セカンダリクラスターがEU地域外に存在する場合である。GDPRは、EU以外の地域や国に対して、EUと同等の厳格なデータ保護規制が適用されていない限り、個人を特定できるデータを物理的に転送することを禁止している。
GDPRに準拠するためには、VaultのPath Filters機能を活用し、データ移動や主権に関する規制を守りつつ、地理的に分散した地域間でのパフォーマンスアクセスを確保する必要がある。

詳細として、以下も参照
https://youtu.be/NYnuPCH57xc?si=6eSzDehSmUFxxFyX&t=289

上記webinarの例において、以下を補足として記載する。

  • Performance Primary
    • プライマリクラスターは「shared_secret」を持ち、データの書き込みや管理を中心的に行う。
    • 書き込みリクエストはプライマリに転送される。
  • Performance Secondary
    • セカンダリクラスターは「shared_secret」をプライマリからレプリケーションによって受け取る。
    • セカンダリ独自の「local_secret」も保持している。
    • 読み取りリクエストはセカンダリクラスターで処理可能。
    • セカンダリは、ユーザーからの「読み取りリクエスト」に応じる役割を果たす。
  • 動作の流れ
    • レプリケーション: プライマリクラスターの「shared_secret」はセカンダリクラスターにレプリケーションされる。
    • 書き込み転送: 書き込みリクエストはセカンダリからプライマリに転送される。
    • 読み取りリクエスト: 読み取りリクエストはセカンダリクラスターで直接処理される。

以上のように、Path Filtersにより、どのシークレットエンジンや名前空間がレプリケーション対象になるかを制御できる。この機能により、不要なデータの複製を防ぎ、効率的なデータ管理が可能となる。

レプリケーションの各手順について

各公式ドキュメントを参照。
さらに詳細はHashiCorp社のSEが既に神記事を作成されているため、こちらも参考にすると良い。
https://zenn.dev/i10chu/articles/3c5289f9fde038

Disaster Recovery Replicationのセットアップ

https://developer.hashicorp.com/vault/tutorials/enterprise/disaster-recovery

Disaster Recovery ReplicationのFO/FB

https://developer.hashicorp.com/vault/tutorials/enterprise/disaster-recovery-replication-failover

Performance Replicationのセットアップ

https://developer.hashicorp.com/vault/tutorials/enterprise/performance-replication

参考

https://developer.hashicorp.com/vault/docs/enterprise/replication
https://developer.hashicorp.com/validated-designs/vault-operating-guides-adoption/disaster-recovery-setup
https://developer.hashicorp.com/vault/tutorials/enterprise/disaster-recovery-replication-failover

https://youtu.be/NYnuPCH57xc?si=6eSzDehSmUFxxFyX

https://developer.hashicorp.com/vault/docs
https://youtube.com/playlist?list=PLFkEchqXDZx7CuMTbxnlGVflB7UKwf_N3&si=uJE2c_GhjxQ4FmMA
HashiCorp Certified: Vault Associate 2024 (w/ Hands-On Labs)
HashiCorp Certified: Vault Operations Professional

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