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Raspberry Pi 5 と XY-PDS100

2024/03/30に公開

XY-PDS100 本体

XY-PDS100 という AliExpress で購入可能な、USB 充電器になる降圧スイッチング DC-DC コンバーターが存在するのですが、なんとこのデバイスは 5 V ⎓ 5 A の Fixed Supply PDO を持っています。

XY-PDS100 の PDOs

入力として USB Power Delivery 対応充電器か、汎用 AC アダプター (12 - 28 V) のいずれかが利用できます。前者の場合、接続した PD 充電器とのネゴシエーション時に、利用可能なもっとも高い電圧が選択されます。

XY-PDS100 の入力ポート

元々、私はこのデバイスを 24 V の直流配電システムから、効率よくスマートフォンやタブレットへ電力を供給するために、個人的に調査して用意し使用していたのですが、まさか Raspberry Pi で活用できるとは思っていませんでした。

このデバイスが Raspberry Pi 5 で実際に利用可能か調査したので報告いたします。結果だけ述べると「利用可能」です。 電源に関する警告も出ずラズパイ 5 を最大パフォーマンスで動作させられます。

DC-DC コンバーターは PSE の対象外ですので日本国内での販売または利用に際して問題はありません。なお、5 V ⎓ 5 A での動作には e-Marker を搭載した 5 A (100 W) 対応の Type-C ケーブルが最低 1 本必要です。

調査条件

以下の機材を用意しました。

検証環境

  • XY-PDS100 x1
  • Raspberry Pi 5 / 8 GB x1
    • アクティブクーラーと RTC バッテリー付
  • USB - UART コンバーター: DSD TECH SH-U09F (FTDI RT232RL) x1
    • JST SH 3-pin to ジャンパーコネクター変換ケーブル経由
  • USB Power Delivery 対応充電器: Anker PowerPort III 65 W Pod x1
    • 20 V ⎓ 3.25 A, 65 W Max.
  • USB Type-C ケーブル x2
    • e-Marker 非搭載 (3 A, 60 W): Anker PowerLine III USB-C & USB-C (90 cm) x1
    • e-Marker 搭載 (5 A, 100 W): エレコム USB3-CC5P05NBK (50 cm) x1
  • PD 用プロトコルアナライザー/トリガーデバイス/USB パワーメーター x2
    • YK-LAB SHIZUKU (CT-3)
    • YK-LAB YK003 (C-3)
    • Kotomi (CT-2)
  • 電子負荷: DLB600W (600 W Max.)
  • デジタルマルチメーター: OWON XDM3051

Raspberry Pi 5 の EEPROM は初期設定のままで、一切変更していません。

Anker PowerPort III 65 W Pod と XY-PDS100 は e-Marker 非搭載タイプ (3 A, 60 W 対応) の Type-C ケーブルで接続しました。電源を入れると 20 V ⎓ 3 A でネゴシエーションされ利用可能になります。

XY-PDS100 と Anker PowerPort III 65 W Pod 間のネゴシエーションの様子

ラズパイと XY-PDS100 は e-Marker 搭載タイプの Type-C ケーブルで接続します。

試験

Raspberry Pi 5 と XY-PDS100 を繋ぐ前に、トリガーデバイスで 5 V ⎓ 5 A をトリガーして、電子負荷にて実際に 5 A 引けるか確認します。結果としては、安定して 25 W まで消費できました。

電子負荷で 5 A を引いている時の CT-3 の画面

入力側の消費電力はおよそ 30 W なので、XY-PDS100 の変換効率は約 82 % です。

XY-PDS100 が 5 A を出力している時の充電器側の電力状態 (C-3 の画面)

次に、実際にラズパイと XY-PDS100 を接続して電源を入れてみました。最初に 3 A の PDO を含む Source_Capabilities メッセージを通知した後、2 回ほど Hard Reset が発生しますが、これは XY-PDS100 の仕様なようです。(この Hard Reset は最初のネゴシエーション時にのみ発生するようで、2 回目以降は 100 W 対応ケーブルを接続している限り発生しません。) Hard Reset 後に 5 A の PDO を含む Source_Capabilities メッセージが通知されます。ラズパイ側の実装はこの挙動に対応しているようで、最終的に問題なく 5 V ⎓ 5 A でネゴシエーションされ、正常に起動しました。

XY-PDS100 と Raspberry Pi 5 間のネゴシエーションの様子

ブートメッセージ

電源が入っているデバイス達の様子

ブート完了後、GPIO の +5V - GND 間の電圧を測定すると 4.9833 V でした。この状態での消費電力はプロトコルアナライザー読みで 3.06 W (5.051 V, 0.606 A) です。

s-tui で stress を実行した状態で、ラズパイの USB ポートから 1.5 A を引いてみましたが、正常に動作し続けました。この状態で GPIO の +5V 電圧を測定すると 4.6528 V でした。消費電力は 11.58 W (4.949 V, 2.341 A) です。

考察

結果的に問題ありませんでした。これにより正攻法 (EEPROM の値をいじらずに) かつ合法的に日本国内でラズパイ 5 のパフォーマンスを最大限発揮できます。

XY-PDS100 の変換効率は 80 % 程度ですので、15 V ⎓ 2.33 A (30 W) 以上の定格出力がある PD 充電器が必要です。ない場合は対応 PD 充電器か、外径 5.5 mm, 内径 2.1 mm の DC プラグを持つ 12 V ⎓ 3 A 以上の容量がある汎用 AC アダプターを用意する必要があります。どちらも簡単に入手可能です。余っていれば流用できます。

また、USB PD で 5 A の電流に対応するには e-Marker を搭載した Type-C ケーブルが必要です。「100 W 対応」と謳われているケーブルであれば、極端に安いものでない限り問題ないはずです。5 V を引き回す区間なので、導体抵抗をできるだけ低く保つべきです。従って 1 m 程度の短いケーブルを選びましょう。

コンセントから遠い場合は XY-PDS100 の入力側を長くするのをおすすめします。入力電圧は低くても 12 V なので、ある程度電圧降下が生じてもそこまで問題ではありません。なお、入力側は 5 A 必須ではないので e-Marker 非搭載の安いケーブルでも大丈夫です。実際出力側と比較して流れる電流も少ないので導体抵抗が少し高くてもそんなに発熱しないはずです。

上記の機器を全部用意すると結構な値段になってしまうので、USB PD デバイスをたくさん余らせている人向けです。「その手」の人であればわりと余っているのでは ?

XY-PDS100 自体の信頼性なのですが、ラップトップを 1 年半ほど常時稼働させていて特に問題が起こることはありませんでした。電子負荷で 100 W の負荷をかけて 3 時間くらい放置したこともありますが、その際も特に問題は起きなかったので、わりと丈夫だと思います。(7 台買って 1 台だけ不良品を掴まされたことはあります…。)

入手方法

さて、肝心の XY-PDS100 自体の入手先ですが、AliExpress で 2,000 円程度から入手できます。複数のショップで販売されていますが、私は下記のショップから入手しました。

aliexpress.com/item/4001104361776.html

Amazon.co.jp でも入手できますが、中国からの発送ですので配達所要時間は AliExpress で購入した場合とあまり変わりません。

amazon.co.jp/dp/B08PC47JGT

最後に

ウェブで同じことをしている人が居ないか調べたのですが、見つけられませんでした。もしかしたら私が初めてかもしれません。他に検証できる方が居ればみんなの役に立つと思います。

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