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デザインの意図を伝える『言語化力』を鍛える方法

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「なんとなくいい感じで作りました。」
デザイナーが一番言いたくないセリフではないでしょうか。

UI/UXデザイナーとして仕事をしていると、デザインの"見た目"だけでなく、"なぜそうしたのか"を説明する場面がたくさんあります。
例えば、デザインレビューで「なぜこの並び順なのか?」「なぜこの色なのか?」と聞かれたとき。

このときに役立つのが『言語化力』です。
ただ綺麗にまとめることではなく、自分のデザインに"なぜ"を問い、相手の視点に合わせてその意図を伝える力。

『言語化力』は感覚やセンスではなく、ちゃんと鍛えられます。
今回は、日々意識している「デザインの意図を伝える力=言語化力」の鍛え方についてご紹介します。

はじめに:なぜ『言語化力』が必要なのか?

「なんとなく良い」で済まない現場

UI/UXの仕事では、単に「見た目が綺麗」や「かっこいい」だけでは成果とされません。
なぜならデザインには目的があり、ユーザーやビジネスに対して何かしらの効果をもたらすことが求められるからです。

「このボタンは赤くして目立たせた」→なぜ目立たせる必要があるのか?
「ここの導線をわかりやすくした」→どのユーザーにとって、どんな場面でわかりやすいのか?

"デザインの意図"が曖昧だと、サービスやプロダクトの判断がブレる・説得できない・改善サイクルがまわらないといった事態に繋がります。

つまり、「なんとなく良さそう」なものは、意思決定の場では無力なのです。

UI/UXデザイナーにとっての「言語」とは何か?

ここで言う「言語」とは、単なる文章や言葉ではなく自分の思考・意図・選択の理由を、他者に伝えるための手段です。
この「言語」は2つの役割を果たします。

① 説明責任のための言語(=ロジックと言葉で根拠を示す)

  • なぜこのUIを採用したのか?
  • どんなユーザーの課題を想定した設計なのか?
  • 他にどんな案があって、それを選ばなかった理由は?

これらの説明ができることで「ただの感覚的なデザイン」ではなく、「根拠のある選択」として信頼を得られるようになります。

② 共創のための言語(=職種を超えた橋渡し)
我々デザイナーは、PMやエンジニア、QA、さらには広報などさまざまな職種の人と協働します。そのとき、ビジュアルだけで意図を汲み取ってもらうのは難しいです。

  • エンジニアには仕様としての解釈が必要
  • QAには「どこが意図された動きなのか」を明示する必要がある
  • 広報にはブランドイメージを守るために掲載する媒体や方法を明示する必要がある

こうした「共通理解」をつくるには、相手の視点に合わせて"わかる言葉で話すこと"が求められます。

要するに、

  • 「なんとなく」は、プロの現場では通用しない
  • デザイナーの"意図"を見える化するには、『言語化』が必要
  • 言語は、他職種とつながるためのツールでもある

これらの理由から、デザイナーにとって『言語化力』は切っても切り離せないスキルなのです。
(デザイナーに限らず、仕事をする上でどんな職種の人にも当てはまることなのかもしれません。)

デザインの意図を伝える『言語化力』を鍛える方法

1. 自分のデザインに「なぜ?」を3回問う

「このボタンを青にしたのはなぜ?」
「ユーザーの注目を集めたいから」
「なぜ注目を集める必要があるのか?」
「それが主なアクションで、コンバージョンに直結するから」

というように、"なぜ"を最低でも3回掘ることでデザインに対する自分の理解が深まります。これはデザインに迷ったときや、レビュー前の準備としてもおすすめです。

2. デザインレビューで「代案」を持っておく

「この配置にします」ではなく、「A案はユーザーの視線誘導を重視、B案は操作効率を優先しています。今回はA案のほうが目的に沿っているので、A案を採用します。」といった伝え方ができると、ただの"好き嫌い"や個人の感覚ではなく、"根拠ある選択の理由"がちゃんと伝えられます。
言語化力は選択肢の比較と、その根拠の明示によっても鍛えられていきます。

3. デザインレビューを習慣付ける(擬似でもOK)

デザインギャラリーサイトやPinterestなどを見て、「この余白が広い理由は?」「この配色の意図は?」と、勝手にレビューしてみるのも良い練習になります。電車内の広告や、飲食店のメニューのデザインなど日常で目に入るありとあらゆるものを見てデザインの意図を想像したり、もっとこうしたら良いのになど、気付いたら無意識に考えている現象に陥れば立派な職業病です。
最初は正解なんてわかりません。でも、仮説を立てることで意図を読み取る感度が上がり、自分のアウトプットにも反映されます。

4. 感性とロジックを分けて整理する

「なんとなく良い」は、確かに大事。見た瞬間に人の心を掴み、感情を揺さぶるデザインも存在します。
『言語化力』がああだこうだ言っても人の決断は感性や感情によるものが大半を占めていると思います。
でも、その裏にある設計意図まで言葉にできると強いのです。

例えば、
「余白を広くして気持ちよく見せた」(感性寄りな説明)
「グルーピングできる情報なので、それを視覚的にもわかりやすくするために余白を設けた」(ロジカル寄りな説明)
この両方を持っていると、デザインに対する説得力が一気に増します。
状況によって説明を使い分けられるともうプロです。

5. 書く習慣をつける(ブログ、社内ドキュメント、Figmaコメント、チャットコミュニケーション etc...)

最終的に、言語化力は「自分の言葉で伝えた経験(=アウトプット)」の積み重ねだと思います。
社内ドキュメントでも、Slackでメッセージを送るのでも、Figmaのコメントでも、なんでも良いと思います。とにかく書いて伝える。相手の状況を想像して何をどの順番でどう伝えれば伝わりやすいか。
これを意識しているかしていないかで大きな差があると思います。この意識と取り組みが地味に効いてくるのではないでしょうか。

おわりに:言語化は"センス"ではなく"習慣"

デザインの意図を伝える力は、もともとのセンスではありません。
「考えたことを、相手に伝わるように整理する」練習を続ければ、誰でも身につけられると思います。

そして『言語化力』があると、

  • デザインの質が上がる
  • チームとの意思疎通が滑らかになる
  • 説得力のある提案ができる

など、さまざまなメリットがどんどんついてきます。

頑張って作ったものでも、伝える場面になると言葉にできず伝わらない。
伝えられない自分のデザイナーとしてのスキルを疑い、自信を無くす。
慣れない間はもどかしい経験を何度もすると思います。

何よりも重要なのは 『言語化することを諦めない』 ことです。
「伝わらない」と感じた時こそが、成長のチャンスです。
言語化は思考を形にし、人の心を動かすための強力な武器になります。
その武器を身に着けることができると、よりたくさんの人に良いデザインを届けられると思います!

株式会社アクトビ

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