🦁

RAGの未来はKAGかも?

に公開

検索拡張生成(RAG)とは何か?

RAGは検索ベースと生成モデルベースの利点を融合したフレームワークです。知識ベースから関連する外部情報(通常はドキュメントや段落)を検索し、これらの情報に基づいて、ユーザーのクエリに対してより正確で文脈が豊かな回答を生成します。

RAGの動作原理

検索: ユーザーのクエリは検索システムによって処理され、このシステムは外部知識ソース(例えばウィキペディア、企業データベース、または他の大規模な文書コーパス)から関連するドキュメントや段落を取得します。

生成: 検索された段落はコンテキストとして、ChatGPT、Cluade、Deepseekなどの生成モデルに入力されます。モデルはこれらの情報を総合的に処理し、関連する回答を生成します。

RAGの主要コンポーネント

検索器: このコンポーネントはユーザーのクエリを利用して、知識ベースから関連情報を検索する役割を担います。BERT、Dense Retrieverなどのモデルのベクトル検索メカニズム、または他の埋め込みベースのシステムを活用して実現できます。

生成器: 情報検索が完了すると、生成モデル(例えばChatGPT、Cluade、Deepseek)に送信されます。生成モデルは検索されたコンテキストに基づいて、一貫性があり関連性の高い出力コンテンツを生成します。

RAGの利点

動的知識アクセス: 固定トレーニングデータのみに依存するモデルとは異なり、RAGシステムは動的な知識ベースにアクセスできます。これにより、最近のイベント、ニッチなトピック、またはトレーニングセットでカバーされていない特定のドキュメントに関する質問に回答できます。

より良いコンテキスト回答: 関連ドキュメントを検索してコンテキストとして使用することで、RAGが生成する回答はコンテキストをより良く組み込み、より豊富な情報を含むことができます。

効率的な知識統合: RAGはモデルが特定のクエリコンテキストの理解に集中できるようにし、すべての知識を単一のモデルにエンコードする必要がありません。

RAGの欠点

複雑性: 検索と生成のコンポーネントが協調して動作する必要があり、モデルのトレーニング、推論時間、リソース消費などの面で複雑さが増します。

検索品質への依存性: 回答の品質は大部分が検索ステップの品質に依存します。検索システムが関連情報を取得できなければ、生成される応答の品質も影響を受けます。

知識拡張生成(KAG)とは何か?

KAGは構造化された知識グラフや外部知識ベースをモデルアーキテクチャに直接融合することで、言語モデルの生成能力を向上させるもう一つのハイブリッドアプローチです。非構造化データ(ドキュメントやテキスト)を検索するRAGとは異なり、KAGは構造化知識の統合に焦点を当て、生成品質を向上させます。

KAGの動作原理

知識統合: 知識ベース(Freebase、Wikidataなどの知識グラフ、または特定ドメインのカスタムグラフ)を活用して、エンティティ、関係、事実に関する構造化情報を提供します。

拡張生成: 構造化データは通常、特殊なタグ、埋め込み、またはプロンプトエンジニアリングなどの方法でモデルの生成プロセスに直接統合されます。これによりモデルはエンティティ間の事実と関係をより良く理解し、より正確な回答を生成できます。

KAGの主要コンポーネント

知識グラフ: これは知識の構造化された表現形式で、通常はトリプル(主語-述語-目的語)として表され、エンティティとその関係に関連する事実をカプセル化しています。

グラフベースの統合: モデルはグラフデータを埋め込むか、またはグラフを使用して生成プロセスを調整することで、知識グラフを生成プロセスに統合します。

生成モデル: RAGと同様に、生成モデル(GPTやT5など)は入力クエリと統合された知識に基づいて、最終的な出力を生成する役割を担います。

KAGの利点

構造化知識: KAGシステムは構造化知識の処理に優れており、高度に真実で正確な回答を生成できます。特に既知のエンティティや明確に定義された事実に関連するタスクに適しています。

事実ベースの質問の精度向上: 知識グラフを直接活用することで、KAGは特定の事実知識を必要とする質問に対して優れた性能を発揮します。例えば「テスラのCEOは誰ですか?」や「シーザーサラダの主な成分は何ですか?」などです。

一貫性: 情報が構造化グラフに由来するため、KAGは生成された回答の一貫性を確保でき、教師なしトレーニングによるエラーが発生しにくくなります。

KAGの欠点

利用可能な知識に制限: KAGは本質的にグラフにエンコードされた知識に制限されます。知識グラフが不完全または古い場合、モデルが関連する回答を生成する能力は制約を受けます。

拡張の課題: 知識グラフを拡張して広範な領域や大量のデータをカバーすることは困難な作業です。さらに、それを生成モデルに効果的に統合するには、複雑なアーキテクチャと知識表現技術が必要です。

知識グラフの品質への依存性: KAGの成功は大部分が知識グラフの品質と範囲に依存します。不正確または不完全な知識グラフは、誤った回答やバイアスのある回答を引き起こす可能性があります。

RAGとKAG:主な違い

特徴 RAG(検索拡張生成) KAG(知識拡張生成)
使用するデータタイプ 非構造化データ(例:ドキュメント、段落) 構造化データ(例:知識グラフ、事実)
知識ソース ドキュメントやコーパスの外部検索 構造化された知識グラフまたはデータベース
検索方法 大規模ドキュメントセットからの動的検索 生成プロセスに構造化知識を直接統合
利用事例の適合性 オープンドメイン質問応答、事実ベースの生成、大規模コーパスからの検索 事実ベースの質問、知識グラフベースのタスク
生成の依存関係 検索システムの品質に依存 知識グラフの品質と完全性に依存
複雑さ 検索ステップにより複雑 統合はより簡単だが、グラフ構築が複雑な場合もある
正確性 検索品質によって正確性が異なる場合がある 知識グラフが包括的な場合、正確性が高い
使用例 チャットボット、オープンドメイン質問応答、文書要約 特定ドメインの知識質問、推薦システム

いつRAGとKAGを使用するか?

RAGの使用例

オープンドメイン質問応答: システムがトレーニング中に遭遇していない可能性のある質問に回答する必要がある場合、RAGは優れた性能を発揮します。例えば、「AIの最新の進歩は何ですか?」といった質問に対して、システムは最近の記事や論文を検索し、詳細な回答を生成できます。

文書要約: 大量の文書を要約する際、RAGは最も関連性の高い部分を検索し、それらを簡潔な要約に合成することができます。

情報合成: 複数のソースから情報を合成する必要がある場合、または回答が異なる文書の事実に関連している場合、RAGは非常に効果的です。

KAGの使用例

事実ベースの質問応答: モデルが構造化データに基づいて真実で正確な回答を生成することを望む場合、KAGは良い選択です。例えば、「アップルのCEOは誰ですか?」や「日本の首都は何ですか?」といった事実に基づく回答が必要な質問。

知識駆動型アプリケーション: KAGは、特定の属性に基づく製品推奨や、科学、技術分野の質問への回答など、構造化データと直接対話する必要があるアプリケーションシナリオに非常に適しています。

エンティティ認識と関係抽出: エンティティ間の関係を理解することが重要なタスクでは、KAGが優れた性能を発揮します。例えば、「エッフェル塔とパリはどのような関係ですか?」

結論

RAGとKAGはどちらも生成モデルの能力を強化する最先端の方法ですが、それぞれ異なるタイプのタスクに適しています。RAGはオープンドメインタスクで優れた性能を発揮し、動的な非構造化データを処理できます。一方、KAGは知識グラフから事実に基づいた構造化情報を取得する必要があるシナリオでより優れています。

RAGとKAGのどちらを選択するかは、主に処理するデータのタイプと特定のタスク要件によって決まります。大量の文書に基づいて検索と回答生成を行う必要がある一般的なアプリケーションには、通常RAGがより良い選択です。一方、構造化知識から一貫性のある事実に基づいた応答を得る必要があるタスクには、KAGがより信頼性の高いソリューションを提供します。

論文

https://arxiv.org/abs/2409.13731

Acrosstudioテックブログ

Discussion