2025年話題のDeep Researchを試してみて - AI時代に大切なのは「観点・視座」
2025年に入り、Deep Research系のAIサービスが次々とリリースされ、誰でも短時間で深い調査ができるようになってきました。
最近、ようやく私も実際に試してみましたが、使ってみて興味深い気づきがありました。
例えば、「トランプ大統領の貿易政策が国際関係に与える影響は?」という観点で調査したい場合、Deep Researchで情報を収集し、NotebookLMで音声化(英語)したあとちょっと工夫すれば、詳細な分析結果を以下のような日本語音声でサクッと把握することができます。
音声例[トランプ政権の関税政策:2025年の影響と展望]
こんなふうに驚くほど簡単に情報収集ができるようになった一方で、面白いことに気づきました。
AIツールが普及すればするほど、実は人間の「観点・視座」(ものごとを見る視点)って、むしろ大事になってくるんじゃないかなと。
というわけで、今回は私が実際にDeep Researchを使ってみた内容をシェアしていきます。
参考になれば幸いです。
Deep Research系サービス比較
2025年に入り、主要なAI企業からDeep Research系のサービスが続々とリリースされています。主なサービスを比較してみましょう。
※2025年2月17日時点の情報です。
企業 | サービス名 | 無料利用可否 | 有料プラン時の利用条件 |
---|---|---|---|
OpenAI | ChatGPT Deep Research | ⭕ 可(近日中に無料プランで利用可能) | 月額$200のProプラン加入が必要。1日500回利用可能 |
Perplexity | Deep Research | ⭕ 可(1日5回まで) | Proプラン(月額$20)で1日500回まで利用可能 |
Gemini 1.5 Pro with Deep Research | ❌ 不可(有料プランのみ) | Gemini Advanced(月額2,900円)加入が必要 | |
Felo | DeepSeek R1 | ⭕ 可(1日5回まで) | Proプランでの利用が可能。無料ユーザーも利用可能 |
利用回数の制限はありますが、FeloやPerplexityでは無料ユーザでも利用することができます。
「観点(視座)」の重要性
Deep Researchの登場により、誰でも短時間で深い分析が可能になりました。
しかし、これは裏を返せば「同じツールを使えば、誰でも似たような調査結果にたどり着ける」ということでもあります。そこで重要になってくるのが「観点(視座)」です。
同じツールを使っても、どんな切り口で分析するかによって、得られる洞察は大きく変わってきます。
Deep Researchを使ってリサーチしてみよう
私が実際に試してみた手順を紹介します。
アウトプットは、テキストと音声の両方を組み合わせて情報整理する方法を試してみましたので、参考にしてみてください。
Step 1: AIサービスを使った情報リサーチ
今回は、無料で利用できるFELOのDeepSeek R1を使用します。
最近追加されたDeepSeek R1は、ユーザーの問題を深く掘り下げ、情報の研究と掘り起こしに特化した機能です。
2025/2/16にFELOの公式アナウンスでも紹介されています。
FELOにアクセスして、モデル一覧から「DeepSeek R1」を選択して調査依頼をしましょう。
重要ポイント:「観点(視座)」を意識した質問
何も意識せず漫然と質問する場合と、観点・視座を意識した場合の質問例です。
❌ 漠然とした質問例:
現在は2025年2月15日です。
トランプ大統領について調査した結果をまとめて。
具体的な観点を含む質問例1:
現在は2025年2月15日です。
トランプ大統領の関税政策が、主要貿易相手国との交渉を通じて国際経済秩序や貿易ルールの再編成に
どのような戦略的影響を与えているのか、英語で詳細に調査し、その結果を日本語のレポート
にまとめてください。
具体的な観点を含む質問例2:
現在は2025年2月15日です。
トランプ大統領の外交姿勢(「アメリカ第一主義」や多国間協力の再定義)が、戦後80年
を迎える国際秩序の持続可能性にどのような構造的影響を与え、国際機関(国連・NATO・
WTOなど)の権威や「ルールに基づく秩序」が将来的にどのような転換を遂げる可能性が
あるのか、19世紀の勢力均衡システムや戦間期の国際連盟の衰退と比較しながら英語で
調査し、日本語でレポートにまとめてください。
今回は、以下のような質問例で試してみました。
2025年1月20日にトランプ大統領が就任しました。
現在は2025年2月15日です。
これまでのトランプ大統領の実績、重要視している政策、今後の動向について、
「関税が主要貿易相手国との摩擦や交渉にどう影響しているか?」という
観点で英語で詳細に調査した結果を日本語のレポートとしてまとめて。
以下の様に調査結果が表示されたら、画面下の「回答をコピー」→「テキスト形式」でコピーしておきます。
FELO(DeepSeekR1)の調査結果例
トランプ政権の関税政策は2025年1月の就任直後から主要貿易相手国との緊張を引き起こし、国際交渉の行方に大きな影響を与えています。最新の政策動向とその影響を分析します。
### 主要関税措置の概要
- **中国向け10%追加関税**:バイデン政権下の関税を継承しつつ、半導体やEV部品など戦略物資に新規課税を実施[2][14]。
- **カナダ・メキシコ向け25%関税**:移民対策と薬物流入防止を名目に、自動車部品や農産物を対象に発動[19][24]。
- **相互関税制度導入**:他国が米国製品に課す関税率と同水準の税率を自動適用する枠組みを検討中[27][31]。
### 貿易摩擦の具体例
- **北米自由貿易圏の亀裂**:USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の再交渉要求が停滞し、自動車部品のサプライチェーンに混乱が生じている[25][30]。
- **中国との対立先鋭化**:半導体製造装置の輸出規制強化に対し、中国がレアアース輸出制限で対抗する構えを見せ[5][17]。
- **欧州連合(EU)の反発**:鉄鋼アルミニウム関税再導入の動きに対し、EUがWTO提訴を検討[34][36]。
### 経済への影響分析
- **国内企業のコスト増**:輸入部品依存の製造業で生産コストが平均12%上昇[13][22]。
- **インフレ圧力**:消費者物価指数(CPI)が前月比0.8%上昇(2025年1月速報値)[36]。
- **農産物輸出の減少**:大豆対中輸出量が前年同期比75%減となるなど、農業州の反発が拡大[29]。
### 今後の交渉展望
- **カナダ・メキシコとの協議**:3月を目処に移民対策と関税軽減のパッケージ合意を模索[24][30]。
- **中国との第2段階交渉**:知的財産保護とサイバーセキュリティを主要議題に4月開始予定[5][20]。
- **G7サミット(6月)**:主要国首脳が「関税戦争の波及防止」で共同声明発表を準備[17][34]。
### 懸念と期待
- **サプライチェーン再編リスク**:アジア諸国からメキシコへの生産移転が加速する可能性[30][35]。
- **新興国市場の開拓**:インド・東南アジア諸国とのFTA交渉が活発化する見込み[25][42]。
- **国内政治の影響**:農業州共和党議員から関税緩和を求める声が増加[33][15]。
この関税攻勢は短期的な国内産業保護を掲げつつ、長期的な貿易秩序の再構築を目指す戦略と分析されています。今後の国際交渉の進展次第では、2025年後半にかけて政策修正が行われる可能性も指摘されています[28][36]。
[1] https://www.hklaw.com/en/general-pages/trumps-2025-executive-orders-updates-and-summaries
[2] https://www.hklaw.com/en/insights/publications/2025/01/an-overview-of-president-trumps-trade-policy-to-date
[3] https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/2025/01/president-trumps-america-first-priorities/
[4] https://www.cbsnews.com/news/trump-return-to-office-opinion-poll-2025-01-19/
[5] https://business.columbia.edu/insights/trump-trade-policies-tariffs-mexico-canada-columbia-business
[6] https://www.npr.org/2025/01/28/nx-s1-5276293/trump-executive-orders
[7] https://www.klgates.com/Trump-20-Executive-Orders-Shock-and-Awe-1-30-2025
[8] https://frostbrowntodd.com/trump-tariffs-impact-analysis-mitigation-strategies/
[9] https://www.brookings.edu/articles/tracking-regulatory-changes-in-the-second-trump-administration/
[10] https://ogletree.com/insights-resources/blog-posts/the-opening-act-significant-developments-in-trumps-first-two-weeks/
[11] https://www.claconnect.com/en/resources/articles/25/the-impact-of-trumps-tariffs-a-comprehensive-analysis
[12] https://www.kff.org/global-health-policy/fact-sheet/overview-of-president-trumps-executive-actions-on-global-health/
[13] https://tax.thomsonreuters.com/blog/decoding-president-trumps-tariffs/
[14] https://www.hklaw.com/en/general-pages/trumps-2025-executive-orders-chart
[15] https://www.pewresearch.org/politics/2025/02/07/public-anticipates-changes-with-trump-but-is-split-over-whether-they-will-be-good-or-bad/
[16] https://ne.usembassy.gov/president-trumps-america-first-priorities/
[17] https://www.ox.ac.uk/news/2025-02-05-expert-comment-what-might-president-trump-s-second-term-mean-world
[18] https://www.bbc.com/news/articles/ced961egp65o
[19] https://www.whitehouse.gov/fact-sheets/2025/02/fact-sheet-president-donald-j-trump-imposes-tariffs-on-imports-from-canada-mexico-and-china/
[20] https://www.csis.org/analysis/trump-trade-20
[21] https://www.goldmansachs.com/insights/articles/how-tariffs-are-forecast-to-affect-us-stocks
[22] https://taxfoundation.org/research/all/federal/trump-tariffs-trade-war/
[23] https://time.com/7209901/donald-trump-executive-actions-project-2025/
[24] https://www.pbs.org/newshour/economy/analysis-the-potential-economic-effects-of-trumps-tariffs-and-trade-war-in-9-charts
[25] https://www.bhfs.com/insights/alerts-articles/2025/a-first-look-at-the-second-trump-administration-s-national-security-and-foreign-policy
[26] https://www.reuters.com/world/us/what-trump-has-done-since-returning-white-house-2025-01-22/
[27] https://www.atlanticcouncil.org/blogs/new-atlanticist/experts-react-what-does-trumps-reciprocal-tariff-announcement-mean-for-global-trade/
[28] https://news.darden.virginia.edu/2025/02/04/qa-what-are-tariffs-and-how-will-they-affect-us/
[29] https://www.closeup.org/tariffs-and-trade-the-potential-impact-on-the-economy/
[30] https://www.brookings.edu/articles/trumps-25-tariffs-on-canada-and-mexico-will-be-a-blow-to-all-3-economies/
[31] https://apnews.com/article/trump-tariffs-reciprocal-imports-tax-trade-economy-54c0a26687dc96157d96229068894720
[32] https://www.davispolk.com/insights/client-update/what-expect-second-trump-presidency-2025-and-beyond
[33] https://www.pewresearch.org/politics/2025/02/07/trumps-second-term-early-ratings-and-expectations/
[34] https://www.weforum.org/stories/2025/01/davos-2025-us-president-trump-takes-office/
[35] https://www.bhfs.com/insights/alerts-articles/2025/trump-and-the-states-what-to-expect
[36] https://www.atlanticcouncil.org/blogs/econographics/us-economic-outlook-2025-its-the-productivity-stupid/
[37] https://19thnews.org/2024/11/trump-policy-second-presidency/
[38] https://www.nytimes.com/interactive/2025/us/trump-agenda-2025.html
[39] https://www.reuters.com/world/us/with-blitz-policies-trump-goes-beyond-project-2025s-goals-2025-02-14/
[40] https://www.gibsondunn.com/regulatory-reform-in-the-trump-administration/
[41] https://trumpwhitehouse.archives.gov/trump-administration-accomplishments/
[42] https://www.goodwinlaw.com/en/insights/publications/2025/01/insights-practices-changes-expected-trump-administration-takes-shape
Step 2: 音声データの作成
NotebookLMの「音声概要」機能を使うと簡単にテキスト情報を元に概要を説明した音声データを生成することができます。
❌2025年2月時点では英語の会話データしか生成できません。
以下の手順で、FELOの調査結果を元に音声会話データ(.wav)を生成します。
- NotebookLM(https://notebooklm.google.com)にアクセス
- 「新規作成」→「ソースを追加」→「テキストを張り付ける」
- Step 1で得られた結果を貼り付けて「挿入」
- 「音声概要」ボタンをクリック
- 生成された音声データを「...」メニューから「ダウンロード」(.wav形式)
Step 3: 英語音声の日本語化
NotebookLMで生成した英語音声を日本語に変換します。
現状、NotebookLMには日本語の音声データに変換できる機能はないため、今回はいい感じの日本語音声データに変換できるPythonツールを自作しました。
※そのうち、日本語音声データを直接生成出来るようになるとは思います。
上記のGithubリポジトリに使い方が書いてあるので、CloneしてローカルPC上で動かしましょう。
手順はとっても簡単です。
※OpenAIのAPIを利用するため、APIの利用料金が発生します。
ローカルPCで動かせる準備ができたら、以下の手順で実行します。
# 実行手順
# 1. NotebookLMでダウンロードしたwavファイルをaudio_style_converter.pyと同じフォルダに配置
# 2. 以下のコマンドを実行
python audio_style_converter.py xxxxx.wav
処理が完了すると、outputフォルダに以下のファイルが生成されます:
- MP3ファイル(NotebookLMで生成した英語の音声データを日本語変換したもの)
- HTMLファイル(トランスクリプト全文)
実行例
Using style: news_report
=japanese_text= [話者A] 皆様、お帰りなさい。本日は関税について深掘りしていきます。特に、2025年1月に発効予 定のトランプ政権による新たな関税について詳しく分析します。 [話者B] はい、具体的には現在の状況やその影響、 そして今後のグローバル貿易への示唆について取り上げます。 [話者A] この関税は、前回のトランプ政権下や最近の 歴史と比べて、かなりのエスカレーションを示しています。 [話者B] 確かに、主要な三つの施策がこの全体のパズル を構成しています。 [話者A] 第一の施策は、中国製品に対する追加の10%関税です。具体的には半導体や電気自動車の部品など、非常にターゲットを絞ったものです。 [話者B] これは中国の重要な技術セクターの成長を抑制する戦略的 な措置と見られています。 [話者A] 第二の施策は、カナダとメキシコからの製品に対する25%の関税です。対象は自動車部品や農産物などです。 [話者B] 公式な理由は移民問題や麻薬取引の懸念ですが、USMCA(新北米自由貿易協定)内での関係が緊張しています。 [話者A] 第三の施策としては、相互関税制度の導入が検討されています。これは他国が米 国製品に関税を課した場合、米国も同等の関税を課すというものです。 [話者B] これは報復措置として、貿易戦争を 一層激化させる可能性があります。 [話者A] 世界各国の反応として、EUは鉄鋼やアルミニウムに対する関税に対して 世界貿易機関(WTO)に苦情を申し立てることを検討しています。 [話者B] 一方、米国内では輸入部品に依存する企業の生産コストが平均12%増加しており、これが消費者価格にも影響を与えています。 [話者A] 農業分野では、大豆農家が特に大きな打撃を受けており、中国市場への輸出が昨年比75%減少しています。 [話者B] このような状況下で、カナダとメキシコとの交渉が3月に予定されており、移民問題の解決と関税緩和が目指されています。 [話者A] 中国との交渉は4月に第二段階が予定されており、知的財産の保護やサイバーセキュリティに焦点を当てる予定です。 [話者B] また、6月にはG7サミットが開催され、貿易戦争の制御を目的とした共同声明の策定が期待されています。 [話者A] 長期的な影響として、グローバルなサプライチェーンの重大なシフトが予想され、企業はアジアからメキシコへの生産移転を検討する可能性があります。 [話者B] さらに、米国はインドや東南アジア諸国との新たな自由貿易協定を模索する動 きも見られます。 [話者A] 政治的側面では、農業州の共和党議員が関税緩和を求める圧力を受けており、国会内で興 味深い動態が生じる可能性があります。 [話者B] これらの関税政策が短期的な痛みを伴うものの、長期的な利益につ ながるとの見方もありますが、その実現には時間がかかるでしょう。 [話者A] 最後に、これらの関税が一時的な戦術 なのか、長期的な戦略の一部なのかが今後の焦点となります。 [話者B] この動きがどのように展開していくか、今後 も注視が必要です。 [話者A] 本日の深掘りレポートは以上です。ご視聴ありがとうございました。また次回お会いし ましょう。
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HTMLファイルを生成中...
変換が完了しました。
音声ファイル: C:\Users\xxxx\output\トランプ政権の関税政策:2025年の影響と展望.mp3
HTMLファイル: C:\Users\xxxx\output\トランプ政権の関税政策:2025年の影響と展望.html
変換された日本語音声の例
トランスクリプト全文のhtmlファイルの例
まとめ:これからのリサーチに必要なこと
Deep Research時代において重要なのは:
- 明確な観点を持つこと
- 用途に合ったAIツールの選択
- テキストだけでなく、マルチモーダル(テキスト・音声)での情報整理も活用
- ファクトチェックの徹底
最後に一つ注意点として、AIによる大量の情報収集にはハルシネーション(幻覚)が含まれる可能性が非常に高いのでファクトチェックの重要性がより高まります。
そのため、重要な情報については必ずファクトチェックを行うようにしましょう。
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