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GPT-5 WEBチャット活用術:プロンプト設計の要点と注意すべきポイント

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はじめに

GPT-5が出て「おー、すごそう!」と思って使ってみたんですが、実際に触ってみるとプロンプトの書き方でかなり結果が変わるんですよね。

Xやニュースを見てみると、GPT-5は性能が高いものの、「冷たく機械的」「感情的な相談に不向き」との指摘が目立ち、OpenAIはPlusユーザー向けにGPT-4oの選択肢を復活させる方針を早々に発表となかなかあわただしい様相を呈しています。

私も最初は「とりあえず質問すれば良い答えが返ってくるでしょ」と思ってたんですが、使い込んでいくうちにちゃんとした指示の出し方を覚える必要があることがわかってきました。

この記事では、GPT-5における指示出しのコツと実際にGPT-5を使って感じた「GPT-5でハマりがちなポイント」をまとめています。

結論

まず、結論から言うと、GPT-5は指示内容によって裏で使われるモデルが動的に変わっているような挙動をするので、あらかじめ使うモデルを指定する必要はなくなったけど、「より正確な指示出しスキルが必要になったのでは?」と感じました。

🏆 GPT-5の3つのポイント

GPT-5 Prompting Guide - OpenAI Cookbook の内容をもとにわかりやすくまとめています。

1. XMLタグで情報整理

GPT-5の便利な機能で、XMLタグを使って情報をきれいに整理できます。

XMLタグって何?

XMLタグっていうのは、情報に「これは何の情報です」っていうラベルを付ける方法で、GPT-5がちゃんと理解しやすくなります。

基本的な記述形式:

<タグ名>
ここに内容を記述
</タグ名>

実践例:

<状況>
本番サーバーがダウンした
エラー500が発生している
</状況>

<要求>
緊急対応の手順を教えて
</要求>

この書き方にするだけで、GPT-5がかなり正確に情報を処理してくれます。

2. 考える深さをコントロールできる

GPT-5は、プロンプトに書く指示によって「どのくらい深く考えるか」を調整できます。

使える指示文リスト

指示文 どんな風に答えてくれるか いつ使う?
「簡潔に答えて」 さくっと手短に 急いでる時、忙しい時
「詳しく分析して」 そこそこしっかり考えて 普通の相談事
「深く推論して」 めちゃくちゃ真剣に考えて 大事な判断、複雑な問題
「段階的に考えて」 ステップごとに整理して ややこしい作業、計画作り
「十分に検討して」 いろんな角度から検討して リスクがある判断

ポイント: これらの言葉をプロンプトに入れるだけで、GPT-5の考え方が変わります。

3. 答えの詳しさも調整できる

考える深さとは別に、「どのくらい詳しく説明してもらうか」も調整できます。

詳しさをコントロールする指示

指示パターン どんな答えになるか どんな時に使う?
「要点のみ答えて」 箇条書きでさくっと 緊急時、時間がない時
「簡潔に説明して」 必要な分だけちゃんと 普段の業務
「詳しく説明して」 具体例もつけてじっくり 勉強したい時
「段階的に解説して」 ステップごとに詳しく 手順書を作りたい時
「初心者向けに説明して」 専門用語も解説してくれる 新人に教える時

使い方のコツ: 「深く推論して、要点のみ答えて」みたいに組み合わせもできます。

⚠️ GPT-5で気をつけるポイント

ポイント1:矛盾した指示はNG

矛盾した指示があると、なんとか両方を満たそうとして変な答えになったり、余計なことを考えさせて非効率になるそうです。

やってしまいがちな例

ダメな指示の例:

Slackに貼る1行の障害速報を書いて。
見出し/概要/影響/対応/次報予定の5セクション構成で出して。

これ、「1行」と「5セクション構成」が矛盾してるんですよね。GPT-5は「1行に5セクション全部詰め込む」という無茶な作業をしようとして時間がかかります。

良い指示の例:

1. まずSlack速報用に1行で書いて。
2. 続けて、上長向けに5セクション構成(見出し/概要/影響/対応/次報予定)で詳細を書いて。
3. 速報と詳細は内容を合わせること。

こうやって段階的にお願いすれば、スムーズに処理してくれます。

矛盾を避けるコツ

  1. 短い要約と詳細説明は分ける(同時にやらせない)
  2. 順番をはっきりさせる(条件ごとに処理を分ける)
  3. 優先順位を最初に書く(何が一番大事か明記)
  4. あいまいな表現をやめる(「影響大」じゃなくて「ログイン失敗率5%」みたいに)
  5. 不明な時の対応を決めておく(例:{未確認}と書く)

ポイント2:何も指示しないと雑な答えになりがち

実際に使ってみた感じだと、GPT-5は特に指示を出さないと、従来のGPT-4o的な感じで推論せずにサクッと回答を生成しはじめるのですが、その時に精度が落ちる(ハルシネーションが発生する)ことがあります。

体感的には: 何も指示しない = GPT-4oの性能劣化版の回答がさくっと返ってくる、「深く推論して」等の指示 = o3的なしっかり考えた回答、みたいな感じですね。ちゃんとした答えが欲しい時は明示的に指示した方が良いです。

以下は実際にGPT5で試してハルシネーションが発生した具体例です。

実際の問題例1:数値比較

問題のある回答(明示的指示なし):

質問:9.9と9.11どちらが大きい?
GPT-5:9.11のほうが大きいです。

正解は9.9の方が大きいですが、GPT5が勝手に小数点以下の部分の数値の比較として処理して9.11のほうが大きいと誤回答する場合があります。

以下のように「詳しく分析して」と明記するか、前提条件として「数値の比較」であることを明記すれば回避できます。

改善された結果(明示的指示あり):

質問:9.9と9.11どちらが大きい? 詳しく分析して回答して
GPT-5:[小数点の位を適切に比較して] 9.9の方が大きいです。

実際の問題例2:用語の曖昧性

不完全な回答(明示的指示なし):

質問:SANの意味を教えて
GPT-5:Storage Area Networkの略で、サーバーとストレージを専用の高速ネットワークで接続する仕組みです。

証明書のSAN(Subject Alternative Name)について質問していた前提なのに、誤ってStorageのSANについて回答しているので、この回答は不適切です。

改善された回答(明示的指示あり):

質問:SANの意味を詳しく分析して教えて
GPT-5:SANには主に2つの意味があります:
1. Storage Area Network(ストレージ関連)
2. Subject Alternative Name(証明書関連)
どちらのSANについて知りたいですか?

実際の問題例3:地域による規格差

不完全な回答(明示的指示なし):

質問:水1カップって何mL?(普通のレシピ)
GPT-5:水1カップは200mLです(日本の一般的なレシピ基準)。

この回答は日本基準では正しいですが、アメリカ(240mL)やイギリス(284mL)など他国の基準を前提に質問していた場合は誤った回答になります。

改善された回答(明示的指示あり):

質問:水1カップって何mL?(普通のレシピ)詳しく分析して回答して
GPT-5:
- 日本:200mL
- アメリカ:240mL  
- イギリス:284mL
レシピの出典となる国はどちらでしょうか?

🎯 実践的プロンプトテンプレート

基本テンプレート

[指示文](簡潔に答えて / 詳しく分析して / 深く推論して など)

<context>
[背景情報や状況を記述]
</context>

<requirements>
[具体的な要求事項を記述]
</requirements>

<constraints>
[制約条件があれば記述]
</constraints>

実践例:システム障害対応

深く推論して、要点のみ答えてください:

<context>
- システム:基幹ERPシステム(Windows Server 2019)
- 症状:応答時間が通常の5倍(2秒→10秒以上)
- 発生時期:月次処理実行後
- 影響:全ユーザー300名の業務効率低下
</context>

<requirements>
1. 考えられる原因TOP3
2. 確認すべき項目(優先順)
3. 応急処置案
</requirements>

<constraints>
- ダウンタイムは最大30分まで
- 本日中に復旧必須
</constraints>

まとめ:GPT-5を使いこなすために

GPT-5をうまく使うためのポイントをまとめると:

✅ やると良いこと

  1. XMLタグで情報を整理する
  2. ちゃんとした指示を出す
  3. 矛盾しない指示を心がける
  4. 大事な判断では「詳しく分析して」を使う

❌ やっちゃダメなこと

  1. 矛盾した指示を同時に出す
  2. 重要な判断で適当な指示を出す
  3. あいまいな表現を使いまくる

結局、大事なのは基本的なこと

GPT-5をちゃんと使うには:

  • 前提条件をはっきりさせる:状況、制約、目標を具体的に
  • 指示出しスキル:あいまいさをなくして、段階的で分かりやすい指示

こういう基本的なコミュニケーションスキルが大切です。GPT-5は確かに高性能ですが、結局は使う人の指示次第なので、そこを意識して使う必要がある。


参考文献

Accenture Japan (有志)

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