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Gemini Code Assist vs Claude Code 徹底比較

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はじめに

2025年2月、興味深いことが起きました。GoogleとAnthropicが、まるで示し合わせたかのように、ほぼ同時期にプログラミング支援ツールを発表したのです。

Googleの「Gemini Code Assist」(2月25日)とAnthropicの「Claude Code」(2月24日)—どちらも各社の最新モデルを搭載した、いわば「本気の一手」でした。

特に気になったのは、どちらも創業間もないスタートアップの製品ではないという点です。潤沢な資金と技術力を持つ大手企業が、本腰を入れて開発したツールの実力はどの程度なのか?

そこで実際に両方を使い込んで、同じ簡単なプロジェクトで比較テストを行ってみました。今回はその結果をお伝えします。

製品概要と基本的な違い

Gemini Code Assist:IDE統合型の高速開発ツール

開発元: Google
リリース: 2025年2月25日(個人版無料公開)
基盤モデル: Gemini 2.5 Pro / 2.5 Flash
主要な特徴:

  • IDE完全統合:VS Code、JetBrains系IDEでの直接動作
  • 強力なリアルタイム補完:Cursor風の「Ghost Text」補完機能
  • 大容量コンテキスト:128K〜1Mトークンのコンテキスト処理
  • 無料版の圧倒的な使用量:月180,000回のコード補完、1日240回のチャット(GitHub Copilot Freeの90倍)

Claude Code:ターミナル駆動の全自動開発

開発元: Anthropic
リリース: 2025年2月24日(研究プレビュー)→ 5月22日正式GA
基盤モデル: Claude Opus 4、Claude Sonnet 4
主要な特徴:

  • ターミナルベース:コマンドライン操作による全自動プロジェクト管理
  • 計画的開発:詳細な開発計画の立案と段階的実行
  • 完全自動化:ファイル生成から保存まで人手不要
  • 高度な記憶機能/memory/mcpによるシステム設定とエージェント制御

実戦テスト:Node.js Todoアプリで勝負してみた

どちらが本当に使えるのか? 実際に同じプロジェクトを両方で作って比べてみました。

テスト内容

Node.js(Express)でシンプルなTodoリストAPIとフロントエンドページを作成
- GET/POST/PUT/DELETE /todosの実装
- メモリ上でのデータ管理
- フロントエンドはpublic/index.htmlとしてネイティブHTML/JavaScriptのみ
- APIをfetchして一覧表示・追加・完了切り替え・削除機能
- src/app.js、routes/todos.js、models/todo.js、test/todos.test.js
- package.jsonとREADME.mdも含む完全なプロジェクト構成

Claude Code:「計画→実行→完了」の流れるような体験

最初にClaude Codeを試してみました。

驚いたのは、いきなりコードを書き始めるのではなく、まず詳細な開発計画を立ててくれたことです。プロジェクト構造、実装手順、テスト方針まで、まるで経験豊富な先輩エンジニアが設計書を作るように進めていきます。

そして各ステップが完了するたびに、チェックマークで進捗を可視化してくれるのが気持ちいい。「今どこまで進んでいるのか」が一目でわかります。



結果は文句なし:

  • 開発時間:約3分
  • npm install、npm run dev:エラーなし一発起動
  • **CRUD機能:**完全動作、追加修正不要

    特に感動したのは、ターミナルでcdしてプロジェクトフォルダに入るだけで、全ディレクトリが自動的にコンテキストに含まれること。ファイルの命名、保存、配置まで全て自動化されており、開発完了まで一切手を動かす必要がありませんでした

Gemini Code Assist:「とりあえず作ってから考える」スタイル

次にGemini Code Assistを試してみました。

こちらは対照的で、詳細な計画よりもスピード重視。プロジェクト概要をサッと表示した後、30秒〜1分という驚異的な速さで全コードを生成してくれます。

この速さは確かに魅力的です。**「とりあえず動くものを作って、後から調整しよう」**という開発スタイルの人には向いているかもしれません。

ただし、ここからが大変でした:

  • コード生成時間:30秒〜1分(これは素晴らしい)
  • **実際の動作まで:**ファイル整理・保存で追加時間が必要
  • 初回起動:MODULE_NOT_FOUNDエラーが数回発生

最大の問題は、生成されたファイルが「Untitled-1.js」のような未保存状態で表示されることです。手動でファイル保存・命名・ディレクトリ配置を行う必要があり、package.jsonの設定とファイル配置の不一致によるエラーが頻発しました。

最終的な品質は悪くありません。機能的には完全動作し、UIも美しい仕上がりです。ただ、**「生成は速いが、動かすまでに時間がかかる」**というのが正直な印象でした。

機能詳細比較

コード補完機能

機能 Gemini Code Assist Claude Code
リアルタイム補完 ✅ 強力(Cursor類似のGhost Text) ❌ 非対応
コンテキスト理解 ✅ 128K〜1Mトークン ✅ 全ディレクトリ自動読み込み
補完精度 ⭐⭐⭐⭐ 高精度、IDE統合によるスムーズな体験 -

Gemini Code Assistの補完体験:

// 「def」と入力するだけで以下が自動補完される例
function createTodo(title) {
    return {
        id: Date.now(),
        title: title,
        completed: false,
        createdAt: new Date()
    };
}

プロジェクト管理とコンテキスト処理

機能 Gemini Code Assist Claude Code
コンテキスト管理 手動(@フォルダ名、Context Drawer) 自動(cd一発で全取得)
ファイル操作 手動保存・整理が必要 完全自動化
プロジェクト構造 人的介入による調整が必要 規範的な構造を自動生成

高度な機能・カスタマイズ

機能 Gemini Code Assist Claude Code
システムプロンプト ❌ 現時点で未対応 /mcpコマンドで詳細設定
長期記憶 ❌ 各セッション独立 /memoryによる永続化
エージェント制御 ❌ 基本的な会話のみ ✅ 子エージェントによる並列処理

Claude Codeの高度な機能例:

# 長期記憶の設定
/memory

# システムプロンプトの設定
/mcp

# 並列処理タスクの実行
Task: プロジェクト全体からセキュリティ関連のコードを抽出し分析

Context Drawer:Gemini独自のコンテキスト管理システム

Gemini Code Assistの特徴的な機能として、Context Drawer(コンテキストドロワー)があります。

機能概要:

  • ユーザーが手動で指定したファイル・フォルダをリスト表示
  • リアルタイムでの追加・削除が可能
  • AI応答に含める情報の精密制御

使用方法:

@フォルダ名 または @ファイル名 を入力してコンテキストに追加
Context Drawerで内容確認・管理

利点:

  • 大規模プロジェクトでのノイズ除去
  • 機密ファイルの意図的除外
  • 応答精度の向上

欠点:

  • 毎回の手動指定が煩雑
  • 設定漏れによるコンテキスト不足
  • Claude Codeの自動取得に比べ効率性で劣る

料金体系

Gemini Code Assist

プラン 料金 主要機能
個人版(無料) $0/月 180,000回補完/月、240チャット/日、128Kトークン
Standard $19-22.8/月 企業向け機能、Firebase統合、IP保護
Enterprise $45-54/月 プライベートコードベース定制、高度統合

Claude Code

プラン 料金 主要機能
Pro $17-20/月 Claude Codeアクセス、少量使用
Max 5x $100/月 Claude Sonnet 4 & Opus 4、中量使用
Max 20x $200/月 最大使用量、Opus 4優先アクセス

経済性の考察:

  • 個人開発者:Gemini Code Assistの無料版が圧倒的に有利
  • 本格開発:Claude CodeのPro契約($20/月)でフル機能が使用可能
  • 企業利用:どちらも月数十ドル規模で、費用対効果は使用パターンによる

適用場面と推奨用途

Gemini Code Assistが適している場面

  • リアルタイム補完を重視する開発
  • 個人プロジェクトや学習目的(無料版の恩恵大)
  • IDE内での集中作業を好む開発者
  • Google Cloud環境との連携が必要

使用例:

フロントエンド開発でのリアルタイム補完
React/Vue.jsコンポーネントの高速プロトタイピング
Firebase統合アプリケーションの開発

Claude Codeが適している場面

  • プロジェクト全体の自動生成・管理
  • 複数ファイルにまたがる大規模リファクタリング
  • 品質重視の本格的な開発プロジェクト
  • ターミナル中心の開発ワークフロー

使用例:

ゼロからのAPI設計・実装
レガシーコードの全面的な改善
マイクロサービス群の一括管理
技術債務の系統的な解決

実際の運用における注意点

Gemini Code Assist運用のコツ

  1. ファイル管理の徹底

    • 生成後は必ず手動保存を実行
    • package.jsonとファイル配置の整合性確認
    • MODULE_NOT_FOUNDエラーに備えた構造確認
  2. Context Drawerの効果的活用

    • プロジェクト開始時に主要フォルダを一括登録
    • 機密性の高いファイルは除外設定
    • 定期的なコンテキスト内容の見直し

Claude Code運用のコツ

  1. 適切なディレクトリでの起動

    cd /path/to/project
    claude
    
  2. システムプロンプトの事前設定

    /memory で使用言語・コーディング方針を設定
    /mcp で詳細な動作ルールを定義
    
  3. コンテキスト管理

    • 画面右下の「Context left」を常に監視
    • 20%を下回ったら新セッション開始を検討

使ってみて思ったこと

GoogleとAnthropicというAI業界の巨頭が、ほぼ同時期に投入したこれらのツール。実際に使い比べてみると、それぞれの「哲学」の違いがよく分かりました。

Gemini Code Assistは「速く作って、後でAIと一緒に直そう」派の人に向いています。無料で使える範囲が広く、リアルタイム補完も強力。個人開発や小さなプロジェクトなら、これで十分かもしれません。

Claude Codeは「最初から正しく作りたい」派の人のためのツールです。計画的で、品質が高く、一度動けば安心。本格的な開発プロジェクトや、チーム開発では力を発揮しそうです。

どちらも従来の「補完ツール」とは次元の違う体験を提供してくれます。ただし、万能ではないということも分かりました。プロジェクトの性質や、自分の開発スタイルに合わせて使い分けることが大切だと思います。

個人的には、両方を使い分けるのがベストだと感じています。アイデアを素早く形にしたい時はGemini、しっかりとした構成で作りたい時はClaude、という具合に。

AIプログラミング支援はまだまだ発展途上ですが、これらのツールの登場で、確実に新しい段階に入ったと感じています。


参考リンク:

Accenture Japan (有志)

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