全社DXガバナンス
今回はテクノロジー コンサルティング本部 セキュリティ グループ マネジング・ディレクター Ohshige, Sachikoさんに2022/11に執筆いただいた記事をご紹介します。記事内容は執筆当時のものです。
数年を要するDXには、貴重な経営資源が毎年投入されますが、DXによるリターンを確実にするには、それに伴う不確実性(リスク=機会と脅威)に対処していく必要があります。スケールメリットが期待される大規模なDXになるほど、テクノロジー以外の領域にリスクが広がります。
DXを成功させるためには、限られた経営資源を、全社を通して効果的・効率的に活用するためのマネジメントシステム(経営管理手法)を備える必要があります。
全社通しでDXに対処すべき理由
DXを端的に言うと、アナログの世界からデジタルの世界への移行です。「すべてのビジネスがデジタルビジネスになる」という新しい経済パラダイムに合わせて組織全体を変革する必要がありますが、その旅をいち早く始めるために、DXのリスク(機会と脅威)に気づくことが先決です。
DXは新たなデジタル時代に向けた組織の最適化にあたりますが、これは企業の生命線の再構築であり、経営者をはじめとして全社総力で推し進めるべき経営課題です。DX推進において全社通しで健全なリスクテイクを遂行していくことが期待されています。
不確実性をチャンスととらえることで、変化を受け入れ、どのようなパーパス(存在意義)のもとに、どのような価値を提供し、どのような人を育み社会を作るのか、未来を再構築すべき時期が到来しています。
日本企業に求められる長期戦略とリスクテイク
世界のトップ企業は、より長期のビジョンをもとに、自社のパーパスを拠り所に望ましいビジョンを描き、価値を創造する経営へシフトしています。全社共通で目指すべき姿(北極星:ノーススタービジョン)を定義して、そのビジョンを実現するために、未来からバックキャストで逆算し、必要となる長期計画のもとで、短期の1〜2年あるいは四半期単位の計画を仮説ベースで実行しています。北極星が見えていれば、長い道のりでも迷うことがありません。
過去最高の業績を見せている世界の企業は、変化の速さに応じてピボット(方向転換)をとり、DXにも積極的に舵を切るなど、意思決定にアジリティ(機敏性)がうかがえます。急速に変化する環境に適応するため、北極星という長期ビジョンの下に、戦略的に短期アクションを積み重ね、適切なリスクテイクを遂行していくことが相応しい時代に移行しています。
DX 推進に必要不可欠な「全社DXガバナンス」
DXガバナンスの重要な機能となるリスクマネジメントは、災害やセキュリティ、コンプライアンスなどの損失を回避・軽減する単なるコストドライバーではなく、戦略目標の達成に貢献するバリュードライバーです。
DX戦略と目標には必ずリスクが含まれています。なぜなら戦略実行や目標が予定どおりに行くか否かにおいて、不確実性(リスク=機会と脅威)が存在するためです。DX戦略が期待したとおりのパフォーマンスを達成しないリスクや、DX推進により新たなリスクが生じる場合など、組織は全社を通してDXのリスクに対処することで、DX戦略・目標・パフォーマンス向上を確実にします。
DXリスクを、企業全体で特定・監視・対応していくには、リスクに関する情報を、適切なタイミングで、適切な人の手に渡していく、横断的な「全社DXガバナンス」を設計・導入する必要があります。
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