金融サービスグループ – コアバンキングシステム海外導入における銀行支援
今回はアクセンチュア株式会社テクノロジーコンサルティング本部 金融サービスグループ シニア・マネジャーのKii, Kasumiさんからアクセンチュアの金融グループについて執筆いただいた記事をご紹介します。
銀行の中核をなすコアバンキングシステム
預金や貸付、送金、輸出入、為替資金など各種業務における取引を記帳管理している重要なシステムです。今回は日本の銀行が直面している、海外拠点のコアバンキングシステム更改におけるチャレンジと、我々のご支援体制について紹介します。
海外コアバンキングはインハウスからパッケージへ
日本の銀行、特にメガバンクではコアバンキングシステムを要員・アプローチ含め国内勘定系の延長線上としてインハウスで構築と導入を進めてきました。自行の事務手続きや個社対応などを尊重する文化のもと、海外拠点ごとの要件に適応させながらつくりこまれたコアバンキングシステムは、それぞれが重厚で複雑なものとなり、追加開発や維持メンテナンスにかかるコストと時間が肥大化しております。
こうした問題解消のために、2000年代よりインハウス構築から既製のパッケージシステム導入へとシフトする銀行が現れるようになり、さらにはシステムの老朽化とSWIFT ISO20022対応などを起因に、刷新に向けた動きが加速、近年ではいずれの銀行も共通して海外コアバンキング=パッケージソリューションを選択する傾向にあります。
実のところ、外資系銀行は縦割りの事業部制組織であることに伴い、システムも事業部ごとの縦割り傾向が強かったことから、早い段階で一部の業務領域単位にパッケージシステムの採用が始まっていました。しかし日本の銀行が目指した統合オンラインバンキングは業務横断機能(口座管理、与信管理、為替連動など)を含む幅広い業務をカバーしており、業務ごとの切り離しがより難しい構造となっていることも、パッケージシステムを採択できていなかった一つの要因です。また、日本の銀行においては長年連れ添ってきた日本SIerが常にパートナーであったこと、他グローバル企業と比較してもグローバル人材の確保に遅れをとったことも背景にあります。これらのことから海外パッケージベンダーとの協業に踏み出せなかったり失敗したりと苦しい経験が重なり、インハウスでの開発が根強く残りました。
パッケージ導入におけるチャレンジ
コアバンキングパッケージシステムの海外展開を進めるにあたり、大きく4つのチャレンジがあると考えます。
1. パッケージシステムへの業務適応
パッケージシステムを最大限活用するには、現行業務のオペレーションフローを見直し、システムのもつ標準業務フローに適応させることが求められます。現地固有の要望や従来の業務手順を尊重することで、拠点単位のカスタム開発に伴うコストが増加し、パッケージ導入のメリットが損なわれる場合もあります。導入コストの削減においても、現地ユーザ要件がCriticalなものかNice to haveなものかの見極めが必要になります。
2. パッケージ化領域の判断(標準化戦略)
同一銀行において拠点共通に持たせたい機能は、パッケージシステムへのカスタマイズを適用させてから横展開をすることが推奨されます。導入対象拠点からの要件を横並びにして、どこまでパッケージシステムとして導入し、パッケージシステム外で各々開発をするかの指針を定めておく必要があります。加えて、現地周辺システムの存廃を確定する基準を設けることでコアバンキングシステムと周辺システムとの組み合わせを最適化するなど、システム構成を含め設計開発における標準化戦略を事前に立てることで、パッケージシステムを展開することの利点を享受できます。
3. 導入地域/拠点に合わせたソリューション策定
パッケージシステムとはいえ、各銀行/国・拠点のビジネスや規模の違いがあり、特にアジアでは当局規制対応が厳しいなどといった環境制約もあるためソリューションは地域によって様々です。より効果的なパッケージシステムの活用を目指したソリューションを、地域の特性に合わせて採択する必要があります。
近年の各地域に合わせたソリューションの採択には、主に以下の傾向があると見ています。
欧米・欧州拠点:
ビジネスのボリュームと種類の増加から、業務ごとに特性をもつシステムを採用、組み合わせて複合パッケージとして導入する方法
APAC拠点:
中小規模の拠点が多くあること、また、拠点ごとに現地当局規制に対応する必要があることから、1つのコアバンキングシステムを導入して現地要件を踏まえたカスタム開発を加えたり現地システムと組み合わせたりする方法
4. 拠点展開を推進するグローバル人材の確保
海外拠点へのコアバンキングシステムの導入案件おいてキーパートナーとなる海外ベンダー・パッケージシステムのプロバイダとのコミュニケーションには、常に言語やカルチャー、日本の考える品質基準における無意識なズレを認知し、ときに“コントロール”するスキルが求められます。日本の銀行ではこうしたグローバルパートナーと案件推進できるグローバル人材が逼迫しているのが現状です。銀行方針を理解し最適解を提供できるパートナーの採用、および案件を通してでも自行員の成長促進が急務となっております。
アクセンチュアの価値提供と支援体制
アクセンチュアは先述のようなチャレンジを乗り越える様々なソリューションを提供すると同時に、お客さま自身の成長を支援します。業務フロー採用に向けては、業務ユーザがパッケージシステムで実現できるフローを意識するようなFit&Gapの検証を推進します。また、欧州の銀行や日本の銀行への支援経験より、グローバル向けのシステムアーキテクチャおよび導入地域に基づく対応トレンドを把握しており、複数のエコシステムパートナーと提携をすることで各銀行に最適と考えられるソリューションを提供できるための環境が備わっています。
ご支援体制においてもアクセンチュアではかねてより海外拠点にあるデリバリセンターとの協業スキルを強みとしており、さらに海外コアバンキングシステムの導入においては、国内外に在籍している専門家が集結することで、十分な実績をもつテクノロジおよび業務知見の最大化を実現します。私自身も日本の銀行をお客さまに海外コアバンキングシステムの導入案件を推進しており、常にグローバルチームを編成してのご支援をしてまいりました。(これまでのチームメンバの在籍国はスペイン/ハンガリー/ブルガリア/オランダ/サウジアラビア/インド/中国…などなんと世界7か国以上にも及びます。)
アクセンチュアのグローバルタレントを活用しつつ、グローバルと比較してハイレベルな日本のシステム品質基準を確保するマネジメント力を掛け合わせることで、日本の銀行への海外コアバンキングプロジェクトを成功に導くことが我々の使命です。
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