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エンジニア歴1年未満の初心者が3か月でAWS認定試験を全冠した話

2024/10/05に公開

はじめに

2023年5月~8月の約3か月で、当時のAWS認定試験の(既に取得していたCloud Practitionerを除いた)資格11種を取得し、2024 Japan AWS All Certifications Engineersに選出されました。

上記の受験履歴をご覧いただいて分かるように、ほぼ1週間に1つ資格を取得するペースで学習を進めてきました。
今回は、エンジニア初心者が3か月という短期間で、AWS認定試験全冠を達成した方法と経験談をご紹介します。

本記事でご紹介する勉強方法は、「短期間でAWS認定試験に合格すること」にフォーカスしています。そのため、ハンズオン等、実際にAWSサービスに触れながらの学習方法はスコープ外としています。
また、AWS認定試験自体の概要や、各試験の出題範囲等の基本的な情報も本記事には記載していません。詳細や最新情報を知りたい方はAWS公式サイトをご確認ください。
https://aws.amazon.com/jp/certification/

なお、本記事は、2023年8月時点で受験可能であるAWS認定試験の情報を元に記載しています。

当時のスキルセット

大学時代は工業デザインを専攻しており、一部講義にてWebサイトの作成(HTML/CSS)を軽く学んだ程度で、プログラミングや情報工学について本格的に学んだ経験はありませんでした。
2018年3月に大学を卒業した後は、中小IT企業でWebディレクターとして3年ほど従事した後、現職であるコンサルティングファームに未経験エンジニアとして入社しています。
入社後、新卒研修レベルの基本的なITエンジニア向けトレーニングを受講したのちに、クラウドを主に扱う部署にアサインされたことがAWSとの出会いです。
そのため、ITエンジニアリングという大きな括りで見ても初心者であり、クラウド、インフラ面は実務経験無しの完全未経験、という状況からスタートしています。

全冠を目指した理由

上記の通り「完全ど素人」だった私が、AWS認定試験全冠という大きな目標を目指した理由を3つご紹介します。

1. 体系立てた知識を得たかったから

資格取得を目指した学習の一番良い所として、私は「各資格試験の出題範囲の事項ついて、網羅的に、体系立てて学ぶことができること」だと思います。
もちろん、実務で実際にAWSサービスを扱いつつ、分からない部分を都度調べることでも、AWSサービスの知識・スキルを身につけることは可能です。
ここは各個人の好みの問題もあると思いますが、私自身は、まず資格取得向けた勉強で「実務スキルを身につけるための知識の土台」を作り上げ、その土台の上に「実務で得たスキル・ノウハウ・ナレッジ」を積み上げていく、という方が自分に合っていると感じていました。
このように、実務に向けてまずはベースとなる知識の土台を作っていくぞ、という思いで資格試験に着手した背景があります。

2. 自分の努力の成果が「合格」という形で目に見えるから

私は、ゴールのない努力を続けることが苦手です。
何に取り組むにしても、期間や目に見える成果など、何かしらの目標を立てて取り組むことでモチベーションを維持しています。
その点、資格取得にチャレンジすることは、自分の努力が「合格」という誰が見ても明白に分かる形で、成果として現れるので、自分にはとても合っていると感じました。
また、社会人であれば、勤めている会社の年次査定等、自分の努力や成果を第3者にアピールしなければならないタイミングがあると思います。
自分の知識レベルや、「努力できる人間である」という証明ができる資格取得は、そういった場面で説得力のある強力なネタになります。

3. 自分に自信をつけたかったから

上記2点の理由だけであれば、興味がある分野、実務で扱う可能性の高い分野の資格のみ取得すればいいだけの話ですが、「全冠」を目指した1番の理由はここにあります。
私は昔から器用貧乏な方で、ある程度なんでもできてしまうけど、飛び抜けた能力がないことが一種のコンプレックスでした。
そんな中、Japan AWS All Certifications Engineersという制度があること、また、私が勤めている企業がAWSパートナーとしてその対象に含まれていることを知り、もしそのような賞に選出された場合、「何に対しても一般レベルな人」から「AWSについて一般より詳しい人」にレベルアップできるのではないか、と希望を感じました。
このように、AWS認定試験を全冠しようとしたことは、理想の自己像を作り上げるセルフブランディングの一環でもあったと感じています。

以上が、私がAWS認定試験全冠を目指した理由です。

個人的主観の難易度とおすすめの取得順

ここでは、私が受験して感じた中で感じた個人的難易度と、おすすめの取得順を紹介します。
難易度は、難易度低(★☆☆☆☆)から難易度高(★★★★★)の5段階で表記しています。

おすすめの
取得順
認定名 試験コード 難易度
1 Cloud Practitioner CLF-C01 ★☆☆☆☆
2 Developer - Associate DVA-C02 ★★☆☆☆
3 SysOps Administrator - Associate SOA-C02 ★★☆☆☆
4 Solutions Architect - Associate SAA-C03 ★★☆☆☆
5 Security - Specialty SCS-C01 ★★★☆☆
6 Database - Specialty DBS-C01 ★★★☆☆
7 Data Analytics - Specialty DAS-C01 ★★★★☆
8 Machine Learning - Specialty MLS-C01 ★★★★★
9 Advanced Networking - Specialty ANS-C01 ★★★★★
10 SAP on AWS - Specialty PAS-C01 ★★★★★
11 DevOps Engineer - Professional DOP-C02 ★★★☆☆
12 Solutions Architect - Professional SAP-C02s ★★★★☆

ポイントとしては以下の3点です。

1. 「個人の経験領域」と「対策のしやすさ」が難易度に大きく影響する

一般的にSolutions Architect - Professional(SAP)が一番難しいといわれていますが、私個人としてはAdvanced Networking – Specialty(ANS)が一番難しく感じました。
その要因は、ANSはAWSサービスに関する知識だけにとどまらず、オンプレ含む一般的なインフラの知識の応用が問われるため、インフラ領域の実務経験がない私にとっては、新しく学ばなければいけない範囲が一気に広がったためです。
また、各試験の具体的な対策方法は後述しますが、学習リソースが豊富にあるか、という点も、難易度に大きく影響するよう感じました。その点では、Solutions Architect – Professionalは学習リソースや模擬試験が豊富で対策がしやすく、一方で、比較的ニッチな領域であるSAP on AWS – SpecialtyやMachine Learning – Specialtyは、学習リソース自体が限られているので難易度が高く感じました。

2. 出題範囲が被る試験は連続で受験する

AWS認定試験には、データ関連の資格が3種(Database – Specialty、Data Analytics – Specialty、Machine Learning - Specialty)あります。その3種は、対象としているAWSサービスが被っており、1つの試験対策が他の試験に流用できることが多いので、3種連続で取得することをお勧めします。
また、取得順ですが、ご自身の経験上最もとっつきやすい(馴染みのある)領域から着手することで、順を追ってAWSサービスを理解することができ、突然の難しさによる挫折の可能性を低減させることができます。
私のようなITエンジニア初心者の方は、一般的にイメージの湧きやすいDatabase – Specialtyから入り、そこで得た知識を活かして次にData Analytics – Specialty、最後に数学的な知識を要するMachine Learning - Specialtyに挑戦する、という順序が一番挫折ポイントが少ないのではないかと思います。

3. 取得順を工夫して再認定制度をうまく活用する

AWS認定資格は合格してから3年間有効ですが、一部の試験については、上位資格を取得するとその下位資格の有効期限が延長されます。

(例)

レベル 対象試験 再認定のオプション(抜粋)
Foundational Cloud Practitioner Associate レベル・Professional レベルの試験のいずれかに合格すると有効期限が延長。
Associate Solutions Architect - Associate Solutions Architect - Professional 試験に合格すると有効期限が延長。
Associate Developer - Associate
SysOps Administrator - Associate
DevOps Engineer - Professional 試験に合格すると有効期限が延長。

https://aws.amazon.com/jp/certification/recertification/
従って、下位資格から順に取得することで、この再認定制度を利用して有効期限を延ばすことができます。

以上のように、取得の順番を工夫することによって得られるメリットがあるので、受験スケジュールを立てる際の参考にしてください。

全体を通した対策方針

次に、途中で挫折することなくAWS認定試験全冠を達成するために講じた、試験対策の基本方針を紹介します。

1. 短期決戦型で一気に取り組む

私の性格上、短期集中型で臨まないとやる気が落ちて諦めてしまうことが分かっていたので、「いかに短期間で全冠を走り切るか」という点が大きなポイントでした。
幸い、現職は基本的に残業が無く、定時後は資格の勉強に専念できた状況だったので、平日は平均4時間、週末は平均6時間、といったように、かなり詰め込みで対策をしていました。
それでも、最後の方は「まだ続くのか…もうやめたい…もうしんどい…」と辛くなっていたので、全冠を達成するという目標にフォーカスした場合、今回のように短期決戦で攻めたのは正しい選択だったように思います。

2. 学習リソースは基本的にCloudLicenseのみ

対策方法としては、とにかくCloudLicense (当時はTechStockというサービス名でした)の問題を繰り返し解き、問題を覚えてしまうぐらい反復すること、これに尽きます。(CloudLicenseの回し者ではありません。)
Web問題集はネット上に多く存在していますが、特にCloudLicenseは、試験本番とほぼ同じ問題が出ることも多く、合格に大きく寄与したと実感しています。
本来であれば、ハンズオンでの学習を含めて、実際にサービスを動かしながら学習したほうが内容のイメージがつきやすいことは承知していましたが、「短期決戦」という第1の指針をもとに、試験合格に不要なものは極力省き、ただ試験に合格することを目標に、毎日CloudLicenseの問題を解いていました。
その際、不正解の選択肢の何が誤っているのか、という点まで答えられるようにすることで、応用が効く知識の習得ができたと思っています。

AWSは公式の模擬試験も有料で公開しているので、それらも事前に取り組む方が試験の雰囲気をつかみやすいかと思います。ただ、私は(繰り返しますが)いかに短期間で全冠するか、という点を重要視していたので、公式模擬試験は受けませんでした。
慎重に取り組みたい方は、確認することをお勧めします。
https://skillbuilder.aws/jp/search?searchText=official+practice+exam+japanese&page=1&sort=item_relevancy&isValidSearchText=true&isPaid=1

各資格の具体的な対策方法

ここからは、各認定試験について、具体的にどの学習リソースで対策していったか、学習時間と合わせてご紹介します。
ちなみに、学習時間と難易度は比例しておりません。扱いやすい学習リソースが少なく、少ない対策で受験せざるを得なかった資格(特にMLSとPAS)は、難易度が高いと感じたので、学習時間は少ないですが前述の難易度は「高」にしています。

1. Cloud Practitioner(CLF-C01)

学習時間:約10時間
Cloud Practitionerは一番最初に受験した資格です。最初ということもあり、勝手がまだ分からなかったので、CloudLicenseに加えて1冊テキストを購入し、学習しました。

2. Developer - Associate(DVA-C02)

学習時間:約15時間

3. SysOps Administrator - Associate(SOA-C02)

学習時間:約15時間

4. Solutions Architect - Associate(SAA-C03)

学習時間:約15時間

5. Security - Specialty(SCS-C01)

学習時間:約20時間

6. Database - Specialty(DBS-C01)

学習時間:約20時間

7. Data Analytics - Specialty(DAS-C01)

学習時間:約23時間

8. Machine Learning - Specialty(MLS-C01)

学習時間:約23時間

9. Advanced Networking - Specialty(ANS-C01)

学習時間:約30時間

10. SAP on AWS - Specialty(PAS-C01)

学習時間:約18時間
CloudLicenseは、PASの問題が明らかに少なかったので、Udemyの下記コースで補足しました。
※Udemyは通常価格だと一見値段が高く感じるかもしれませんが、頻繁にSALEを行っていますので、随時チェックしてみてください。

11. DevOps Engineer - Professional(DOP-C02)

学習時間:約20時間

12. Solutions Architect - Professional(SAP-C01)

学習時間:約30時間

全冠して良かったこと

次に、実際にAWS認定試験の全冠を達成して、良かったことやポジティブな変化をご紹介します。

1. 成果が目に見える形に現れ、達成感を得られたこと

全冠を目指した理由でも記載しましたが、やはり全冠を達成して努力がゴールに結びついた瞬間の達成感はとてつもないもので、3か月かけた難しいゲームをようやく完全クリアした感覚でした。
いままで資格試験はジャンル問わず色々チャレンジしてきた身ですが、12種類、というのは自分史上最大のボリュームだったので、「私でも最後までやり遂げることができた!」という嬉しさも飛びぬけて大きかったです。
(今でも、各試験合格時に受け取れるCredlyのバッジが12つ全部揃っている様子を眺め、満足感に浸っていることがあります。)

2. 第三者へ、学習意欲のアピールができたこと

3か月で12種の試験に合格したことは、合格した証明を提示すれば誰が見ても事実なので、学習欲・向上心についてはかなり強力なアピールになり、評価いただけました。
特に、私のような経験の浅いエンジニア初心者は、経験ベースで自分のスキルをアピールすることが難しい場面が多くあると思います。
「自主的に勉強し、キャッチアップできる人である」という印象を与えることにより、自分のポテンシャルや伸びしろを説得力のある形でアピールすることができ、結果として、今後多くの経験を積んでいくうえでのとても心強い材料になっていきます。

3. 自己紹介の時の強めのネタができたこと

これはおまけ的な副産物ですが、やはり「AWS認定試験全冠」ってインパクトがあるので、初めてお会いした方に自己紹介のネタとして含めると、驚かれたり、褒めていただけることが多くなりました。
また、資格取得に向けた相談も少しずついただくようになり、その点では周りに貢献できるようになっていっているのではないかと感じています。

今だから思う後悔

実際に短期間でAWS認定試験の全冠した後、改めて前述の全冠を目指した理由で挙げた3つの目的が達成できたのか、振り返ってみました。

(再掲) 全冠を目指した理由

  1. 体系立てた知識を得たかったから
  2. 自分の努力の成果が「合格」という形で目に見えるから
  3. 自分に自信をつけたかったから

その結果、「2. 自分の努力の成果が「合格」という形で目に見えるから」については、全冠してよかったことでお話しした通り、達成できているように感じています。
一方で、「1. 体系立てた知識を得たかったから」と「3. 自分に自信をつけたかったから」については、完全に達成できたとは言えない状況であるのが事実です。

今回、短期間でAWS認定試験の全冠を達成しましたが、短期間で取り組んだからこその後悔があります。これから資格試験に挑戦する方には同じ後悔をしてほしくないので、ここで2点、目標が達成できていないと感じる理由を含めて共有したいと思います。

1. 短期間で身につけた記憶は短期間で忘れる

本当に、びっくりするぐらいすぐ頭から抜けます。
基本的に、1週間で覚えたことは1週間で忘れるものと認識しておいていただいた方がよいです。
そのため、試験へむけて体系立てた知識を一時的に得たとしても、短期間でその知識が記憶から薄れていってしまい、実務でいざ使う、という場面ではもう忘れてしまっていることが多かったです。
なので、まず資格取得向けた勉強で「実務スキルを身につけるための知識の土台」を作り上げ、その土台の上に「実務で得たスキル・ノウハウ・ナレッジ」を積み上げていく、という元々立てていたプラン通りにはいかない結末となりました。

2. 実務スキルが伴っていないから自信が持てない

「座学的な知識」と、「実際に使えるスキル」は別物です。今回の取り組みを通して、身に染みて痛感しました。
試験対策として知識を学んで、さあ実際に手を動かしてAWSサービスを使おう、と思っても、「結局何から手を付ければいいんだっけ?」「このパラメータって何を指定すればいいの?」「エラーが出てなかなか解決できない!」というようなことばかりです。また、AWSサービスについて質問されても、堂々と答えられるケースはまだ少なく、自分の発言に自信が持てずにいます。
自分に自信を持ちたい、という思いを持ち目指した全冠ですが、自分が思ってたより自信が持てない厳しい現状がありました。

上記の2点を踏まえて、やはり少し遠回りでも、じっくり時間をかけて実際に環境に触れることで理解を深め、きちんと「使えるスキルを身につける」こともフォーカスに含める方が、長期的に見たら自身のためにもなると感じました。急がば回れ精神が必要です。

最後に:全冠を目指すAWS学習者へ

本記事では、エンジニアが3か月でAWS認定試験を全冠した話を紹介しました。
AWS認定資格は常にアップデートされており、最近ではAWS Certified AI Practitionerや、AWS Certified Machine Learning Engineer - Associateがベータ版として新たに公開されています。
また、既存の資格も難易度が年々上がっており、知識を応用する必要があるケーススタディのような設問も増えてきているとも言われています。
このように、常に状況が変化していくAWSは、エンジニアにとっては知的好奇心が尽きない領域であると感じています。

最後に、私がAWS認定試験を全冠したのは2023年8月ですが、2024年10月現在、今更感もありつつ、当時の話をブログ記事にした理由を記載します。
以前より、エンジニア界隈では「資格取得には意味がない」といわれることも度々ありますが、私はそうは思いません。
前述したとおり、資格を取得しただけではAWSを完璧に理解できるようになるわけではありませんし、座学だけでなく、きちんと実務スキルも併せて身に着けていくべきです。
ただ、資格を取得することで見える世界、次のステップがあるとも感じています。
私の場合、AWS認定試験全冠を達成したからこそ、次のステップとしてJapan AWS Top Engineersが視野に入り、チャレンジングではありながら目標に設定することができました。
初学者の方含め、より多くの方が、資格試験への挑戦を通じてAWSの世界へ一歩踏み出すきっかけになれればと思い、本記事を執筆しました。今後は、ブログ記事の執筆に加え、JAWSでの登壇などにもチャレンジしていく予定です。

本記事が、誰かのお役に立つことを心より願っております。

Accenture Japan (有志)

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