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社内人材のリスキルを加速するCloud BootCamp (クラウド・ブートキャンプ)

2023/12/20に公開

2023/1/31公開のAccentrue Technology Diariesに掲載された記事の再掲です。記事の内容は公開時点での情報となります。
https://www.accenture.com/jp-ja/blogs/technology-diaries/accelerate-cloud-reskill-by-cloud-bootcamp


テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェント クラウド イネーブラー グループ シニア・プリンシパル Oka, Tomoyaです。本記事では、アクセンチュア日本オフィスが社員のクラウドスキルのリスキリングを支援するために開発した、Cloud BootCamp(クラウド・ブートキャンプ)の事例をご紹介します。社員のスキルアップを効果的に支援するための施策を日々検討されている方々への参考になれば幸いです。

テクノロジー人材不足という課題

クラウドをはじめとするテクノロジーをビジネスに活用していく上で、高度なスキルを持つテクノロジー人材が足りない、またはそもそもいない、という課題に直面します。
アクセンチュアには、全世界で12万人を超えるクラウド専門家が在籍していますが、お客様からの要望に継続的にお応えするために、テクノロジー人材の確保には積極的に取り組んでいます。
テクノロジー人材確保のアプローチは、複数考えられます。
採用プロセスの継続的な改善による新卒/中途採用の強化、全世界のオフショア開発拠点に在籍する人材の活用、ビジネスパートナー様からの人材供給、高度なスキルを保有する会社様との提携強化や買収等、様々な施策を日々実行しています。
もう1点、アクセンチュアが力を入れている施策が、テクノロジー人材のリスキリングです。

なぜリスキリングなのか

自社に必要なスキル要件を明確に定義し、そのスキル要件を元にトレーニングを開発し、社員に機会提供するというのは、多くの企業で取り組まれていることです。
ここで大事なのは、スキル要件によって要求された個々のスキルを身に付けて終わるのではなく、「自身に合ったリスキリングのやり方を習得し、自分自身を定期的にアップデートし続けること」であると考えます。なぜなら、クラウドのようなテクノロジースキルは技術進歩の速度が非常に速く、身に付けたスキルがすぐに陳腐化してしまうケースが多いからです。
会社としては、ビジネスの変化やテクノロジーの進歩の状況に応じたリスキリングの枠組みと機会提供を社員に行い、リスキリングを奨励するだけでなく、リスキリングに積極的に取り組む社員を適切に評価することが重要です。

クラウドのリスキリングを支援するCloud BootCamp(クラウド・ブートキャンプ)

お客様の課題解決をご支援し、価値を提供するため、アクセンチュア社員には非常に多様なスキルが要求されます。社員のスキルアップは、会社としての競争力向上に大きく関わりますので、毎年、グローバル全体で社員へのトレーニング機会提供に多額の投資を行っています。
それに加え、日本オフィス独自の取り組みとして行っているのが、複数の「ブートキャンプ」プログラムの開発と社員への提供です。ブートキャンプとは、なるべく短期間に、習得したい内容を効率的に学べるように構成されたトレーニングプログラムを指します。
Cloud BootCamp(クラウド・ブートキャンプ)は、クラウドプロバイダーが提供する各種サービスの概念や使い方だけでなく、クラウド上でモダンなアプリケーション開発やインフラストラクチャ構築を行うためのツール群、そして、ビジネスを止めないために必須となる、情報セキュリティや運用の要諦も含めた、包括的且つ実践的なトレーニングプログラムです。

トレーニングプログラムのコンテンツをご紹介します。
トレーニング前半では、クラウドの提供価値、IaaS/PaaS/SaaSの概念等のクラウドの基礎を学びます。併せて、クラウドを学ぶ前提として、クラウドを構成するサーバ、ストレージ、ネットワークといったハードウェアや、OS、TCP/IPも含めたITインフラストラクチャの基礎を学びます。
「クラウド考古学入門」については、その内容を後述しますが、コンピュータやアプリケーション開発の歴史を紐解くことで、「故きを温ねて、新しきを知る」ためのコンテンツとなっています。

  • ITインフラストラクチャの基礎
  • クラウドコンピューティングの基礎
  • クラウド考古学入門

トレーニング後半では、前半で学んだ概念を実践的な知識とすべく、クラウド環境上でハンズオンを実施し、アプリケーションを動作させるための環境構築を体験します。ハンズオンの中では、昨今のシステム開発の中で当たり前に利用されるようになってきている、Infrastructure as Code(IaC)ツールや、コンテナ技術についてもハンズオンで学ぶなど、「ものづくりの楽しさ」を体験できるコンテンツとなっています。

  • AWSの仮想マシン解説とハンズオン
  • ネットワーク設計演習およびAWSの仮想ネットワーク解説とハンズオン
  • 情報セキュリティの概念、リスクアセスメントの進め方、AWSのセキュリティサービス解説とハンズオン
  • Infrastructure as Code(IaC)の概念、AWSのIaCサービス解説とハンズオン
  • Terraformによるインフラ構成管理解説とハンズオン
  • Ansibleによるインフラ構成管理解説とハンズオン
  • Dockerによるコンテナ利用解説とハンズオン
  • AWSのデータベース、ストレージ解説とハンズオン
  • AWSのPaaSサービス解説とハンズオン
  • AWSのコンテナオーケストレーションサービス解説とハンズオン
  • IT運用の基礎、本番環境作業時の心得、AWSの運用関連サービス解説とハンズオン

トレーニングコンテンツ開発の中で、特に留意した部分について解説します。

クラウド考古学入門

このクラウド考古学は、アクセンチュアでクラウド関連ビジネスに携わるために必須なだけでなく、前述の「リスキリングのやり方を習得する」ための演習でもあります。
クラウド「考古学」ですので、クラウドや、アプリケーション開発に纏わる3つのキーワード、「クラウドコンピューティング」「DevOps」「クラウドネイティブ」を例にとり、その歴史的経緯を紐解きます。
クラウドは、何もないところから突然登場したわけではありません。1960年代にメインフレームのビジネス利用が盛んになりましたが、高額な運用保守費用が課題となるにつれてダウンサイジングの波が訪れ、クライアント/サーバ型のシステムが流行します。その後Webのビジネス活用が盛んになると共に、サーバの数は増え続けます。サーバのリソース利用を効率化し、運用負荷を下げるために仮想化技術が流行しましたが、自社のオンプレミス環境で確保できるコンピューティングリソースには限界があり・・・という歴史が前段に存在します。
アクセンチュアは、お客様のJ2C(Journey to Cloud)やレガシーアプリケーションのモダナイゼーションのご支援を行っています。この支援業務を行う際、メインフレームは歴史の中の存在ではなく、お客様の重要なビジネスを現在でも支えていると共に、J2Cの大きな課題でもあります。仮想化技術を活用した、いわゆる「プライベートクラウド」の環境を運用されているお客様も多く、その取扱いをお客様と議論し、示唆を提示するためには、「クラウド以前」の技術要素にも精通しておく必要があるのです。
このように、歴史の中に登場する技術要素やその時点でのニーズや課題を「点」として捉えつつ、なぜ、それらの技術や概念が必要になったのか、変わっていった部分と変わらない本質的な部分は何か、という「線」で捉える方法を学びます。これが、将来クラウド以外のテーマをリスキリングする際に役立つのです。このため、コンテンツのタイトルを「入門」としています。

IaC関連ツールやコンテナ利用方法の実践

IaC関連ツールやコンテナ、そしてコンテナオーケストレーションツールは、クラウド環境だけで利用する技術ではありません。しかし、現在クラウド上でシステムを設計・構築・運用する上では、前提知識として必要になるケースの多い技術要素ですので、コンテンツに加えています。
受講者は、ハンズオン前半ではクラウドの仮想サーバ、仮想ネットワーク、セキュリティ関連設定を手動で行い、且つ動作確認も行います。これは、非常に時間のかかる作業ですし、動作確認を通じて手順書どおりに正確に作業を実行する難しさを体験します。
この後、IaC関連ツールを利用して同じ作業を行うことで、ツールから受けられる恩恵を体験すると共に、作業を行ったコードを読み、理解することで、現場でOJTに入った際の立ち上がりの早さを期待することができます。

情報セキュリティの概念と、運用設計で考慮すべき内容の理解

クラウド・ブートキャンプのコンテンツ開発全般で意識したことは、あくまでも現場で役立つ実践的な内容を目指す、ということです。
情報セキュリティでは、クラウドベンダーが提供するセキュリティ関連サービスの使い方を理解するだけでは不十分です。そもそも、自身が担当する情報システムで守るべき情報資産は何か、想定される脅威は何か、納期やコスト、技術的課題を踏まえた上で実装すべきセキュリティリスクの管理策は何か、を網羅的に洗い出し、第三者の協力も得ながらセキュリティリスクの検証を行うことが重要なはずです。この点については特に強調して解説を行っています。
運用についても同様です。運用として決めておくべき基本的な事項はITIL4を参考に解説しますが、本番環境で運用作業を行う場合の心得についても解説します。例えば、本番作業手順の準備、作業手順の事前検証、作業エビデンスの取得、複数人でチェックしながら作業するための体制構築、作業実施時の指差し確認といった、泥臭い内容も含めるようにしました。
クラウドの機能や、IaCツールで環境を簡単に構築できるようになった反面、大切な環境を簡単に「壊せてしまう」怖さと、そのビジネス影響の甚大さを理解させることを意図しています。

Cloud BootCamp(クラウド・ブートキャンプ)の導入効果

2021年末からのクラウド・ブートキャンプパイロット開催を合わせると、約1,000人近い社員が受講したことになります。この約1,000人の受講者の中には、テクノロジーコンサルティング本部に配属された新入社員、第二新卒社員も含まれています。受講者からのアンケート評価結果では、高い満足度を示す数値が出ています。
クラウド・ブートキャンプのコンテンツは社歴に関わらず学びのあるような実践的な内容も含まれています。新入社員、第二新卒社員からは、ものづくりの楽しさを体験しつつ、非常に苦しいトレーニングであったというフィードバックもありました。しかし、クラウド・ブートキャンプのトレーニング教材や講義動画、ハンズオンに利用した各種スクリプト群には、ブートキャンプ終了後もいつでもアクセスできますので、OJTの現場に出る上での「武器」になったはずです。
AWS版のクラウド・ブートキャンプ展開成功を受け、2022年末には、新たにGoogle Cloud版も開発・展開を行いました。今後は、Azure等の別クラウド版の開発も見据え、お客様のマルチ・クラウド活用のご要望にもお応えすべく、コンテンツの拡充を進めています。

リスキリングを成功させるためには

テクノロジー人材が学ぶべき内容は、クラウドだけではありません。アクセンチュアが複数のブートキャンププログラムを提供しているように、業務上の必須スキルのトレーニングを簡単に受講でき、繰り返し復習できるような仕組みづくりが必要となります。
注意点として、ブートキャンプのようなトレーニングプログラムを準備するだけでは、プロジェクトの業務で忙しい社員が受講するモチベーションにはならない点は、留意すべきでしょう。このあたりは、リスキリングに積極的に取り組んでいる社員を評価するための評価制度の見直しも必要になるはずです。
また、リスキリングで学んだ内容は、ビジネスの現場で実践することで、真に身につくものです。トレーニングの機会提供だけでなく、トレーニングで学んだ内容を実際の業務で活用できるような、業務への戦略的な人材配置も必須になると考えます。
最後になりましたが、お客様に満足いただけるようなサービスを提供できる人材の育成に、今後も継続的に取り組んでいきたいと考えております。
アクセンチュアは、テクノロジー人材の育成に関する豊富なノウハウと、数多くの専門家を揃えております。人材育成に関する課題感をお持ちのお客様は、ぜひアクセンチュアまでご連絡下さい。

お問い合わせ先: info.tokyo@accenture.com

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