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インフラ開発上流工程における海外拠点の活用

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はじめに

みなさん、こんにちは。
総合コンサルティング会社「アクセンチュア」で働いております、宇佐美 亜以と申します。
テクノロジーコンサルティング本部に所属し、クラウドおよびインフラ運用基盤の刷新・導入を主に担当しています。

今回は、「インフラ設計・導入における海外拠点の活用」をテーマに、私の経験をもとにしたLessons Learnedをご紹介したいと思います。

なぜ海外拠点メンバーとのコラボレーションが大切なのか?

少し前までは、海外拠点メンバーとのコラボレーションというと、いわゆる「オフショア活用」として、開発やテストなどの作業を海外に委託し、コストを抑えることを目的としたプロジェクトが主流でした。
しかし最近では、日本市場におけるIT人材の不足や、日本国内ではまだ導入実績のない新しい製品を扱う必要性の高まりを背景に、海外拠点のメンバーと連携する機会が増えてきていると感じています。

私が担当したあるプロジェクトでも、日本では導入実績が少ない製品を扱うにあたり、北米やヨーロッパでの導入経験を持つフィリピン拠点(ATCP:Advanced Technology Center Philippines)のメンバーと、要件定義フェーズから連携してプロジェクトを進めました。

構築やテストといった下流工程ではなく、要件定義といった上流工程から海外拠点メンバーと連携する中で感じた課題や、目指すべき姿について、私自身の実体験をもとにご紹介したいと思います。

海外拠点メンバーとのコラボレーションを成功させる秘訣

日本のSIは世界の非常識!?

結論として最も重要なのは、「お互いの認識に差分があることを前提にプロジェクトを進める」 という姿勢です。
以下に、私が実際に感じたポイントをまとめます。

1. 成果物の構成と目的をクリアにする

たとえば、同じ「基本設計書」という成果物を作成しようとしていても、拠点ごとに想定している内容に違いがありました。当初はその違いに気づかずにプロジェクトを進めてしまい、後から認識をすり合わせるのに多くの時間を要しました。
システム構築フェーズでは、構築対象が明確なため、アウトプットに大きな差異が生じることは少ないかもしれません。しかし、要件定義や基本設計といった上流工程では、同じ言葉を使っていても、想定しているアウトプットがまったく異なるということが起こり得ます。
このギャップを埋めるためには、単に「違う」と指摘するのではなく、なぜそのように考えるのか、背景や理由を共有し合うことが非常に重要です。

基本設計書における日本モデルとグローバルモデルの違い

モデル 進め方
日本モデル 設計項目について、決定した設計内容だけでなく、後で文章を読んだ人がなぜこの設計にしたのか設計理由がわかるよう全ての設計項目について詳細に理由を記載する。特に基本設計レベルについては、クライアントが自社の他部署や上層部へも合意形成のため説明が必要になるケースが多く文書作成に比重を置いて工数を割く必要がある
グローバルモデル スピード重視で設計理由についてクライアントと合意をとりつつも、すべての理由を設計書として文章には起こさない。早くものづくりに入ることを重視しており、設計内容が実際に作ってみると変わることがあることを前提にしているため、文章作成への工数比重が低い

2. デリバリーモデルの違いを前提にした認識合わせ

同じ「要件定義書」を作成しようとしていても、作成に至るまでのプロセスや考え方に違いがあることがありました。そのため、プロジェクト計画を立てる際には、「何を作るか」という成果物の認識合わせだけでなく、「どのようなプロセスで作っていくか」まで含めて認識をすり合わせることが非常に重要です。
この認識合わせが不十分なままプロジェクトを開始してしまうと、進行中に双方のギャップが顕在化し、結果としてスケジュールの遅延を引き起こす原因となります。
以下に、要件定義書の作成において私が実際に感じた「進め方の違い」の一例をご紹介します。

要件定義の進め方の違い

モデル 進め方
日本モデル 要件はクライアントと一緒に認識合わせをして決めていくことが求められる。例えばどれくらいの耐障害性が求められるのか、どれくらいの性能要件になるのか、ただクライアントに聞いても答えは出てこない。類似システムの要件や、既存システムの構成情報を調査し、要件を定め、クライアントと討議しながら一緒に要件を定義していくことが求められる
グローバルモデル ある程度の要件は既にクライアントが構想を描いており、数回の打ち合わせを設定し、ヒアリングすることでその場で要件を決めていくことが多い。そのため、決めるべき要件のリストをQA表のように提示し、クライアントと討議して決めていく

3. 言語の壁は大きな壁ではない

海外拠点のメンバーと連携する際、英語力が日本側のプロジェクトメンバーを募集するうえで一つの課題になると感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現在では生成AIを活用した翻訳ツールが多数存在しており、言語の壁はそれほど大きな障害とは感じておりません。実際の会議においても、同時翻訳ツールを活用することで、日本語と英語が混在する会話でも大きな齟齬が生じることはありませんでした。言語の違いにとらわれすぎず、互いの意見を率直に伝え合うことが何よりも重要だと考えております。たとえ日本語で発信したとしても、伝えたい想いは十分に伝わります。大切なのは、言語そのものよりも「伝えようとする姿勢」や「発信する意志」であると実感しました。

まとめ

今回は私の実体験を書いてみました。すべてのケースに当てはまるものではないかもしれませんが、実務に即した知見として読者の皆様に少しでも参考になる情報を提供できたら幸いです。海外拠点との連携は、単なるコスト削減手段ではなく、知見や経験を活かした価値創出の手段へと進化しています。アクセンチュアというグローバル企業の強みを生かし、海外での導入成功事例を日本式にカスタマイズを上手く行うことで、クライアントの様々な複雑な課題に対応できるようご支援していきます。

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