言語化力を鍛える:生成AI時代の必須スキル
言語化力を鍛える:生成AI時代の必須スキル
〜もやもやを言語化し、生成AIに正確に意図を伝える技術〜
生成AIが登場してから、すでに2年ほどが経ちました。
その間、「プロンプトエンジニアリング」という言葉は一気に広まり、多くの人が耳にしたことのある一般的な用語になっています。
一方で「AIは進化しているから、もはやプロンプト設計は不要だ」という意見も聞かれます。しかし実際には、自分の考えを正しく言語化できなければ、AIは足りない部分を勝手に補い、不本意なアウトプットを返してしまうのが現実です。
現場でも生成AIの活用が広がっていますが、担当者にAI利用前提で情報をまとめてもらうと、内容が重複していたり、説明があいまいだったり、時には矛盾していたりするケースが少なくありません。
これからのAI時代に必要になるのは、単なる「プロンプトの書き方」ではなく、もやもやした思考を整理し、明確な言葉に変換する力=言語化力だと思います。
これはAIとの対話だけでなく、人とのコミュニケーションにおいても共通する基盤的なスキルです。
というわけで、生成AI時代に誰もが身につけておくべき言語化スキルの基本テクニックを整理してみました。
Part1: 思考整理から始めるプロンプト設計
00. 新入社員の目線でチェックする
テクニック:
「この指示、新入社員が読んでも誤解なく実行できるか?」を常に自分に問いかける。
- 悪い例:「いい感じに体裁を整えてと依頼する」
+ 良い例:「新入社員でも迷わず作業できるように、見出し・フォントサイズ・段落揃えを統一して体裁を整える」
01. 語彙力不足ではなく、思考整理不足が原因
テクニック:
プロンプトを書く前に「なぜそう思ったのか」を整理してから依頼する。
- 悪い例:「面白い記事にして」
+ 良い例:「読者が退屈しないように、例え話を多く交えたユーモア調の記事にして」
02. 抽象は具体に変換する
テクニック:
「何が・どうなる・どんな効果」で具体化する。
- 悪い例:「使いやすい表を作って」
+ 良い例:「売上データ(月別・商品別)を比較できる、縦軸=月・横軸=カテゴリの表を作って」
03. 言葉の解釈をAIに丸投げしない
テクニック:
固有名詞や数字を使い、解釈の余地を減らす。
- 悪い例:「若者向けで」
+ 良い例:「18〜25歳の大学生を対象に、TikTokで流行しているスラングを取り入れて」
04. 「やばい」で終わらせない
テクニック:
感覚語は理由や比較で補い、五感を活用する。
- 悪い例:「もっとやばい感じで」
+ 良い例:「緊張感を強調。背景を暗くし、赤い光で不安感を演出して」
05. 「例えば」で具体性を増す
テクニック:
例示を入れることで論理とイメージを補う。
- 悪い例:「シンプルに解説して」
+ 良い例:「例えば中学生に教えるように、専門用語を避けて解説して」
06. 視点を増やす
テクニック:
メリット・デメリットを並べて依頼する。
- 悪い例:「商品のメリットを説明して」
+ 良い例:「商品のメリットとデメリットを、それぞれ3点ずつ挙げて」
07. ターゲットを絞る
テクニック:
想定読者やペルソナを具体的に指定する。
- 悪い例:「読者にわかりやすく説明して」
+ 良い例:「ITに詳しくない50代の管理職に向けて、専門用語を避けて説明して」
08. 反論を活かす
テクニック:
想定される反論も盛り込むよう依頼する。
- 悪い例:「提案をまとめて」
+ 良い例:「この提案に『コストが高すぎる』という反論があると想定し、その克服策を含めてまとめて」
Part2: 語彙力を広げてプロンプトを強化する
01. 未来を描く言葉を使う
テクニック:
「その後どうなるか」を必ず含める。
- 悪い例:「便利なアプリを紹介して」
+ 良い例:「このアプリを使うと作業時間が30%短縮され、残業が減る未来を想定して紹介して」
02. 言葉をストックしておく
テクニック:
心に残った表現を日常的にメモして使う。
- 悪い例:「響いた言葉をそのまま忘れる」
+ 良い例:「歌詞や本で出会った言葉を手帳に書き留め、繰り返し使う」
03. 類語を意識する
テクニック:
新しい言葉は類語や用例も調べる。
- 悪い例:「落ち着いた雰囲気で」
+ 良い例:「落ち着いた=静か・穏やか・安心感のある、の中から指定」
04. 短期集中で言葉を繰り返す
テクニック:
気になった表現を短期間に何度も使う。
- 悪い例:「1回だけ使って忘れる」
+ 良い例:「新しい言葉を数回のプロンプトで連続使用し、定着させる」
05. 他者視点を借りる
テクニック:
異なる視点を指定して多様な言葉に触れる。
- 悪い例:「わかりやすく説明して」
+ 良い例:「医師の視点で説明して」「高校生が友達に語るように説明して」
Part3: プロンプトで伝わる工夫
01. 一文一要素で書く(人間側の心得)
テクニック:
1文に1つの要素だけを含める。
- 悪い例:「要約して簡単に面白く説明して図解も作って」
+ 良い例:「①要約する → ②簡単にする → ③面白くする → ④図解を作る、と段階的に依頼する」
02. 議論の軸を示す
テクニック:
依頼の中心を明確にする。
- 悪い例:「議論を整理して」
+ 良い例:「この文章の結論を一文で述べ、その理由を整理して」
03. オノマトペを活用する
テクニック:
オノマトペ(擬音語・擬態語)は直感的なニュアンスを伝えるのに効果的。
- 悪い例:「かわいい雰囲気で」
+ 良い例:「キャラクターは“ふわふわ”した柔らかい印象で、背景は“キラキラ”と光沢感のある華やかさに」
04. 数字で流れを示す
テクニック:
変化率や傾向を含めて数字を提示する。
- 悪い例:「売上=100, 200, 250, 300」
+ 良い例:「売上は前年比+20%で増加。過去3年の傾向から、来期は+15%を目標とする」
05. たとえ話を入れる
テクニック:
相手に身近な例えを用いて説明する。
- 悪い例:「クラウドを説明して」
+ 良い例:「クラウドの仕組みを駅のコインロッカーに例えて説明して。誰でも預けて、どこでも取り出せるイメージで」
06. 理解度を確認させる
テクニック:
途中で問いかけを挟ませる。
- 悪い例:「一気に長文を説明して」
+ 良い例:「説明の途中で『ここまでで質問ある?』と確認を挟んで」
07. 適切な言葉遣いを指定する
テクニック:
ビジネスや場面に応じた言葉に言い換える。
- 悪い例:「この企画はやばい雰囲気で説明して」
+ 良い例:「この企画はリスクが高い点を指摘し、改善策を添えて説明して」
Part4: 文章力を鍛えるプロンプト設計
01. 書けないのは整理不足
テクニック:
まず箇条書きに整理してから依頼する。
- 悪い例:「長い文章をそのまま書く」
+ 良い例:「文章を整理して記載する。例:①背景 ②問題点 ③解決策」
02. 一文一要素を守る(人間側の心得)
テクニック:
プロンプトは1文に1要素だけ書く。
- 悪い例:「説明してまとめて改善点も提案して」
+ 良い例:「説明して。次にまとめて。最後に改善点を提案して」
03. 5W1Hを埋める
テクニック:
誰・何を・なぜ・どこで・いつ・どうやって、を盛り込む。
- 悪い例:「わかりやすく書いて」
+ 良い例:「誰に(高校生)/何を(クラウドの仕組み)/なぜ(基礎知識習得)を説明して」
04. 結論→根拠→具体例で構成
テクニック:
構成を明示して依頼する。
- 悪い例:「自由にまとめて」
+ 良い例:「まず結論を一文→理由を3つ→具体例を挙げる流れで」
05. 無駄を削る
テクニック:
冗長な表現を短くする。
- 悪い例:「とても非常に大変に重要だと思います」
+ 良い例:「重要だと思います」
06. 重複をなくす
テクニック:
同じ意味の重複を避ける。
- 悪い例:「まず最初に」
+ 良い例:「最初に」
07. 読点で意味が変わることに注意
テクニック:
依頼内容が変わらないよう読点を意識する。
- 悪い例①:「資料は、作成してください」=資料作成を依頼
- 悪い例②:「資料は作成して、ください」=資料を作成して提出を依頼
08. 曖昧な表現を避ける
テクニック:
断定で依頼する。
- 悪い例:「基本的に〇〇を利用するルールとします。」
+ 良い例:「〇〇を利用するルールとします。例外的に✖✖のケースのみ△△を許可します。」
09. 否定を肯定に変える
テクニック:
肯定表現に言い換える。
- 悪い例:「これは悪くないと思う」
+ 良い例:「これは良いと思う」
✅ まとめ
-
プロンプトは「人間が設計する設計図」
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一文一要素・具体化・5W1Hで誤解を減らす
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未来・例え・数字・オノマトペでイメージを補強する
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場面に応じた言葉を選び、曖昧表現を削る
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