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60分でできる!マイSAP環境の構築
目次
- 1. はじめに
- 2. 前提
- 3. 構築手順
- 4. おわりに
1. はじめに
SAP BASISコンサルタントやエンジニアが、SAPを気軽に触って・壊せて・作り直せるように、SAPのハンズオン環境をAWS上に構築していきます。
AWS上に載せるSAPとしては、SAP Communityで紹介されている2024年にリリースされたABAP Cloud Developer Trial 2022 SP01を利用しています。
ABAP Cloud Developer TrialはDocker Hubでコンテナとして配布されているので、AWSやSAPの経験がない方でも、60分程度でSAPをAWS上で構築することができます。
2. 前提
AWSのアカウントは既に持っていることを前提に説明していますので、お持ちでない方は作成をお願いします。
(作成方法はGoogleで検索すると出てきます)
3. 構築手順
構築手順は大まかに3つに分けることができます。
メインとなる作業は「1.」と「2.」です。
「2.」まで完了すれば、SAPのハンズオン環境の構築自体は完了です。
ただ、素の状態だと「利用できる期間が短い」や「トランザクションコード(T-cd)の実行が遅い」という問題があるため、「3.」を実施します。
- EC2インスタンスの作成およびネットワークの設定
- EC2インスタンスへのABAP Cloud Developer Trialのインストール
- ABAP Cloud Developer Trialへの接続および利便性向上のための設定
3.1. EC2インスタンスの作成およびネットワークの設定
3.1.1. EC2インスタンスの作成
- AWSマネジメントコンソールにログオンします。
- 検索バーに「EC2」と入力し、検索結果に表示された「EC2」をクリックします。
- 「インスタンスを起動」をクリックします。
- 以下の表の通りに、「名前とタグ」・「アプリケーションおよびOSイメージ」・「インスタンスタイプ」の項目を設定していきます。
項目 | 設定 |
---|---|
名前 | My SAP |
Amazon マシンイメージ (AMI) | Amazon Linux 2023 AMI |
インスタンスタイプ | t3a.2xlarge |
- 「新しいキーペアの作成」をクリックし、以下の表の通りに、「キーペア」の項目を設定していきます。
「キーペアの作成」をクリックすると、pemファイルがダウンロードされます。
項目 | 設定 |
---|---|
キーペア名 | MySAP |
キーペアのタイプ | RSA |
プライベートキーファイル形式 | .pem |
- 「編集」をクリックし、「ネットワーク設定」の項目を設定していきます。
- 「新しいVPCを作成」をクリックし、以下の表の通りに、「VPCの設定」を設定していきます。
「VPCを作成」をクリックすると、VPCが作成されます。
項目 | 設定 |
---|---|
作成するリソース | VPCのみ |
名前タグ | My SAP |
IPv4 CIDR ブロック | IPv4 CIDRの手動入力 |
IPv4 CIDR | 10.0.0.0/24 |
IPv6 CIDR ブロック | IPv6 CIDR ブロックなし |
テナンシー | デフォルト |
- 「新しいサブネットを作成」をクリックし、以下の表の通りに、「VPCの設定」を設定していきます。
項目 | 設定 |
---|---|
VPC ID | My SAP |
サブネット名 | My SAP |
アベイラビリティーゾーン | アジアパシフィック (東京) / ap-northeast-1a |
IPv4 VPC CIDR ブロック | 10.0.0.0/24 |
IPv4 サブネット CIDR ブロック | 10.0.0.0/28 |
- 以下の表の通りに、「ネットワーク設定」の項目を設定していきます。
項目 | 設定 |
---|---|
VPC | My SAP |
サブネット | My SAP |
パブリックIPの自動割り当て | 有効化 |
セキュリティグループ名 | My SAP |
説明 | My SAP |
タイプ | すべてのトラフィック |
ソースタイプ | 自分のIP |
- 以下の表の通りに、「ストレージを設定」の項目を設定していきます。
項目 | 設定 |
---|---|
ストレージ | 1 x 150 GiB gp3 ルートボリューム (暗号化なし) |
- 「インスタンスを起動」をクリックします。
- EC2インスタンスの起動に成功すると、こちらの画面が表示されます。
3.1.2. インターネットゲートウェイの作成
- 検索バーに「VPC」と入力し、検索結果に表示された「VPC」をクリックします。
- 「インターネットゲートウェイ」をクリックします。
-
「インターネットゲットウェイの作成」をクリックします。
-
以下の表の通りに、「インターネットゲートウェイの作成」の項目を設定していきます。
「インターネットゲートウェイの作成」をクリックすると、インターネットゲートウェイが作成されます。
項目 | 設定 |
---|---|
名前タグ | My SAP |
- インターネットゲートウェイ「My SAP」を選択し、「アクション」>「VPCにアタッチ」をクリックします。
- 項目「使用可能なVPC」で「My SAP」を選択し、「インターネットゲートウェイのアタッチ」をクリックします。
3.1.3. ルートテーブルの設定
- 左のメニューから「ルートテーブル」をクリックします。
その後、VPC「My SAP」に紐づいているルートテーブルを選択し、「アクション」>「ルートを編集」をクリックします。
- 「ルートを追加」をクリックし、以下の表の通りに、「ルートを編集」の項目を設定していきます。
項目 | 設定 |
---|---|
送信先 | 0.0.0.0/0 |
ターゲット | インターネットゲートウェイ My SAP |
3.2. EC2インスタンスへのABAP Cloud Developer Trialのインストール
3.2.1. EC2インスタンスへのSSH接続
- AWSマネジメントコンソールにおいて、EC2インスタンス「My SAP」が起動していることを確認します。
- EC2インスタンス「My SAP」を選択し、「接続」をクリックします。
- 「SSHクライアント」をクリックし、実行するコマンドを確認します。
- ターミナル(Windowsの場合、コマンドプロンプト)を開き、EC2インスタンスに接続するために、以下のコマンドを実行します。
実行に成功すると、こちらの画面が表示されます。
chmod 400 "MySAP.pem"
ssh -i "MySAP.pem" ec2-user@<EC2インスタンス「My SAP」のパブリックIP>
3.2.2. Dockerを利用したABAP Cloud Developer Trialのインストール
- Dockerのインストール、およびDocker自動起動の設定をするために、以下のコマンドを実行します。
sudo dnf -y install docker
sudo systemctl start docker
sudo systemctl enable docker
- ABAP Cloud Developer Trial 2022 SP01のDockerイメージをダウンロードするために、以下のコマンドを実行します。
sudo docker pull sapse/abap-cloud-developer-trial:ABAPTRIAL_2022_SP01
- カーネル構成ファイル(/etc/sysctl.conf)を設定するために、以下のコマンドを実行します。
sudo vi /etc/sysctl.conf
- カーネル構成ファイル(/etc/sysctl.conf)に以下のパラメータを書き込み、保存します。
vm.max_map_count=2147483647
fs.file-max=20000000
fs.aio-max-nr=18446744073709551615
- カーネル構成ファイル(/etc/sysctl.conf)に書き込んだパラメータを読み込むために、以下のコマンドを実行します。
sudo sysctl -p
- EC2インスタンス起動時に、ABAP Cloud Developer Trialが自動的に起動するように設定するために、以下のコマンドを実行します。
cd /var/lib/cloud/scripts/per-boot/
sudo touch mysap.sh
sudo chmod 777 mysap.sh
sudo vi mysap.sh
- mysap.shに、Dockerコンテナ「a4h」を起動する以下のコマンドを書き込み、保存します。
#!/bin/sh
cd /home/ec2-user
sudo docker start -ai a4h
- Dockerコンテナを作成・起動するために、以下のコマンドを実行します。
これでEC2インスタンスへのABAP Cloud Developer Trial 2022 SP01のインストール作業は完了です。
sudo docker run --stop-timeout 3600 -i --name a4h -h vhcala4hci -p 3200:3200 -p 3300:3300 -p 8443:8443 -p 30213:30213 -p 50000:50000 -p 50001:50001 --sysctl kernel.shmmax=21474836480 --sysctl kernel.shmmni=32768 --sysctl kernel.shmall=5242880 --sysctl kernel.msgmni=1024 --sysctl kernel.sem="1250 256000 100 8192" --ulimit nofile=1048576:1048576 sapse/abap-cloud-developer-trial:ABAPTRIAL_2022_SP01 -skip-limits-check -agree-to-sap-license
3.3. ABAP Cloud Developer Trialへの接続および利便性向上のための設定
3.3.1. SAP GUI for Windowsのインストール
- ABAP Cloud Developer Trialを利用するためには、SAP GUI for Windowsというデスクトップアプリをインストールする必要があります。
そのため、SAP社のサイト「Trials and Downloads」にアクセスし、「SAP GUI for Windows」をクリックします。
- メールアドレスや会社情報の登録が求められるので、入力します。
入力後、「Submit」をクリックします。
- 登録したメールアドレスに「Activate Your Account for SAP.com」というタイトルのメールが届きます。
メールに記載されている「Click to activate your account」をクリックします。
- パスワードおよび「✔︎」を入力し、「Submit」をクリックします。
- ユーザアイコンが名前のイニシャルになっていることを確認し、再度「SAP GUI for Windows」をクリックします。
- 「Terms & Conditions」に「✔︎」を入れ、「Sumbit」をクリックします。
- 「Click here to start your download」をクリックします。
- ダウンロードされたrarファイルを解凍し、その中に含まれいているexeファイルを実行します。
exeファイルを実行すると、「SAP Front End Installer」が起動するので、「Next」をクリックします。
- 「SAP GUI for Windows」を選択し、「Next」をクリックします。
クリック後は、「SAP Front End Installer」の指示に従うことで、SAP GUI for Windowsをインストールできます。
3.3.2. ABAP Cloud Developer Trialへの接続
- SAP GUI for Windowsのインストール完了後、SAP GUI for Windowsを起動するために、デスクトップに新たに作成されたアイコン「SAP Logon」をクリックします。
- 「新規」>「接続」をクリックします。
- 以下の表の通りに、「新規システムエントリの登録」の項目を設定していき、「完了」をクリックします。
項目 | 設定 |
---|---|
接続タイプ | カスタムアプリケーションサーバ |
内容説明 | My SAP |
システムID | A4H |
インスタンス番号 | 00 |
アプリケーションサーバ | <EC2インスタンス「My SAP」のパブリックIP> |
- 名前「My SAP」のエントリを選択し、「ログオン」をクリックします。
- 以下の表の通りに、ログオン情報を入力し、エンターキーを押します。
項目 | 設定 |
---|---|
Client | 001 |
User | DEVELOPER |
Password | ABAPtr2022#01 |
- ライセンスが間もなく有効期限切れになるとのメッセージが表示されるため、「✔︎」をクリックします。
- ABAP Cloud Developer Trialへの接続に成功すると、こちらの画面が表示されます。
A4Hのクライアント(CL)001にログオンしていることが確認できます。
3.3.3. 新規ライセンスのインストール
- 新規ライセンスのインストールの準備として、トランザクションコード(T-cd):SLICENSEを実行します。
- 項目「Active Hardware Key」に記載されているハードウェアキーをコピーします。
- 新規ライセンスをダウンロードするために、「SAP License Keys for Preview, Evaluation and Developer Versions」にアクセスします。
そして、「A4H - SAP NetWeaver AS ABAP 7.4 and above (Linux / SAP HANA)」を選択します。
- 下にスクロールし、氏名・メールアドレスの入力、コピーしたハードウェアキーのペーストを実施します。
そして、「Generate」をクリックすることで、「A4H_Multiple.txt」がダウンロードされます。
- トランザクションコード(T-cd):SLICENSEにおいて、「Install」をクリックし、「A4H_Multiple.txt」を選択します。
- 「Allow」をクリックします。
- 「✔︎」をクリックします。
- 新規ライセンスがインストールされていることを確認します。
そして、古いライセンスを選択し、「Delete License」をクリックします。
- 新規ライセンスのみがインストールされていることを確認します。
また、項目「End Date」を確認し、新規ライセンスの有効期限を確認します。
- 「Refresh」をクリックし、「Current Settings」の項目「License Expires On」も更新されていることを確認します。
3.3.4. トランザクションコード(T-cd)の実行高速化
- トランザクションコード(T-cd)の実行を高速化するために、トランザクションコード(T-cd):SGENを実行します。
- 「Generate all objects of selected components」を選択し、「Components」をクリックします。
- 「Select All」をクリックし、全てのSoftware Componentsを選択します。
そして、「Continue」をクリックします。
- 「All 16 components selected」と表示されていることを確認します。
- 下にスクロールし、「Continue」をクリックします。
- 何も変更せず、「Continue」をクリックします。
- 「✔︎」を入れ、「Start Job Directly」をクリックします。
- ジョブが実行されると、「The generation job was successfully scheduled or started」と表示されます。
- ジョブのステータスを確認するために、トランザクションコード(T-cd):SM37を実行します。
- 何も変更せず、「Execute」をクリックします。
- ジョブ「RSPARAGENER8M」の「Status」を確認します。
ジョブが実行中の場合、「Status」は「Active」となります。
また、ジョブが完了した場合、「Status」は「Finished」となります。
- ジョブ「RSPARAGENER8M」の「Status」が「Finished」となった後に、トランザクションコード(T-cd)の実行が高速化されたことを確認するために、トランザクションコード(T-cd):SU01やSTMSを実行します。
トランザクションコード(T-cd)の実行が数秒で完了するようになっていれば、OKです。
4. おわりに
今回はSAPのハンズオン環境を構築する手順を紹介しました。
この記事が、SAPのハンズオン環境がなく困っているSAP BASISコンサルタントやエンジニアの一助になれば、嬉しいです。
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