プロセスマイニング活用による業務変革事例
今回は2023/2にTechnology Diariesで公開された記事をご紹介します。内容は執筆当時のものです。
テクノロジーコンサルティング本部 リビングシステムテクノロジーグループに所属しているシニア・マネジャーの戸塚、同じくマネジャーの小林と、佐々木と申します。
昨今、グローバルを中心にプロセスマイニングを活用したデータ駆動型の企業価値向上の取り組みが拡大しており、日本においてもプロセスマイニングを導入される企業が増加傾向になっております。
アクセンチュアにおいても、プロセスマイニングの知見・実績の積み上げに力を入れており、プロセスマイニングを活用した分析サービスを提供させていただいております。
今回はプロセスマイニングを活用したアプローチや成功の要諦、事例についてご紹介したいと思います。
プロセスマイニングとは
プロセスマイニングとは、基幹システムや業務システムに蓄積されたデータを基に、実際の業務プロセスを可視化、業務のボトルネック・改善箇所を特定し、業務改善に活用するための分析手法です。
業務を一意に特定するID、業務工程を進める上で発生する「申請」、「承認」等の工程情報、その工程を何時何分に実施したのかを表すタイムスタンプ、その他組織や部門等の属性情報を取り込むことで、業務プロセスを可視化・分析することができます。
*プロセスマイニング概要
また、業務プロセスの全体像を明らかにした上で、事前に設定した深堀ポイント(繁忙期・閑散期での傾向の差異はあるか、ベンダー毎に特徴があるか等)を基に確認/分析を行い、業務有識者や担当者へのヒアリングを実施していく中で課題に対する示唆を抽出していきます。
*プロセスマイニングによる一般的な分析手順イメージ
既存サービスとプロセスマイニングのバンドルモデル
ここからは、アクセンチュアにおけるプロセスマイニングのアプローチについてご紹介したいと思います。
単に業務可視化のみだとトランスフォーメーションにおける効果が薄くなることから、業務可視化後を見据えてプロセスマイニングを導入し、様々なサービスとバンドルしていくことが重要だと考えております。
そうした背景から、コンサルティング、BPO、システムインテグレーション、アプリケーション/インフラストラクチャーアウトソーシングといった各既存サービスラインで大きく4つのバンドルアプローチを推進しています。一度きりの可視化に留まらずコンサルティングやBPO等を組み合わせ、提供価値を最大化することでトランスフォーメーションが実現可能となります。
*既存サービスとプロセスマイニングのバンドルモデル
本記事では、4つのアプローチのうち、BPO、システムインテグレーションについて詳細をご紹介します
BPO
従来のBPOは、海外オフショアも活用しコスト削減、安定運用の中で業務改善という点がアクセンチュアの提供価値でしたが、BPO全体として得られるデータを活用し、受託業務に閉じずEnd to Endでのクライアント業務まで広げた抜本的な業務改善や、各種データを活用したデータ分析、ビジネス業務効率化以外の経営効果創出といった付加価値の面に重きを置いた変革を推進しております。
*Advanced BPO
システムインテグレーション
キーワードは現行要件の最適化にあります。日本特有のカスタムメイドの背景から、現状のIT部門は「現行システム機能を担保してほしい」というユーザーからの要件を受け取らざるを得ない構造があり、不要かもしれない機能をカスタムで構築してしまう、そこに膨大な金額が投入されているという場面が散見されます。
不要な機能を削ぎ落し、システムインテグレーションを効率的に進める目的の基、要件定義においてプロセスマイニングを活用し、機能の利用状況を可視化した上で、現行機能の要否を議論していくといったアプローチを取っております。
*システム間の差異の可視化
また、要件定義で可視化した業務プロセスのデータをテスト自動化ツールや進捗管理ツールに連携し、テスト工程のHyper Automationを強化する取り組みも注力して進めております。
業務理解に努めながらテストシナリオを作成していくこれまでの方法から、プロセスマイニングで可視化した業務プロセスの情報を基に作成していく方法に変えることで、テスト工程の準備工数を簡略化しています。さらに、テスト結果を進捗管理ツールに連携することにより、テスト網羅率等のプロジェクト管理に必要な情報を一元的に確認・管理可能になります。
*テスト工程のHyper Automation
プロセスマイニング導入における成功の要諦
プロセスマイニングツールは魔法の杖ではないので、成功に向けて抑えるべきポイントが存在します。アクセンチュアが事例を積み上げていく中で辿り着いた3点のポイントをご紹介します。
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活用意義の明確化
活用意義や仮説を明確にしないまま進めると可視化のみで終わってしまうため、ビジネス目標から落とし込まれた具体的な課題・仮説設定、分析による示唆抽出、課題解決に向けた施策提案・実行の一連の流れが重要になります。また、それらを一度きりでなく継続的に実施していくことで、より効果的な業務改善に繋げることが可能となります。 -
有識者を含めたチーム組成
プロセスマイニングはデータが命で、データに依存します。日本は比較的システムがサイロで、システムを個別にカスタムしているため、テーブル構造が複雑になりがちです。既存システム・業務プロセスの有識者を含めたチームを組成し、可視化に必要なデータが揃っているか、不足無く取得可能か等、分析対象システムのデータセットの初期見極めが重要になります。 -
アジリティあるPDCAの推進
一度可視化すると、データを追加したい、別角度で見たいといった要望があがってきます。そのような場合に、ビジネス/システムサイドがスクラムを組み、分析とデータ追加取得をアジャイル的に回すことで、より早く・深い示唆出しに繋げることができます。
導入事例
現在進行中も含め、国内外で導入実績も右肩上がりで増加しております。プロセスマイニングツールが提供するテンプレートの有無や、分析データの取得難易度から、Purchase to Pay(調達~支払い)、Order to Cash(受注~請求)のプロセスにおいて導入が多い傾向にあります。ここからは、2つの事例をピックアップしてご紹介したいと思います。
国内事例①
海外拠点を持つ国内企業では、SAP Aribaのデータを用いて、数拠点における調達プロセスを分析しました。
ビジネス価値を高めるため、注力すべき領域を特定し、複数の観点で削減効果を試算しております。
*リワークイメージ
国内事例②
国内メーカーでは、SAPデータを用いて調達プロセスを分析しました。
既存業務プロセスの全体的な傾向と、イレギュラー部分の可視化を図り、プロセスマイニング導入で検出した注意・課題事項を収集し、全社展開に向けたTipsとして還元しました。今後、検知した情報を基に、実際の業務改善に繋げていく予定です。
まとめ
プロセスマイニングでビジネスにおける繋がりや、ボトルネックを可視化することで、End to Endでの業務最適化と自動化の可能性を検知し、改善へ繋げることが可能となります。お客様の現状・特性を見極めながら、課題解決・業務改善に向けて柔軟なアプローチを選択し、提供価値を最大化していきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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