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No Code/Low Code活用による業務変革事例

2024/04/24に公開

テクノロジーコンサルティング本部 リビングシステムテクノロジーグループの社員4名で2022/11に公開した記事をご紹介します。記事の内容は公開当時のものです。
https://www.accenture.com/jp-ja/blogs/technology-diaries/examples-of-business-transformation-through-the-use-of-no-code-low-code


テクノロジーコンサルティング本部 リビングシステムテクノロジーグループの梅村 拓未と耒田 勝輝です。

我々は現在、Power Platformを活用した業務アプリケーション構築、およびその継続的な改善を通して業務のデジタル化/超効率化を行っております。Power Platformは多くの企業に導入されているMicrosoft社のM365にライセンス付属しており、導入へのハードルが低く、かつ難易度も高くないため、昨今その活用事例を多く聞くようになりました。今回は、Power Platformを用いた業務アプリケーション構築の事例と、アクセンチュア自身が社内活用している事例を紹介したいと思います。

NC/LCとは?NC/LCを取り巻く現状

アプリケーション開発において、昨今新たな手法として広まっているのが「ノーコード(no-code)」や「ローコード(low-code)」(以下NC/LC)と呼ばれている開発手法です。『2025年の崖』に端を発する、複雑化した既存システムの存在が経済にもたらす影響や、コロナ禍におけるビジネス環境の急速な変化を受けて、システム開発のスピードを重視する企業が増えたことから、従来の予想を上回る速度で市場が広がっています。

調査機関によると、2023年以降、新規開発されるアプリケーションの実に60-70%以上がノーコード/ローコードプラットフォームを利用するようになる、との見方が示されており、ここ数年で急速な広がりを見せています。

急速な広がりとともに、特定の業務・業態に特化したものや、モバイル利用に最適化されたものなど、種々のNC/LCプラットフォームが乱立している状況ですが、その中でも、今回は多くの企業において未だ根強く支持されているWindows OSをベースとする、Microsoft社のLC/NC Platformである『Power Platform』を活用した事例について紹介したいと思います。

10行で分かるPower Platform

Power Platformは以下5つの主要なコンポーネントにて構成される統合的なNC/LCプラットフォームです。
Power Apps:業務アプリケーション開発ツール
Power BI:業務分析・可視化ツール
Power Automate:業務の自動化やワークフロー機能
Power Virtual Agent:チャットボット構築ツール
Power Pages:Webサイト構築ツール

上記5つのコンポーネントを組み合わせることで、経営層による意思決定をサポートするBIツールから、業務処理を行うオペレーターの手元業務を自動化するRPA製品まで、1プラットフォームで幅広くカバーできることが特徴であり、エンタープライズ領域でも十分に活用可能な能力を秘めています。

企業活動におけるPower Platformの具体活用事例

具体的なPower Platformの活用事例として、ある業態における営業-契約内示-契約締結における業務への適用事例をご紹介します。全体の業務の流れは以下の通りです。紫の網掛け部分にPower Platformの各種機能を適用しています。

これまでの業務は、Faxやメール/電話を中心としたアナログなデータのやり取りで、かつ個々のやり取り/確認内容は蓄積されず、属人的/暗黙知的な業務に凝り固まっており、定型化/改善が困難でした。今回の事例においては、情報の流れを極力データ/デジタル化し、人が行うべきところと、機械(=RPA)に任せられるところとを明確に線引きしました。即ち、依頼内容は極力定型化し、自動処理可能としつつ、どうしても残ってしまうナラティブ/イレギュラーなやり取りのみ人が手を動かす部分として残し、後は自動化するような思想で仕組化をしています。

営業社員は、訪問先での交渉⇒契約内示を頂いたら、スマートフォンから即座に情報を発信できます。

営業社員から契約情報を受け取ったオペレータは、既存契約の情報や付随情報と突き合わせて、内容に矛盾が無いか、法令に遵守しているか等のチェックを行います。ほとんどの内容はシステム(RPA)にて自動チェックされ、人間が行うのはフリーテキストで記載された備考欄などの読み下し等に限定されます。

データチェックが完了した後は、社内の業務アプリケーションへの登録や、後続業務のためのファイル作成処理がありますが、こちらもオペレータが上記の画面からRPAをキックすると、自動で処理が行われます。情報の流れがデータ/デジタル化されたことにより、多くの部分で自動化が可能となり、業務の大幅な効率化を図ることが出来ました。

また、処理の裏側では、オペレータの業務実行をログとして記録しており、業務の正確性や納期遵守率などの各種KPI測定に利用したり、業務のボトルネック分析に活用したりしています。これもPower BIを利用して可視化しています。

  • 業務実行ログのストア

  • 各種KPIの可視化

ここまでの事例で、Power Platformは企業活動の継続的改善に好相性であることが分かりました。

次にアクセンチュア社内ではどのように活用しているか、別の視点からの活用事例をご覧ください。

アクセンチュア社内のPower Platform活用事例

テクノロジーコンサルティング本部リビングシステムテクノロジーグループの宇佐美 洋夢と綿貫 達也です。ここからはアクセンチュア社内向けにPower Platformを利用して開発したTeams投稿のデータ集計、可視化ツールについて、ご紹介したいと思います。

リモートコミュニケーションの浸透と課題の顕在化

COVID‑19の蔓延を契機にTeamsでのリモートコミュニケーションが主流となり、アクセンチュアでも活用が浸透しています。会議の開催だけでなく、業務のノウハウやナレッジの共有、イベントの告知、各種相談など多岐に利用され、円滑なコミュニケーションを支えるインフラとして活用されています。リモートコミュニケーションが促進され、多くの情報が素早く、広範囲に共有される一方で、有用な情報が埋もれてしまうなどの課題が顕在化してきました。

こういった課題を解決したいと問題意識を持った有志メンバーが集い、何かソリューションを構築してみようと動き始めました。特に有用な投稿や反響の大きな投稿を集計、整理して、定期的に周知、共有することが出来れば、課題解決に繋がると考えました。

これらの仕組みを実現するために、今回はMicrosoft社のPower Platformソリューションを主に活用しました。これまでの社内向けの取り組みでは、RPAやPower Automateを利用した業務改善、業務自動化が多数を占めていましたが、一方で、データ駆動型変革の提唱、浸透と共に、管理部門を中心にデータを可視化し、高度なデータ分析を容易に実現するPower BIに注目が集まっていました。こういった背景もあり、今回は、大きく①データ集計(Power Automate)、➁データ可視化(Power BI) の2つの機能に分け、Teamsへの投稿を集計するツールの開発に着手しました。

以下では、ソリューションの構成について、ご説明させていただきます。

ソリューションを構成する主なサービス

今回構築したソリューションでは、主に、Microsoft社のPower Platformで提供されている、次の2つのサービスを用いています。

1.Power Automate:コネクタという部品を組み合わせ、ワークフローを構築できるサービス。
2.Power BI:様々なデータソースを可視化し、高度なデータ分析可能なBIツール。

それぞれのサービスの特性を活かして、①Power AutomateではTeamsデータの抽出・整形・集計、②Power BIでは集計したデータの可視化を行っています。必要な各データの抽出を1度で実施しようとすると、Power Automateのクラウドフローの実装が複雑になり、プログラムが肥大化し、可読性の低下させるため、処理ステップを分割し、PowerShell、POSTMANを併用するよう工夫しました。また、Power Automate、Power BIの開発では、MS社が提供するテンプレートを参照、流用することで、開発を効率的に進めることができました。

本ツールでは、段階的に必要なデータを抽出・集計して、Power BIでの可視化を実現していますが、利用者はツールを実行するだけで、Power BIでの可視化した結果が得られるようになっています。各処理ステップの詳細説明は割愛させて頂きますが、本ツールを利用する際の大まかなフローは以下の通りです。

Power Automateを利用した実装

Power Automateには、Teamsに関する様々なコネクタが用意されており、各サービスとの親和性が良いです。今回は、①集計対象データ(投稿されたメッセージID)の抽出、②データの整形、集計 のために使用おり、抽出、整形、集計したデータは、主に以下の通りです。加工したこれらのデータをPower BIのデータソースにしています。

Power Automateで取得するデータ(主要項目の抜粋)

Power BIを利用した実装

Power BIでは、先述のとおりPower Automate等を用いて収集したデータの可視化を実施しています。集計したデータをインプットにして可視化した結果は、以下のようなイメージとなります。

投稿者や投稿されたメッセージ、メッセージに対する返信・リアクション等、様々な情報をPower BIの機能で統合し、投稿者毎の投稿件数や反響が大きな投稿をランキング形式で視覚的に見られるようにしています。

構築したソリューションを利用した今後の展開

実際にTeamsの投稿状況を集計してみたところ、投稿が特定のメンバーに偏っている状況も浮き彫りになり、課題の可視化にも繋がって、一石二鳥の結果となりました。現在は、このツールを利用して、Teamsの積極的な活用を呼びかけや、月次で投稿数等に応じた表彰をするなど、リモートコミュニケーションの活性化につながる取り組みを開始しています。

また、本ツールは社内の他組織からも多くの反響が寄せられており、本稿作成時点で10を超える組織に本ツールを提供し、Teams投稿状況の可視化・活性化に役立てていただいています。更にDX推進中のお客様からも関心が寄せられており、本ツールを更にブラッシュアップして実務でも活用されるソリューションに育てていきたいと考えています。

今回は、データ可視化のPower BIを採用したソリューションでしたが、他にもAIやチャットボットなどと組み合わせることで、更なる業務効率化が実現可能であると考えています。またこれらのサービスを素早く試せることが、NC/LCの魅力の一つだと考えているので、今後もいち早く、新サービスを試して、積極的にソリューションに採用していきたいと思います。

まとめ

注目度の高まるNC/LCのサービスは、デジタルトランスフォーメーションなど大きな世界観を構築するためのプラットフォームとなるだけでなく、比較的コンパクトな効率化・自動化を素早く実現することも可能です。多くのサービスが日々生まれていくので、それぞれの特性を見極めて、各種サービスを柔軟に組み合わせたソリューションで、課題解決を推進していきたいと考えています。

この度は、本稿、最後までお読みいただき、ありがとうございました!

Accenture Japan (有志)

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