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うさぎでもわかる中国版Unity「团结引擎」

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うさぎでもわかる中国版Unity「团结引擎」

はじめに

2025年4月7日、Unity Chinaは中国・香港・マカオにおいて「Unity 6」の提供を終了し、中国版Unity「团结引擎」(Tuanjie Engine)に完全移行することを発表しました。この急な発表は多くの開発者を驚かせましたが、実はこの「団結引擎」は単なるUnityの中国語版ではなく、独自の進化を遂げた「中国版Unity」なのです。

「なんだか急にUnityが使えなくなったぽよ?」と困っているうさぎさんのために、今回は中国版Unity「团结引擎」の背景と特徴、そして開発主体について解説します。

Unityとは

まずは基本から。Unityとは2005年に登場した世界で最も普及しているゲームエンジンの一つです。2D・3Dゲームの開発だけでなく、映画、自動車、建築、エンジニアリング、軍事シミュレーションなど幅広い分野で利用されています。

Unityの最大の特徴は、クロスプラットフォーム対応の容易さにあります。一度開発したゲームを、Windows、macOS、iOS、Android、各種ゲームコンソールなど、さまざまなプラットフォームに対応させることができます。

「ゲームを作るのにいちいちプログラミング言語を覚えるのはめんどくさいぽよね〜」といううさぎさんでも、比較的簡単に開発を始められるのがUnityの魅力です。

中国でのUnity 6提供終了の背景

2025年4月7日、Unity Chinaは突如として中国・香港・マカオにおけるUnity 6の提供を終了し、中国独自の「团结引擎」への完全移行を発表しました。これには主に以下の背景があります:

  1. 中国市場の特殊性: 中国市場には微信小游戏(WeChat Mini Game)やファーウェイのHarmonyOSなど、中国独自のプラットフォームが存在します。
  2. データセキュリティと技術自立: 中国政府は「技術自立」を推進しており、ゲーム開発エンジンもその一環として国産化を進めています。
  3. ビジネス戦略: Unity中国の合弁会社化により、中国市場に特化した戦略を独自に展開できるようになりました。

「政治とか経済の話はむずかしいぽよ・・・」と思うかもしれませんが、簡単に言えば、中国独自の環境に合わせたゲームエンジンを作ることになったということです。

Unity中国(合弁会社)の設立

Unity中国は2022年8月に設立された合弁会社で、以下の企業が出資しています:

  • 中国移動(China Mobile)
  • アリババ(Alibaba)
  • 吉比特(G-bits)
  • 米哈游(miHoYo)- 『原神』の開発元
  • OPPO
  • 佳都科技(PCI-Suntek)
  • 抖音集団(Douyin Group、TikTokの中国版運営会社)

これらの中国企業の参加により、Unity中国は中国国内で独自の開発・運営ができるようになりました。その中心的な製品が「团结引擎」です。

Unity中国の出資構造
Unity中国の出資構造と「团结引擎」の関係

「团结」(Tuanjie)は中国語で「団結・統一」を意味し、英語の「Unity」と同じ意味を持ちます。名前に込められた意味として、中国の技術企業が団結してゲームエンジン開発に取り組むという意思が表れています。

「团结引擎」(Tuanjie Engine)の特徴

「团结引擎」は単なるUnityの中国語版ではなく、Unity 2022 LTSをベースとしながらも中国市場向けに独自進化を遂げたエンジンです。その特徴は以下の通りです:

团结引擎の特徴
中国版Unity「团结引擎」の主な特徴

中国特有のプラットフォーム対応

  • 微信小游戏(WeChat Mini Game): 中国最大のSNSであるWeChatのミニゲームプラットフォーム向けの最適化。
  • OpenHarmony対応: ファーウェイが開発するオープンソースOS向けの対応。
  • AliOS対応: アリババのIoTプラットフォーム向けの対応。

「うさぎの国では使わないプラットフォームばかりぽよね」と思うかもしれませんが、中国ではこれらのプラットフォームは非常に重要です。

車載システム向け機能の強化

「团结引擎」は自動車の車載システム(インフォテインメントシステム)向けの機能が強化されています。これは中国の自動車産業が急速に発展していることに対応するためで、以下のような特徴があります:

  • チップ最適化: 高通(Qualcomm)や中国のSemiDriveなど、様々なチップに対応。
  • HMI(Human Machine Interface): 車載向けのインターフェース開発ツールを提供。
  • リアルタイム3Dマップナビゲーション: 超リアルな3Dマップや様々な天候条件のシミュレーションを数秒で生成。

「車でゲームするの?ぽよ?」と思うかもしれませんが、現代の車は走るコンピュータとも言われるほど多くのソフトウェアで動いています。

グローバル版にない先進機能

興味深いことに、「团结引擎」にはグローバル版のUnityには実装されていない先進機能があります:

  • 仮想ジオメトリシステム: Epic Gamesの「Unreal Engine 5」の「Nanite」に似た技術で、非常に詳細な3Dモデルを効率的に扱える技術。
  • 高度な照明システム: Unreal Engine 5の「Lumen」に似た技術とされる。

「うわぁ、なんだか中国版の方が進んでるぽよ?」と驚くかもしれませんが、中国版は独自路線で開発を進めているため、一部機能ではグローバル版より先行していることがあります。

中国版Unityの利用状況と影響

「团结引擎」は2024年1月1日に正式リリースされたばかりですが、すでに中国の多くのゲーム開発会社で採用が進んでいます。特に以下の企業での利用が注目されています:

  • 自動車メーカー: メルセデス・ベンツ、NIO、小鵬汽車(Xiaopeng)などが車載システムで採用。
  • ゲーム開発会社: 中国のモバイルゲーム開発会社を中心に採用が進む。

開発者の反応は様々で、一部は強制的な移行に不満を示しながらも、中国特有の機能に期待する声もあります。

「強制移行はちょっとこわいぽよ...」確かにそうですが、長期的には中国市場に特化した開発がしやすくなる可能性もあります。

グローバル版Unityと中国版Unity比較

グローバル版のUnity 6と中国版の団結引擎(Tuanjie Engine)には、いくつかの重要な違いがあります。

Unity比較表
グローバル版Unityと中国版Unity「团结引擎」の比較

この表からわかるように、団結引擎は中国特有のプラットフォームに強い一方で、グローバルなコミュニティサポートという点ではUnity 6に劣ります。どちらを使うべきかは、開発する地域やターゲットプラットフォームによって異なります。

今後の展望

「团结引擎」と中国のゲーム開発環境の今後について予測すると:

  1. 進化の加速: 中国企業の出資と国家的支援により、開発ペースが加速する可能性がある。
  2. 独自路線の強化: グローバル版Unityとの差異がさらに広がる可能性がある。
  3. 国際展開の可能性: 将来的に「一帯一路」諸国など、中国と関係の深い国々への展開も考えられる。
  4. 他国での同様の動き: 技術の国産化・地域化の流れは他国にも影響を与える可能性がある。

「うさぎの国でも同じことが起きるぽよ?」という疑問もあるかもしれませんが、各国の政治・経済状況によって対応は異なるでしょう。

まとめ

中国版Unity「团结引擎」は、単なるローカライズ版ではなく、中国市場特有のニーズに応えるために独自進化を遂げたゲームエンジンです。その背景には技術の自立化を目指す中国の国家戦略と、中国市場の特殊性があります。

グローバル化が進む一方で、テクノロジーの「地域化」という逆の流れも生まれており、「团结引擎」はその象徴的な事例と言えるでしょう。

「難しい話が多かったぽよ〜」かもしれませんが、これからのゲーム開発は国や地域によって使うツールが変わってくる可能性があることを覚えておくといいでしょう。世界のゲーム開発の潮流を見守っていきましょう。

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