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メタバースは現実世界やビジネスをどう変えるのか。テクノロジー・ビジョン2022に寄せて

2024/03/05に公開

*本記事は過去のウェビナー記事をZennに再掲載したものとなります。

近年、急速な盛り上がりを見せているメタバース。しかし、これまでのインターネットと何が違うのか、現実世界や自社のビジネスにどのような影響を及ぼしうるのか、まだ判断しかねている方も多いのではないでしょうか。

今回は、「メタバース連続体に関する日本の金融機関への示唆」と題し、メタバースという概念の再整理から、メタバースを支えるテクノロジートレンドの紹介、金融機関のビジネスに与えうる影響までを俯瞰いたしました。

ポスト・デジタルの後、メタバースの時代が到来する

これから到来するテクノロジーのトレンドについて、アクセンチュアはグローバルで調査・ヒアリングを行い、毎年「テクノロジービジョン(テックビジョン)」として発表しています。

過去のテクノロジービジョンを振り返ると、およそ3年周期でひとつの大きなテーマが見て取れます。2016年から2018年までは、“ひと”を中心としたテクノロジ―。2019年から2021年は、ポスト・デジタル。そして、2022年のテクノロジービジョンは「メタバースで会いましょう:ビジネスを再創造するテクノロジーと体験の融合」です。

ポスト・デジタル、つまり、デジタルがもはや当たり前のものになり、すべての企業がテクノロジー企業になった後、次のフロンティアとして浮かび上がってくるのがメタバースだと考えられます。

アクセンチュアにおけるメタバースの定義は、現実世界から完全仮想世界までをシームレスにつなぎ、従来の「ブラウジング」から「参加や居住」の場へと移行できるインターネットが進化した世界を意味し、単にアバターで仮想世界に入るだけ体験ではありません。

本ウェビナーのタイトルにもあるように、アクセンチュアではメタバースのことを「メタバース連続体」として捉えています。あらゆる要素をつなげるメタバースの「連続性」は、やがて人々の生活を取り囲み、企業に再構築と変革をもたらすと考えているからです。

ユーザーが強いオーナーシップを持つ時代―「WebMe」

ここからは、メタバース連続体を支えるテクノロジートレンドを紹介していきます。第一のトレンドは「WebMe〜メタバースの中の「私」〜」です。

ここで重要になるテクノロジーはWeb3。Web3とは、インターネットの世界を「リアル」にし、デジタルアセットを支える基盤技術です。Web3の意義としては、ブロックチェーンによりデータの身元を明らかにすること、データの信頼性を担保すること、仮想通貨とトークンを紐付け、データと価値を紐付けること、一般的にこの3点で説明されています。

なぜ、Web3がメタバースにおいて重要なのでしょうか。その理由は、Web3とメタバースが連動することで、さまざまな空間・サービスをボーダーレスに往来できるようになるからです。

従来は国や企業、あるいは銀行が信頼を担保することで経済活動が回っていましたが、メタバース連続体に囲まれた世界では、信頼のレイヤーがWeb全体に広がることで、個人が強いオーナーシップを持つようになります。

そしてWeb3による大きな変化として、これまで価値を付けられなかったデジタルアセットにも価値を付与することが可能になります。所有権がNFTに変換されたアート作品の例のように、デジタルアセットの概念・価値は拡張していき、ユーザーがより主体的に判断する世界がやってきます。

あるゲームでは、トークンを所有するユーザーがゲームの運営に対して提案・投票ができるようになっているなど、ユーザー自身がサービスそのものに進化しつつある事例もあります。

ここから分かることは、企業がユーザーに対して一方的にデジタルアセットを提供するのではなく、ユーザー個人がデジタルアセットを作り、評価する時代がやってくるということです。そのような時代において、データの所有権をユーザーに取り戻すプライバシーデータ管理の技術、Web3のサービス間の相互運用性を高める技術はますます重要になっていくでしょう。

現実世界すらもパーソナライズするー「プログラム可能な世界」

第二のテクノロジートレンドは、「プログラム可能な世界〜世の中をパーソナライズする〜」です。

デジタルといえば仮想空間がイメージされますが、デジタル革命における最後のフロンティアは物理世界である、とする考え方があります。デジタル世界で当たり前の体験を、物理世界でも提供する。つまり「プログラム可能な世界」に向けた変革が進んでいます。

例えば、車椅子に乗った海外旅行中の人物が夕食でレストランに行きたいと考えている時、AIによって過去の好みにもとづく料理を提案され、ARメガネでは最適なルートが歩道上に表示される、レストランでは階段が自動的に平坦なスロープに変化する、といった具合です。

このように、デジタルによって物理世界すらもプログラムし、パーソナライズしていくことは、もはや不可能ではないのです。

また、プログラム可能な世界を実現するために不可欠な存在が、デジタルツインです。ただし、これまでのデジタルツインとはスケールが異なります。

これまでのデジタルツインは「工場内の一部の機械」といったように局所的なものでしたが、「プログラム可能な世界」では、あらゆる企業活動においてデジタルツインを作ることが必須になり、「デジタルツイン・ドリブン」でサービスを提供していくようになるでしょう。

真に重要なのはホンモノ感―「アンリアル」

第三のテクノロジートレンドは「アンリアル〜本物の世界を人工的に作る〜」です。

近年はAIの技術発展が目覚ましいものの、使い道によって毒にも薬にもなりえます。例えば、AIによって行方不明者の写真から動画を作成し、発見率を高めるという慈善団体の取り組みもあれば、ウクライナ大統領が国民に降伏を呼びかける「偽物」の映像が出回ったという事件もありました。

写真や映像のような視覚分野だけでなく、テクノロジーは聴覚・触覚・味覚・嗅覚といった感覚すらも制御・定量化できるようになってきています。既にアンリアルが現実世界に溶け出し始めている中、もはやリアルとアンリアルに境界線を引くことは重要ではない、という考え方も出てきています。そもそも、ロボットやキャラクターといった「アンリアル」にも感情移入できるのは、人間の特徴でもあります。

リアルとアンリアルが混じり合う世界において大切なことは、ストーリーや理念が一貫していること。これをアクセンチュアでは、「オーセンティシティ(ホンモノ感)」と呼んでいます。リアルか、アンリアルかよりも、ホンモノらしいかどうかが重要となります。

企業が「ホンモノ感」を醸成するためには、目的・共感・一貫性のあるストーリーを提示すること、NFTによる信頼の担保を行うこと、モラルハザードを防ぐべくAI倫理をチェックする機能を持つこと、企業側から課題を提示することで法整備を後押しすること、などが必要です。

メタバース連続体における金融機関への示唆

メタバース連続体に囲まれた世界において、金融機関はどのように振る舞うべきでしょうか。すぐにイメージされるのは、「メタバース支店」のようにリアルのビジネスをそのままメタバースに持っていく、というアプローチですが、現実世界のアセットがデジタルでも価値を持つとは限りません。むしろ、既存の物理アセットはメタバースにおいては価値がなくなると考えた方がいいでしょう。

これまでは金融機関が価値を担保し、ユーザーを囲い込むという世界が続いてきましたが、分散型のプラットフォームにおいて独占は適切ではなく、オープンに、外部と相互につながる発想を持つことが肝要です。

アクセンチュアのテクノロジービジョン2022の詳細はこちらをご覧ください。

https://www.accenture.com/jp-ja/insights/technology/technology-trends-2022

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