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設計書 × LLM:GraphRAGと要約インデックスで実現するドキュメント影響分析アプローチ

に公開3

はじめに

設計書や仕様書を安全かつ高速にメンテナンスするには「影響分析 (Impact Analysis)」が欠かせません。
本記事では GraphDB を用いた知識グラフ階層要約インデックス の 2 つのアプローチを組み合わせ、Markdown 化された設計ドキュメントに対して

  • 修正影響箇所の網羅的抽出
  • 類似機能/関連仕様の発見

を実現するパイプラインをまとめてみました🚀


なぜ単純な RAG では足りないのか?

一般的な ベクトル検索ベースの RAG だけでは、テキスト間の 複雑な依存関係類似機能のクラスター をうまく捉えられないことがあります。
そこで注目されているのが以下の 2 手法:

  1. GraphDB + 知識グラフ (GraphRAG)
  2. 要約+インデックスによる階層検索

それぞれの特徴と組み合わせ方法を詳しく見ていきましょう。


アプローチ①:GraphDB を用いた知識グラフ構築

1. コンセプト

LLM で抽出したエンティティ & 関係Neo4j などの GraphDB に保存し、「どの機能がどの機能に依存しているか」を明示的に表現します。
Microsoft Research の GraphRAG では、ベクトル検索に加えて グラフクエリ を行い、LLM に渡すコンテキストを高精度に絞り込むことでハルシネーションを低減しています。

2. 代表的 OSS / 参考実装

プロジェクト 概要
GraphRAG LLM で (主語, 関係, 目的語) を抽出→知識グラフを構築→コミュニティ単位に要約→統合し回答を生成
CocoIndex
https://github.com/cocoindex-io/cocoindex
Markdown や設計ドキュメントから インクリメンタル/リアルタイムに Neo4j などのグラフDBへトリプレットをエクスポート可能。
「エンティティ ↔ ドキュメント」の 言及関係 も構造化して記録できます。
LlamaIndex – KnowledgeGraphIndex ドキュメントから LLM によって (主語, 関係, 目的語)トリプレットを自動抽出し、内部の graph_store に保存。KnowledgeGraphQueryEngine を通じて グラフ構造を活用した問合せや推論が可能です。LangChain 等の LLM フレームワークとも組み合わせて Graph‑based RAG 構成ができます。

ポイント

  • 検索時は「変更対象ノード ➜ 関連ノードを DFS/BFS」で影響範囲を列挙
  • コミュニティ検出結果をそのまま「類似機能クラスター」として再利用

https://microsoft.github.io/graphrag
https://github.com/microsoft/graphrag
https://github.com/cocoindex-io/cocoindex
https://github.com/run-llama/llama_index


アプローチ②:要約インデックスによる階層検索

1. コンセプト

ドキュメントを 階層的に要約 してツリー構造のインデックスを作成。
ベクトル検索の前段階で「関連しそうな枝」を論理的に絞り込むことで、LLM が参照すべき範囲を極小化します。

2. 実装オプション

手法 / OSS 特徴
LlamaIndex – Tree Index チャンク ➜ セクション ➜ ドキュメント へ要約を段階的に圧縮
PageIndex (VectifyAI) PDF を論理構造に沿って自動分割し、各ノードにタイトル・ページ範囲・要約を付与
Document Summary Index まず 文書レベルで要約 を比較し、関連文書だけを深掘り検索

Tips

  • 小規模ドキュメント群なら JSON/YAML などに「機能間関係メタデータ」を手動で追記しても OK
  • 事前要約はコストがかかるものの、再利用性&推論速度 で大きなメリットあり

https://github.com/run-llama/llama_index
https://github.com/VectifyAI/PageIndex
https://docs.llamaindex.ai/en/stable/examples/index_structs/doc_summary/DocSummary/


全体パイプライン(Conceptual Diagram)


プロトタイプ構成例

レイヤ Tech Stack 役割
データ層 - Git / GitHub: 設計書 (Markdown) 管理
- Neo4j Aura: 知識グラフ
ソースと関係性を一元管理
前処理 - LangChain + OpenAI GPT-4o: Entity/Relation 抽出 & 要約 ドキュメント更新時に CI ワークフローで自動処理
インデックス - Weaviate or Qdrant: Embedding ストア
- JSON/YAML: Summary/Meta
ベクトル類似度+メタデータフィルタで高速検索
エージェント - CrewAI + LlamaIndex Router ①変更要求を解釈 ➜ ②影響候補抽出 ➜ ③詳細見積もり生成
フロント - Next.js + shadcn/ui 影響範囲グラフや要約を可視化、Pull Request コメント自動生成など

実装時の留意点

  1. 抽出精度 ≠ 完璧

    • 関係トリプレットの 抜け漏れ は必ず発生。
    • 影響度が高いドキュメントは 人手レビュー を挟むワークフローに。
  2. 要約は“エントリーポイント”

    • 回答生成前に 原文を再検証 するステップ(R→R→A→C)を追加すると安全。
  3. 小規模なら “要約 + 関係リスト” だけで十分

    • GraphDB 導入は後回しでも PoC 可能。むしろまずはインデックス品質をチェック!

他参考リンク集

種類 タイトル / URL
論文 GraphRAG: From Local to Global — A GraphRAG Approach to Query-Focused Summarization https://arxiv.org/abs/2403.08615
Qiita GraphRAG をわかりやすく解説 https://qiita.com/search?q=GraphRAG
note GraphRAG: Query-Focused Summarization のための意味理解型 RAG アプローチ https://note.com/search?q=GraphRAG
GitHub code-index-mcp https://github.com/johnhuang316/code-index-mcp

おわりに

本記事では GraphDB + 知識グラフ要約インデックス という 2 つのアプローチを組み合わせ、設計書の影響分析を高精度に行う方法を紹介しました。
まずは 要約 + 簡易関係リスト で小さく試し、必要に応じて GraphDB へスケールアップすると、実装コストと効果のバランスが取りやすいはずです。

みなさんのプロジェクトでもぜひ試してみてください!質問やフィードバックはコメント欄でお待ちしています 🙌

Accenture Japan (有志)

Discussion

maidenfortressmaidenfortress

Yan san好,
我以前看过一篇文章,就是在构造索引时采取两级。第一级是整篇文章或者完整的段落,第二级是这篇文章或者完整段落的若干chunk,如果搜索时命中第二级某一个chunk,就查找该chunk的第一级,把相关chunk都一起返回给大模型。跟您的階層検索有类似的地方。