設計書 × LLM:GraphRAGと要約インデックスで実現するドキュメント影響分析アプローチ
はじめに
設計書や仕様書を安全かつ高速にメンテナンスするには「影響分析 (Impact Analysis)」が欠かせません。
本記事では GraphDB を用いた知識グラフ と 階層要約インデックス の 2 つのアプローチを組み合わせ、Markdown 化された設計ドキュメントに対して
- 修正影響箇所の網羅的抽出
 - 類似機能/関連仕様の発見
 
を実現するパイプラインをまとめてみました🚀
なぜ単純な RAG では足りないのか?
一般的な ベクトル検索ベースの RAG だけでは、テキスト間の 複雑な依存関係 や 類似機能のクラスター をうまく捉えられないことがあります。
そこで注目されているのが以下の 2 手法:
- GraphDB + 知識グラフ (GraphRAG)
 - 要約+インデックスによる階層検索
 
それぞれの特徴と組み合わせ方法を詳しく見ていきましょう。
アプローチ①:GraphDB を用いた知識グラフ構築
1. コンセプト
LLM で抽出したエンティティ & 関係 を Neo4j などの GraphDB に保存し、「どの機能がどの機能に依存しているか」を明示的に表現します。
Microsoft Research の GraphRAG では、ベクトル検索に加えて グラフクエリ を行い、LLM に渡すコンテキストを高精度に絞り込むことでハルシネーションを低減しています。
2. 代表的 OSS / 参考実装
| プロジェクト | 概要 | 
|---|---|
| GraphRAG | LLM で (主語, 関係, 目的語) を抽出→知識グラフを構築→コミュニティ単位に要約→統合し回答を生成 | 
| 
CocoIndex  https://github.com/cocoindex-io/cocoindex  | 
Markdown や設計ドキュメントから インクリメンタル/リアルタイムに Neo4j などのグラフDBへトリプレットをエクスポート可能。 「エンティティ ↔ ドキュメント」の 言及関係 も構造化して記録できます。  | 
| LlamaIndex – KnowledgeGraphIndex | ドキュメントから LLM によって (主語, 関係, 目的語) の トリプレットを自動抽出し、内部の graph_store に保存。KnowledgeGraphQueryEngine を通じて グラフ構造を活用した問合せや推論が可能です。LangChain 等の LLM フレームワークとも組み合わせて Graph‑based RAG 構成ができます。 | 
ポイント
- 検索時は「変更対象ノード ➜ 関連ノードを DFS/BFS」で影響範囲を列挙
 - コミュニティ検出結果をそのまま「類似機能クラスター」として再利用
 
アプローチ②:要約インデックスによる階層検索
1. コンセプト
ドキュメントを 階層的に要約 してツリー構造のインデックスを作成。
ベクトル検索の前段階で「関連しそうな枝」を論理的に絞り込むことで、LLM が参照すべき範囲を極小化します。
2. 実装オプション
| 手法 / OSS | 特徴 | 
|---|---|
| LlamaIndex – Tree Index | チャンク ➜ セクション ➜ ドキュメント へ要約を段階的に圧縮 | 
| PageIndex (VectifyAI) | PDF を論理構造に沿って自動分割し、各ノードにタイトル・ページ範囲・要約を付与 | 
| Document Summary Index | まず 文書レベルで要約 を比較し、関連文書だけを深掘り検索 | 
Tips
- 小規模ドキュメント群なら JSON/YAML などに「機能間関係メタデータ」を手動で追記しても OK
 - 事前要約はコストがかかるものの、再利用性&推論速度 で大きなメリットあり
 
全体パイプライン(Conceptual Diagram)
プロトタイプ構成例
| レイヤ | Tech Stack | 役割 | 
|---|---|---|
| データ層 | - Git / GitHub: 設計書 (Markdown) 管理 - Neo4j Aura: 知識グラフ  | 
ソースと関係性を一元管理 | 
| 前処理 | - LangChain + OpenAI GPT-4o: Entity/Relation 抽出 & 要約 | ドキュメント更新時に CI ワークフローで自動処理 | 
| インデックス | - Weaviate or Qdrant: Embedding ストア - JSON/YAML: Summary/Meta  | 
ベクトル類似度+メタデータフィルタで高速検索 | 
| エージェント | - CrewAI + LlamaIndex Router | ①変更要求を解釈 ➜ ②影響候補抽出 ➜ ③詳細見積もり生成 | 
| フロント | - Next.js + shadcn/ui | 影響範囲グラフや要約を可視化、Pull Request コメント自動生成など | 
実装時の留意点
- 
抽出精度 ≠ 完璧
- 関係トリプレットの 抜け漏れ は必ず発生。
 - 影響度が高いドキュメントは 人手レビュー を挟むワークフローに。
 
 - 
要約は“エントリーポイント”
- 回答生成前に 原文を再検証 するステップ(R→R→A→C)を追加すると安全。
 
 - 
小規模なら “要約 + 関係リスト” だけで十分
- GraphDB 導入は後回しでも PoC 可能。むしろまずはインデックス品質をチェック!
 
 
他参考リンク集
| 種類 | タイトル / URL | 
|---|---|
| 論文 | GraphRAG: From Local to Global — A GraphRAG Approach to Query-Focused Summarization https://arxiv.org/abs/2403.08615 | 
| Qiita | GraphRAG をわかりやすく解説 https://qiita.com/search?q=GraphRAG | 
| note | GraphRAG: Query-Focused Summarization のための意味理解型 RAG アプローチ https://note.com/search?q=GraphRAG | 
| GitHub | code-index-mcp https://github.com/johnhuang316/code-index-mcp | 
おわりに
本記事では GraphDB + 知識グラフ と 要約インデックス という 2 つのアプローチを組み合わせ、設計書の影響分析を高精度に行う方法を紹介しました。
まずは 要約 + 簡易関係リスト で小さく試し、必要に応じて GraphDB へスケールアップすると、実装コストと効果のバランスが取りやすいはずです。
みなさんのプロジェクトでもぜひ試してみてください!質問やフィードバックはコメント欄でお待ちしています 🙌
Discussion
Yan san好,
我以前看过一篇文章,就是在构造索引时采取两级。第一级是整篇文章或者完整的段落,第二级是这篇文章或者完整段落的若干chunk,如果搜索时命中第二级某一个chunk,就查找该chunk的第一级,把相关chunk都一起返回给大模型。跟您的階層検索有类似的地方。
ありがとうございます!
ちなみにどなたです?🤭
Yao です。よろしくお願いいたします。